セイヨウツゲ
セイヨウツゲ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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自生するセイヨウツゲ Buxus sempervirens
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保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類(APG IV, Cantino et al. (2007)) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Buxus sempervirens L. (1753)[1][2] | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
セイヨウツゲ | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
common box[3] box[4] | ||||||||||||||||||||||||||||||
本種の自生地
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セイヨウツゲ(西洋柘植、学名: Buxus sempervirens)は、ツゲ科ツゲ属の常緑性低木。刈り込みにもよく耐え、庭木や街路樹としてよく用いられる。別名、ヨーロッパツゲ[5]。ボックスウッドやスドウツゲ(須藤柘植)としても知られている[注釈 1]。
形態
[編集]樹高は5 m[3]で、ときに8 mにも達する[5]。葉は長楕円形から倒卵形で明るい緑色をしている[3]。葉はツゲに比べ細く[5]、革質である[4]。単葉で互生し、鋸歯はない。陽地または半陰地を好み、日照が強すぎると葉焼けすることがある。冬期に寒さに遭うと山吹色や茶色に紅葉する。
開花期は3 - 4月。緑黄色で花弁のない、目立たない花をつける[4]。両性花で香りが強く虫媒を行う。果実は3 - 6個の種子を含む3室の蒴果。蒴果は開くと3 m近くまで種子を飛ばす[7]。
分布・生育環境
[編集]地中海沿岸(南ヨーロッパ・北アフリカ)や西アジアのコーカサス山脈付近に自生している[5][8]。フランス、ピレネー山脈のスペイン側、イングランド南部でもよく見られる[8]。ヨーロッパブナとともに白亜や石灰岩質の土壌の斜面を好む[7]。
本州~九州に植栽される。高知県安芸市の須藤信喜氏が北米より持ち帰り、繁殖栽培し、全国へ普及したといわれている。
西コーカサスに自生する Buxus colchica Pojark.、東コーカサスおよび北イランに自生するB. hyrcana Pojark. は普通本種のシノニムとして扱われる[2]。
人とのかかわり
[編集]1970年代から利用されるようになった比較的新しい造園木。萌芽力があり、刈込みに耐えることから、生垣などに多用される[5][3]。他に街路樹、庭園樹、公園樹、花壇の縁取り、トピアリーとして利用されている[5]。容易に移植できる。
耐乾性・耐火性があり、煙にはやや強い。ツゲと同様に挿木や実生で殖やされる[5]。耐寒性は強い[3]。水捌けのよい土が適している。
セイヨウツゲが自生している地域の郊外の造園家は、さまざまな幾何学模様に仕立てたトピアリーを誇りにしている[8]。フランス人は、宮殿や大聖堂、大規模な城などの庭園を、セイヨウツゲの生垣とトピアリーで飾ってきた[8]。トピアリーの歴史は古く、古代ローマ帝国で「トピアリウス」と呼ばれた園芸家が、セイヨウツゲを使ってミニチュアの風景や動物をかたどったものを作ったのが始まりとされる[8]。
園芸品種
[編集]- ‘マルギナタ’ Buxus sempervirens cv. Marginata) - 白覆輪葉[5]
- ‘エレガンティシマ’ Buxus sempervirens cv. Elegantissima - 白覆輪葉
- ‘ハンドスウォルセンシス’ Buxus sempervirens 'Handsworthensis' [3][9]
- ‘スフルティコサ’ Buxus sempervirens 'Suffruticosa' [9]
害虫
[編集]ハマキムシ(ハマキガの幼虫)、ツゲノメイガ Cydalima perspectalis (メイガ科)の食害を受ける[11]。
材の利用
[編集]セイヨウツゲの成長は非常に遅く、ヨーロッパ産のものとしては最も重い材木になり[8]、材は黄色くて緻密でムラがなく堅い[7]。印材、櫛などに利用される。彫刻、旋盤加工、象嵌細工などの加工がなされる[7]。磨くとよく艶が出るため、かつて珍重された[7]。19世紀後半には、挿絵入りの本や新聞を印刷するための細かい彫刻をする木版の優良材として好んで利用された[8]。木版印刷はシリンダーオフセット印刷や銅版エッチングなどに取って代わられることになったが[8]、現在でも、マレットのヘッドや定規などにセイヨウツゲの材が用いられる[7]。
セイヨウツゲは楽器とも親密で、古代エジプト人はこの材から竪琴を作った[8]。材質が安定していて、正確なチューニングをしたり孔を開けることができるため、数百年にわたりオーボエやリコーダーなどの木管楽器に使われている[8]。
英語で「箱」を意味する名詞 box は、ラテン語の buxus、更には古代ギリシア語の πυξίς (pyxis; ピュクシス)に由来する[4]。さらにこの語は本種、セイヨウツゲを指す πύξος (pyxos; ピュクソス)から派生したものである[4]。それは、古くから細工物に使われ、本種の材で作られた小箱を「ピュクシス」と呼んだものが、のちに小箱一般を指すようになったのである。古典ラテン語においても、buxus は植物としてのツゲだけでなくツゲ材、そしてさらには笛・駒や櫛などのツゲ製品をも意味する[4][12]。
薬用
[編集]かつて薬用にも供された[7]。葉が解熱剤であるキニーネの代用として使われていた[13]。アリストテレスのものとされる『異聞集』では、セイヨウツゲの花の蜂蜜には濃厚な香りがあり、「健康な者を狂わせるが、てんかん患者をたちどころに癒やす」と記されている[8]。しかし今日では、セイヨウツゲには強い毒性があるアルカロイドが何種類か含まれていることがわかっているため、この花の蜂蜜は警戒されている[8]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ただし、これらの名で植栽されるものはツゲ Buxus microphylla の栽培個体とされることもある[6]。
出典
[編集]- ^ a b Chadburn, H. & Barstow, M. 2018. Buxus sempervirens. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T202944A68067753. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-1.RLTS.T202944A68067753.en. Downloaded on 01 January 2021.
- ^ a b GRIN 2021, Buxus sempervirens L.
- ^ a b c d e f 英国王立園芸協会 2001, p. 509.
- ^ a b c d e f Webster 1958, p. 217.
- ^ a b c d e f g h 鈴木・横井 1998, p. 66.
- ^ 林 2020, p. 165.
- ^ a b c d e f g “Box (Buxus sempervirens)”. British-Trees.com. 2022年3月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l ドローリ 2019, p. 33.
- ^ a b c d 英国王立園芸協会 2001, p. 152.
- ^ a b 英国王立園芸協会 2001, p. 177.
- ^ 丸山 1992, pp. 56–58.
- ^ 水谷 2009, p. 86.
- ^ Lawrence, E. (1985). The Illustrated Book of Trees & Shrubs. Gallery Books. p. 171. ISBN 0-8317-8820-8
参考文献
[編集]- Cantino, Philip D.; Doyle, James A.; Graham, Sean W.; Judd, Walter S.; Olmstead, Richard G.; Soltis, Douglas E.; Soltis, Pamela S.; Donoghue, Michael J. (2007). “Towards a phylogenetic nomenclature of Tracheophyta”. Taxon 56 (3): E1-E44.
- Webster, Noah (1958). Webster's New Twentieth Century Dictionary of the English Language Unabridged Second Edition. The World Publishing Company. p. 217
- 英国王立園芸協会 監修 著、塚本洋太郎 監訳 訳、クリストファー・ブリッケル 責任編集 編『新・花と植物百科』同朋舎、2001年3月15日。ISBN 4-8104-2657-2。
- ジョナサン・ドローリ 著、三枝小夜子 訳『世界の樹木をめぐる80の物語』柏書房、2019年12月1日。ISBN 978-4-7601-5190-5。
- 鈴木基夫、横井政人 監修『山溪カラー名鑑 園芸植物』山と溪谷社、1998年4月1日。ISBN 4635090280。
- 鈴木おさむ・相関芳郎『生垣とカバープランツ』グラフィック社、1997年7月25日。ISBN 4766109732。
- 林将之『山溪ハンディ図鑑14 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類』山と溪谷社、2020年1月5日。ISBN 978-4-635-07044-7。
- 丸山威 (1992). “ツゲ種類間におけるツゲノメイガの被害差異”. 日本応用動物昆虫学会誌 36 (1): 56-58. doi:10.1303/jjaez.36.56.
- 水谷智洋『LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata 羅和辞典〈改訂版〉』研究社、2009年3月25日(原著1952年9月)。ISBN 978-4-7674-9025-0。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- “Buxus sempervirens L.”. GRIN (2021年11月20日). 2022年3月4日閲覧。