チュプカオルニス
チュプカオルニス | |||||||||||||||||||||
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![]() 化石のレプリカ。
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地質時代 | |||||||||||||||||||||
後期白亜紀 | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Chupkaornis Tanaka et al., 2017 | |||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||
チュプカオルニス(学名 : Chupkaornis、「東の鳥」の意)[1]は、日本北海道の後期白亜紀(コニアシアンからサントニアン)に生息し、鹿島層から発見された飛べない鳥の属。タイプ種であるチュプカオルニス・ケラオルム一種からなる。
発見と命名
[編集]1996年8月、北海道三笠市にある後期白亜紀(コニアシアンからサントニアン)の蝦夷層群鹿島層から発見され、三笠市立博物館に寄贈された後、常設展に展示されていた[2]。化石は頸椎、胴椎、大腿骨、腓骨の9点からなる[3]。2017年8月に北海道大学等が新属・新種として発見し[4]、田中公教を中心に小林快次、栗原憲一、アンソニー・フィオリロ、加納学により記載された[5][6]。
北海道中川町の蝦夷層群西知良志内層から発見されているヘスペロルニス類の断片的な化石の左跗蹠骨が、本属の発見部位に含まれていないため、本属に属する可能性がある[7]。
属名の Chupkaornis は、北アメリカ産の西の鳥を意味するヘスペロルニスに対し、東アジアの日本で発見された鳥のため、チュプカオルニスは東の鳥を指す。また、アイヌ語で東を意味する「chupka」とラテン語で鳥を意味する「ornis」を合わせたものである。種小名の keraorum は発見者であるアマチュア化石採集家の解良正利、解良康治兄弟に因んだものである[4][5]。
概要
[編集]チュプカオルニスの固有派生形質には、大腿骨の指のように突出した腓骨の隆起、胸椎の腹側縁に鋭い縁を持ち深く窪んだ外側の陥凹、および胸椎の関節腔が含まれる[6]。体長は70から80センチメートルと推定された。脚には泳ぐのに適した水掻きがあったと思われる[4]。
系統発生
[編集]Tanaka et al. (2017) は、チュプカオルニスはセノマニアンに生息したパスクィアオルニスよりも進化しているが、ブローダビスやバプトルニスほど進化していないと述べた[6]。以下のクラドグラムは、北海道大学によるチュプカオルニスの分類学的位置を示したものである[5]。
ヘスペロルニス目 |
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古生態学
[編集]チュプカオルニスは後期白亜紀のチューロニアンからカンパニアンで知られている[8]。これらの層は主に泥岩、凝灰岩、凝灰質砂岩からなる。堆積環境は中部から上部漸深海にあったと推測されている[9]。この層からはアンモナイトやイノセラムスの化石が知られている。アンモナイトは、ネオフィロセラス、アナゴードリセラス、ゴードリセラス、テトラゴニテス、メソプゾシア、ダメシテス、スカフィテスが主に産出している。イノセラムスはミチロイデスとイノセラムスが産出している[10]。
脚注
[編集]- ^ 「太古のバードウォッチング ~石になった鳥を探る~」、兵庫県立人と自然の博物館、2024年12月18日閲覧。
- ^ 「新属・新種と判明した三笠産の鳥類化石を展示中!」、三笠市立博物館、2017年8月26日閲覧。
- ^ 久保田克博「日本産の中生代恐竜化石目録」第28巻、ResearchGate、2017年、doi:10.24713/hitotoshizen.28.0_97。
- ^ a b c 「北海道の海鳥化石は新種 恐竜時代の海に潜り魚を捕獲」、朝日新聞、2025年1月26日閲覧。
- ^ a b c 「北海道三笠市産の鳥類化石が新属新種であることを解明」、北海道大学、2025年1月26日閲覧。
- ^ a b c Tomonori Tanaka, Yoshitsugu Kobayashi, Ken'ichi Kurihara, Anthony R. Fiorillo and Manabu Kano. 2017. The Oldest Asian Hesperornithiform from the Upper Cretaceous of Japan, and the Phylogenetic Reassessment of Hesperornithiformes. Journal of Systematic Palaeontology. doi: 10.1080/14772019.2017.1341960
- ^ 青塚圭一・中島保寿・疋田吉識・遠藤秀紀(2020):北海道・中川町の 白亜系蝦夷層群より産出した潜水鳥類化石.日本古生物学会第 169回例会講演予稿集,59.
- ^ 高嶋礼詩、佐野晋一、林圭一「蝦夷層群下部~中部に記録された白亜紀中頃の温暖化と古環境変動」『地質学雑誌』第124巻第6号、2018年、381-389頁、doi:10.5575/geosoc.2018.0014。
- ^ 林圭一、西弘嗣「北海道中央南部に露出する上部白亜系の地質と有孔虫層序」『地質学雑誌』第117巻第1号、2011年、14-34頁、doi:10.5575/geosoc.117.14。
- ^ 栗原憲一、平野弘道「北海道芦別湖地域上部白亜系の層序とアンモナイト化石群の特性」『地質学雑誌』第109巻第10号、2003年、567-578頁、doi:10.5575/geosoc.109.565。