コンテンツにスキップ

ダイハツ・EB型エンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ダイハツ・E系列エンジン
生産拠点 ダイハツ工業
製造期間 1985年7月 - 2014年6月
タイプ 直列3気筒SOHC6バルブ
直列3気筒SOHC12バルブ
直列3気筒DOHC12バルブ
排気量 0.55 L
0.66 L
0.8 L
0.85 L
1.0 L
テンプレートを表示

ダイハツ・EB型エンジンは、ダイハツ工業が生産していた軽自動車用エンジンの一つである。

英語版では、EB型をベースにボアストロークを拡大したED型EF型を含めたダイハツ・E系列エンジンとして解説されているため、本項ではED型、EF型、EJ型エンジンについても併せて解説する。

概要

[編集]

EB型を始めとするダイハツ・E系列エンジンとは、トヨタグループダイハツ工業[注釈 1]によって設計された、小排気量水冷直列3気筒ピストン内燃機関である。ガソリンエンジンシリーズは鋳鉄シリンダーブロックと、アルミニウム合金シリンダーヘッドを持ち、SOHCまたはDOHCバルブトレインタイミングベルトで駆動する設計である。

E系列エンジンは1985年昭和60年)夏、EB型がそれまでの直列2気筒AB型を置き換える形で、ダイハツ製軽自動車に採用されて登場した[1]。EB型は1977年(昭和52年)のCB型に続いてダイハツが世に送り出した2番目の直列3気筒エンジンであり、原設計では1シリンダー辺り2バルブであったが、その後4バルブターボチャージャー仕様も登場した。

EB型は非常に軽量で、原初のEB10型は変速機を含めても60–63 kg (132–139 lb)というものであった[2]

系譜

[編集]
  • AB型1975年-1985年、ここまで水冷直列2気筒)→EB型(1985年-1990年、これより水冷直列3気筒)→EF型(1990年-現在、660cc)→KF型(2005年-現在)
  • EB型(550cc)→ED型(1986年-現在、850ccにボアアップ)
  • EF型(660cc)→EJ型(1998年-2004年、1,000ccにボアアップ)→KR型(2005年-現在)

EB型 (550 cc)

[編集]

EB型排気量547 cc (0.55 L)で、日本の国内市場で流通する軽自動車のみに搭載される目的で、ダイハツ大阪工場で製造された。内径は62 mmで、行程は60.5 mm、点火順序は1—2—3[2]。最高出力は32 PS (24 kW)から64 PS (47 kW)、後者は自動車馬力規制により許容される最大限度値である。ミラ/クオーレに搭載された最も初期のエンジンは出力測定法がネット値ではなく、グロス値であった。これによってその後数年の僅かな定格出力値の変化が説明される。通常、ダイハツの輸出モデルはこのエンジンより大排気量のED型またはダイハツ・CB型エンジンに代表されるダイハツ・C系列エンジンが搭載される為、このエンジンの輸出は余り行われていない。

EB型はSOHCバルブトレインと1シリンダー辺り2バルブ仕様のみが設定され、ダイハツは軽自動車へのマルチバルブ技術の投入が他社と比較して遅れていた。しかし、EB型にはIHI製ターボチャージャーとインタークーラーが装着され、キャブレター仕様の後に燃料噴射装置も追加された。EB型は2バルブ仕様の軽自動車用エンジンで唯一64馬力に到達したエンジンでもあった。ハイゼットピックアップ向けに開発されたスーパーチャージャー仕様は、カーエアコンの使用で低下したトルクや重負荷時の出力を補う目的で設定された[3]イタリアイノチェンティ・ミニも660 ccのEF型に切り換えられるまではEB型の省燃費版が使用された。

搭載車種

[編集]

主要諸元

[編集]
最大出力 (JIS ネット値) 最大トルク 圧縮比 燃料供給装置 搭載車種 Notes
PS kW rpm kgm Nm lbft rpm
自然吸気(NA) EB10
EB40
EB45
32 24 6,000 4.4 43 32 3,500 10.0 キャブレター ミラ(EB10)
クオーレ(EB40/45)
リーザ(EB40)
リーザバン(EB10)
34 PS (グロス値)
EB60 30 22 5,500 4.5 44 33 3,500 ハイゼット / アトレー(86.05-90.03)
EB-?? 31 23 6,400 4.3 42 31 3,000 イノチェンティ・ミニ 500 L/LS 触媒無し、出力表記はECE準拠。
ターボ EB20
EB50
50 37 6,500 7.0 69 51 4,000 8.3 キャブIC ミラ TR(EB20、1985.08-90.02)
クオーレ CR(EB50、1985.08-90.02)
リーザ TR-ZZ(EB20、1989.01-90.07)
52 PS (グロス値)
IHI製RHB51型タービン
EB21 50 37 6,000 7.0 69 51 3,500 リーザバン(1986.11-90.07)
EB70[3] 46 34 6,000 6.5 64 47 3,500 8.6 アトレー(1986.05-88.10) IHI製RHB51型タービン
EB71 52 38 6,000 7.2 71 52 4,000 アトレー(1988.10-90.03)
EB25 58 43 6,500 7.4 73 54 4,000 EFI、IC ミラ TR-XX EFI(87.10-88.10) IHI製RHB31AW型タービン
EB26 64 47 6,500 7.7 76 56 4,000 8.0 ミラ TR-XX EFI(88.10-90.02)
リーザ TR-ZZ EFI(89.01-90.08)[4]
IHI製RHB31AW型タービン
スーパーチャージャー
(SC)
EB80[3] 44 32 6,000 6.0 59 43 3,500 キャブレター ハイゼットピックアップ (87.05-90.02)

ED型 (850 / 800 cc)

[編集]

ED型は排気量847 cc (0.85 L)で、輸出仕様のミラ/クオーレに搭載する目的で製造された。内径66.6 mm、行程81 mm。ED型は当初は日本で製造されていたが、その後マレーシアプロドゥアに生産が引き継がれ、長い開発と改良を受ける事となる。現在でもDOHC・EFIが導入されたED-DE型及びDVVT可変バルブ機構搭載の最新型エンジンであるED-VE型が、産業用エンジンとしては要求仕様によりプロパンガス仕様へ変更可能な26kW出力のエンジンが製造されている。またED型には短期間、スイス市場向けの特別仕様が存在した。これはスイスの地方行政区画であるカントンの幾つかに、800cc以下の車両を優遇する税制が存在した為である。このエンジンはED10Aと呼ばれ、796 ccの排気量を得る為に2mm狭い内径(64.6 x 81 mm)を使用した[1]

搭載車種

[編集]

主要諸元

[編集]
最大出力 最大トルク 工業規格 圧縮比 燃料供給装置 触媒 搭載車種 備考
PS kW rpm Nm lbft rpm
ED10 6V
SOHC
44 32 5,500 67 49 3,200 DIN 9.5 キャブレター クオーレ/ドミノ/ハンディ[1]
40 29 5,600 63 46 3,250 クオーレ/ドミノ/ハンディ[5]
37 27 5,500 62.7 46 3,800 プロドゥア・カンチル 850EX[6]
ED-?? 35.5 26 4,800 65 48 2,800 キャブ又は
ガスミキサー
産業用エンジン[7] 傾斜配置
ED10A[1] 41 30 5,500 62 46 3,200 DIN 9.0 キャブレター クオーレ(87.09-90.05) 796 cc、スイスのみ
ED-DE 12V
DOHC
50 37 5,200 74.4 55 4,000 10.0 EFI プロドゥア・カンチル 850EZi[6]
ED-VE 39 29 6,000 76 56 4,000 EFI、DVVT プロドゥア・ビバ[6]

EF型 (660 cc)

[編集]

EF型は、1990年に軽規格が改正された際にEB型を更新する目的で開発された659 cc (0.66 L)のエンジンである。最初に搭載されたのは1990年3月にフェイスリフトを受けたミラである[8]。 内径はEB型の62 mmから68 mmに拡大され、行程は60.5 mmに設定された。EF型は長期間の製造の中で無数のバリエーションが開発され、多くのダイハツ車に搭載された。ダイハツ車向けとしては2007年11月に製造を終了し、その間にKF型エンジンに完全に取って代わられる事となった。EF型はそれまでのEB型と殆ど同じ位軽量で、2004年のEF-SE型で68 kg (150 lb)であり、近代的な排ガス対策機器と燃料噴射装置を搭載していた[9]2016年6月現在では産業用のEF-SE/VE各型4機種の製造が継続されている。

EJ型 (1,000 cc)

[編集]

1998年2月に登場。水冷直列3気筒DOHC12バルブ、内径72.0mm×行程81.0mm、総排気量989cc。2011年プロドゥア・マイヴィがモデルチェンジした事で自動車用としての製造は終了しているが、産業用エンジンとしてEJ-VE型直立配置エンジンの生産が継続されている。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 1998年(平成10年)からトヨタ自動車の子会社

出典

[編集]
  1. ^ a b c d Büschi, Hans-Ulrich, ed (March 5, 1987) (German/French). Automobil Revue 1987. 82. Berne, Switzerland: Hallwag AG. p. 240. ISBN 3-444-00458-3 
  2. ^ a b Baobab Street (バオバブストリート) (1987) (Japanese). エンジョイ・ダイハツ ミラ, クオーレ/リーザ [Enjoy Daihatsu Mira, Cuore/Leeza]. マイカーエンジョイマニュアル [My Car Enjoy Manual]. Tokyo: Sankaido (山海堂). p. 185. ISBN 978-4-381-07561-1 
  3. ^ a b c Kobori, Kazunori (2007) (Japanese). ダイハツ 日本最古の発動機メーカーの変遷 [Daihatsu: The History of Japan's Oldest Engine Company]. Tokyo: Miki Press. p. 75. ISBN 978-4-89522-505-2 
  4. ^ (Japanese) Car Graphic: Car Archives Vol. 11, '80s Japanese Cars. Tokyo: Nigensha. (2007). p. 250. ISBN 978-4-544-91018-6 
  5. ^ Mastrostefano, Raffaele, ed (1990) (Italian). Quattroruote: Tutte le Auto del Mondo 1990. Milano: Editoriale Domus S.p.A. p. 168 
  6. ^ a b c Perodua Spesikasi Teknikal
  7. ^ ED series specifications Archived 2011年2月15日, at the Wayback Machine.
  8. ^ Car Graphic: Car Archives '80s, p. 249
  9. ^ EF Series Specifications”. Daihatsu Motor Company (2004年). 2009年6月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月2日閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]