チェロキー語
チェロキー語 | |
---|---|
ᏣᎳᎩ ᎦᏬᏂᎯᏍᏗ | |
話される国 | アメリカ合衆国 |
地域 | オクラホマ州、ノースカロライナ州 |
話者数 | 12,000人 - 22,000人(2007年) [1][2] |
言語系統 | |
表記体系 | チェロキー文字、ラテン文字 |
言語コード | |
ISO 639-2 |
chr |
ISO 639-3 |
chr |
チェロキー語 (チェロキー語: ᏣᎳᎩ ᎦᏬᏂᎯᏍᏗ, Tsalagi Gawonihisdi [dʒalaˈɡî ɡawónihisˈdî]) は、チェロキー族の言語でイロコイ語族に属す。2007年現在[1]でも話されている唯一の南部イロコイ諸語である。文字は独特の音節文字(チェロキー文字)を用いる。
音韻
[編集]前舌 | 中舌 | 後舌 | ||
---|---|---|---|---|
狭 | [i]
[iː ] |
[u]
[uː ] | ||
|
[e]
[eː ] |
[ə̃]
[ə̃ː ] |
[o]
[oː ] | |
広 | [a]
[aː ] |
二重母音としてai /ai/が存在する。
両唇 | 歯茎 | 硬口蓋 | 軟口蓋 | 声門 | |
---|---|---|---|---|---|
閉鎖 | [t] | [k] | [ʔ] | ||
破擦音 | [ts] | ||||
摩擦音 | [s] | [h] | |||
鼻音 | [m] | [n] | |||
接近 | [l] | [j] | [ɰ] |
なお、オクラホマの方言にはノースカロライナが持っている子音を有声・無声化・帯気音化させたものを持っており、構成される音節数は110以上に上る。
この表では上段にノースカロライナ方言と共通する子音、下段にオクラホマ方言特有の無声子音を載せる。
両唇 | 歯茎 | 硬口蓋 | 軟口蓋 | 声門 | |
---|---|---|---|---|---|
閉鎖 | [t~d]
[tʰ] |
[k~ɡ]
[kʰ] |
[ʔ] | ||
破擦音 | [t͡s~t͡ʃ~d͡ʒ]
[t͡sʰ~t͡ʃʰ] |
||||
摩擦音 | [s] | [h] | |||
鼻音 | [m] | [n]
[n̥] |
|||
接近/摩擦音 | [l]
[ɬ] |
[j]
[ç] |
[ɰ]
[x] |
声調
[編集]チェロキー語には6つの声調があるが、殆どの語彙では弁別的な機能がない。一部の語彙に適用されるだけである。 そして、声調で意味が弁別される語彙でも下記に述べるチェロキー文字では声調が表記されないため、辞書で調べる必要がある。
声調名 | IPA |
---|---|
低平調 | [˨] |
高平調 | [˦] |
昇調 | [˨˦] |
降調 | [˥˩] |
高降調 | [˥˧] |
低降調 | [˧˩] |
転写
[編集]チェロキー語含むイロコイ語族には基本的にp,b,f,vなどの両唇音が存在しない。なので、英語などの「p」音を転写するときは別の音を用いることになる。 なお、チェロキー語には例外として「m」の音があるが、転写で用いられることはまれである。 一番基本的な方法は「p」の音に「kw」の音を当てることである。
- 例「p」「Wikipedia」→「ᏫᎩᏇᏗᏯ Wi-gi-gwe-di-ya」
文法
[編集]チェロキー語はほかのアメリカ先住民諸語と同じように抱合語である。1つの単語に必ず「人称、動詞語幹、アスペクト、時制助動詞」を示す形態素が入っており、人称は10個、時制は17個ある。
g- | e: | -g | -a |
1人称単数接頭辞 | 語根 "行く" | アスペクト接尾辞 | 接尾辞式時制助動詞 |
人称には双数、複数、1人称に包括的、排他的な人称がある。
単数 | 排他的双数 | 包括的双数 | 排他的複数 | 包括的複数 | |
1st | ᎨᎦ gega 私は行く |
ᎢᏁᎦ inega 私たち(2人)は行く (聞き手も含める) |
ᎣᏍᏕᎦ osdega 私たち(2人)は行く (聞き手を含めない) |
ᎢᏕᎦ idega 私たちは行く (3+, 聞き手を含める) |
ᎣᏤᎦ otsega 私たちは行く (3+, 聞き手を含めない) |
2nd | ᎮᎦ hega あなたは行く |
ᏍᏕᎦ sdega あなたたち(2人)は行く |
ᎢᏤᎦ itsega あなたたちは行く | ||
3rd | ᎡᎦ ega 彼(それ)は行く |
ᎠᏁᎦ anega 彼ら(それら)は行く |
正書法
[編集]シクウォイアによって発明された85文字のチェロキー文字で書かれている。ラテン文字に似ているものもあるが、音値は完全に異なる。シクウォイアは、英字、ヘブライ文字、ギリシア文字の存在を知っていたが、それらを読み取ることができなかったためである[3]。
この文字では、ノースカロライナの方言は1対1で音が対応しているが、オクラホマで話されている子音の一部は文字が足りないなどの理由もあり、表記されずに異音扱いになっている。しかし、発音上ではしっかりと区別されているので、注意が必要。 また、声調も表記されないので意味の弁別は文脈に頼ることになっている。 ほかにも、より正確に音値を表現できるラテン文字表記も使われる[4]
文字はそれぞれ、日本の仮名や青銅器時代の古代ギリシアで使われた線文字Bのように1音節を表す。最初の6文字は語頭では母音の音節を表す。組み合わせた子音と母音音節のための文字がその後に従う。左横書きで、行は上から進める。
下記の表とそのラテン文字表記は、サミュエル・ウースター牧師によって編纂されたものをもとにしている。ウースターは、1828年から1859年に亡くなるまで、チェロキー語印刷の発展に重要な役割を果たした人物である。
a | e | i | o | u | v [ə̃] | ||||||||||||||
Ꭰ | Ꭱ | Ꭲ | Ꭳ | Ꭴ | Ꭵ | ||||||||||||||
Ꭶ | Ꭷ | Ꭸ | Ꭹ | Ꭺ | Ꭻ | Ꭼ | |||||||||||||
Ꭽ | Ꭾ | Ꭿ | Ꮀ | Ꮁ | Ꮂ | ||||||||||||||
Ꮃ | Ꮄ | Ꮅ | Ꮆ | Ꮇ | Ꮈ | ||||||||||||||
Ꮉ | Ꮊ | Ꮋ | Ꮌ | Ꮍ | |||||||||||||||
Ꮎ | Ꮏ | Ꮐ | Ꮑ | Ꮒ | Ꮓ | Ꮔ | Ꮕ | ||||||||||||
Ꮖ | Ꮗ | Ꮘ | Ꮙ | Ꮚ | Ꮛ | ||||||||||||||
Ꮝ | Ꮜ | Ꮞ | Ꮟ | Ꮠ | Ꮡ | Ꮢ | |||||||||||||
Ꮣ | Ꮤ | Ꮥ | Ꮦ | Ꮧ | Ꮨ | Ꮩ | Ꮪ | Ꮫ | |||||||||||
Ꮬ | Ꮭ | Ꮮ | Ꮯ | Ꮰ | Ꮱ | Ꮲ | |||||||||||||
Ꮳ | Ꮴ | Ꮵ | Ꮶ | Ꮷ | Ꮸ | ||||||||||||||
Ꮹ | Ꮺ | Ꮻ | Ꮼ | Ꮽ | Ꮾ | ||||||||||||||
Ꮿ | Ᏸ | Ᏹ | Ᏺ | Ᏻ | Ᏼ |
参考文献
[編集]- A REFRENCE GRAMMER OF OKLAHOMA CHEROKEE
- 英語版wikipedia
脚注
[編集]- ^ a b Ethnologue:Cherokee
- ^ Indigenous Languages Spoken in the United States
- ^ Feeling, "Dictionary" xvii
- ^ Feeling et al., "Verb" pp. 1–2