ツバメウオ
ツバメウオ | ||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Platax teira (Forsskål, 1775) | ||||||||||||||||||||||||
シノニム[2] | ||||||||||||||||||||||||
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英名 | ||||||||||||||||||||||||
longfin batfish Tiera batfish |
ツバメウオ(燕魚、Platax teira)は、マンジュウダイ科に属する魚の一種。別名、ツバクロ(燕、ツバメの古名)、ツバメダイ(燕鯛)、アブラウオ(脂魚)など。本種が属する科を「スダレダイ科」とする文献もある。
分類
[編集]本種はフィンランドの探検家、東洋学者、博物学者であるPeter ForsskålによってChaetodon teiraとして記載され、タイプ産地はイエメンの紅海沿岸のAl Luḩayyahとされている。1876年にピーター・ブリーカーによってツバメウオ属のタイプ種に指定された。種小名 teira は、アラビア語 teyra のラテン語化である[3]。
分布・生態
[編集]太平洋西部からインド洋、紅海の温暖な海域に分布する[2]。日本では、北海道釧路から九州の太平洋沿岸、新潟県から長崎県の日本海・東シナ海沿岸、屋久島、琉球列島、小笠原諸島に分布し、沿岸部の中層に生息する[4][5]。
ニュージーランドのアイランズ湾(英語版)でも記録がある[2]。オーストラリアでは、西オーストラリア州から北部まで、南はニューサウスウェールズ州まで分布する[6]。2004年のスマトラ島沖地震の後、インドのマンナール湾で発見された[7]。地中海ではトルコ沖とイスラエル沖で2回発見されている[8][9][10]。
流れ藻、瓦礫、人工魚礁の間に生息することが知られている。沿岸の浅瀬から沖合の深場まで生息している[6]。通常沿岸の中層で群れており、幼魚は水面の近くで体を横にして浮き、浮遊物に擬態する。雑食であり、プランクトン、小型無脊椎動物、藻類を捕食する。稚魚は浮遊物の中に留まり、稚魚同士が出会いながら群れを形成していく。成長すると沿岸から離れ、ホンダワラなどの流れ藻の下で大きな群れを形成する[2]。
形態
[編集]全長は最大70 cm[2]。腹鰭基部の後方に黒斑があり、尻鰭の付け根の上には縦長の黒斑がある[5]。体は側扁し、横から見ると円形で、全体的にはセイヨウナシ形。老成魚は額が僅かに突出する(吻前縁が真っ直ぐ)。背鰭と臀鰭が相似形で大きい。体色は銀色、灰色、または茶色。背鰭の後縁が黒く、体側には眼や胸鰭を通る横帯があり、成魚では不明瞭である[6]。尾鰭は二重湾入形で、後縁は黒い。腹鰭は黄色みがかる。死後、全体的に黒ずみ、模様は不鮮明となる。
幼魚は体が菱形で、背鰭と臀鰭が成魚より著しく大きく、紋様の黒い部分が広くはっきりとしている[11]。幼魚の大きい鰭は成長につれ小さくなる。稚魚は体が茶色く、枯葉のように見える。
利用
[編集]食用
[編集]釣り、スピアフィッシング、トロール網などで漁獲される[12]。日本近海には少なく、あまり利用されないが、食味はイシダイに似ており、鰭が発達した魚であるため、縁側を中心に盛りつけ、刺身で頂くと脂がのっていて、とても美味である。
飼育下
[編集]非常に大人しく、群れを作る。攻撃的な種と一緒に飼育すべきではない。通常、購入時は小さいが、すぐに成長する。水族館ではよく飼育される。
脚注
[編集]- ^ Carpenter, K.E.; Robertson, R. (2019). “Platax teira”. IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T54007396A54023123. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T54007396A54023123.en 09 January 2024閲覧。.
- ^ a b c d e Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "Platax teira" in FishBase. January 2024 version.
- ^ “Order ACANTHURIFORMES (part 2): Families EPHIPPIDAE, LEIOGNATHIDAE, SCATOPHAGIDAE, ANTIGONIIDAE, SIGANIDAE, CAPROIDAE, LUVARIDAE, ZANCLIDAE and ACANTHURIDAE”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (12 January 2021). 10 January 2024閲覧。
- ^ 中坊徹次編『日本産魚類検索全種の同定第二版Ⅱ』東海大学出版会、2000年12月20日、1313頁。 NAID 10007539120。
- ^ a b 『小学館の図鑑Z 日本魚類館』p.432
- ^ a b c Mark McGrouther (6 May 2022). “Roundface Batfish, Platax teira Forsskål, 1775”. Australian Museum. 6 April 2023閲覧。
- ^ Marimuthu, N.; J.J. Wilson; A.K. Kumaraguru (2005). “Teira batfish, Platax teira (Forsskal, 1775) in Pudhumadam coastal waters, drifted due to the tsunami of 26 December 2004”. Current Science 89 (8): 1310–1312 .
- ^ Atlas of Exotic Fishes in the Mediterranean Sea (Platax teira). 2nd Edition. 2021. 366p. CIESM Publishers, Paris, Monaco.https://ciesm.org/atlas/fishes_2nd_edition/Platax_teira.pdf
- ^ Bilecenoglu, M., & Kaya, M. (2006). A new alien fish in the Mediterranean Sea–Platax teira (Forsskål, 1775)(Osteichthyes: Ephippidae). Aquatic Invasions, 1(2), 80-83.
- ^ Daniel Golani; Oren Sonin & Dor Edelist (2011). “Second records of the Lessepsian fish migrants Priacanthus sagittarius and Platax teira and distribution extension of Tylerius spinosissimus in the Mediterranean”. Aquatic Invasions 6 (1, supplement): s7–s11. doi:10.3391/ai.2011.6.S1.002.
- ^ Bray, D.J. (2019年). “Platax teira”. Fishes of Australia. Museums Victoria. 10 January 2024閲覧。
- ^ P. C. Heemstra (2001). “Ephippidae (spadefishes (batfishes)”. In Carpenter, K.E.. The Living Marine Resources of the Western Central Pacific Volume 5: Bony fishes part 3 (Menidae to Pomacentridae). FAO Species Identification Guide for Fishery Purposes. FAO Rome. p. 3619
参考文献
[編集]- 小西英人著『釣魚1400種図鑑』株式会社エンターブレイン 316頁 ISBN 9784047271807
- 木村義志『日本の海水魚』 Vol.7(増補改訂版)、学習研究社,学研マーケティング(発売)〈フィールドベスト図鑑〉、2009年。ISBN 9784054043718。 NCID BB0022584X 。
- 中坊徹次『小学館の図鑑Z 日本魚類館』第6刷、小学館、2022年4月9日。