スーパーセンター
スーパーセンター(SUC)は、スーパーマーケット(食品スーパー)とディスカウントストアを完全に一体化して、衣食住全てを扱うフルラインの売り場をワンフロアに納め、1箇所のレジにて集中して会計する総合スーパーの小売業態である[1]。アメリカのウォルマート社が、この業態の店舗をスーパーセンターと称したことが始まりである。
日本においては、スーパーマーケット(食品スーパー)とホームセンターを足したような店もスーパーセンターと呼ばれる(綿半ホームエイドなど)。
概要
[編集]フランスのカルフールの主力業態であるハイパーマーケットの衣食住全てを扱うワンフロア・集中レジ方式をアメリカに導入して、1万品目の食品と4万品目の非食品を扱う業態として展開したが、うまく行かなかったため[2]、当時規模が競争における優位性に重要とされていたハイパーマーケット業態の食品と非食品のワンストップでの利便性であることに着目し[3]、売場面積の調整[4]や試食コーナーの開設を含む食品販売方法の改善[5]、品揃えの拡充などを行って確立した業態である[6]。そのため、当初はウォルマートの業態のみを指す言葉であった[7]。
ウォルマートが展開している「スーパーセンター」は、売場面積1〜2万m2に衣食住フルラインの約10万品目[8]をワンフロア・集中レジ方式で扱ってコストを引き下げ、毎日同じ低価格で提供する「エブリデー・ロープライス(EDLP)」を実現している[9]。
このワンフロアという特徴により、店舗建設費の削減に繋がるほか[10]、全店で一箇所のレジで管理可能となるため、多層階の総合スーパーより顧客の売り場全体への誘導がスムーズで衣食住全般にまたがる幅広い品目の買い回りに繋がると同時に[11]、人件費を含むランニングコストも下がり[12]、それが低価格と利便性を両立させて競争力が高まる好循環を生んでいる。
こうした特性を実現するワンフロア1〜2万m2に衣食住フルラインという業態であることから、土地代の安いことを必要とする地方の郊外に立地するのが通例で、その中で成り立つようアメリカで3 - 5万人、日本で3-10万人程度の商圏人口で成り立つ小商圏の大型小売店となるような商品構成の工夫が必要なため、アメリカのウォルマート、Kマートや、日本のPLANT、A-Zスーパーセンター、ベイシアのような地方や郊外に拠点を置き、その生活習慣に詳しい企業が成功することが多い[13]。
人口密度の低い地方で有効な、衣食住のフルラインの店舗を地価の安さを生かしたワンフロア集中レジ方式で展開するという低コストのフォーマットは、フランスの学者ルネ・ユーリックが提唱した「小さな町には大きくつくれ。大きな町には小さくつくれ」[14]の前半部「小さな町には大きくつくれ。」を具体化したものといえる。
日本においても従来型のGMSと呼ばれる総合スーパーに代わるものとして注目を集めた。ウォルマートの子会社化した西友[15]やイオンなども参入しているが、イオンが2010年までに100店体制とするとしていたのを達成できず[16]、一部では逆にスーパーセンターとして開業した店舗を別形態のディスカウントストアに業態転換して撤退する例が見られる[17]。日本国内でのスーパーセンターの先駆けで福島県を中心に展開していた藤越も経営が悪化し、最終的にはヨークベニマルに吸収され転換するなど、日本全体ではまだ従来型の総合スーパーに取って代わるほどの定着は見られない。
ホームセンターから参入したジョイは、生鮮食料品などの日持ちのしない食品の在庫管理に失敗して撤退した[18]。一方で同じくホームセンターから参入した綿半ホームエイドは、各地の店舗を業態転換させたり新規開店を行って店舗数を増やし、2006年度には売上高伸び率が長野県内の大手小売業者で最大を記録する[19]など、経営戦略によっては地域に根付いて成功している例もある。
特徴
[編集]スーパーセンターの特徴としては、以下の特徴がある。
- 食料品・医薬品・日用品・衣料品・家電・カー用品など、日常生活に必要な物はおおむね揃う(ワンストップショッピング)。
- 売場はワンフロアが基本。
- 集中レジ方式。
- 巨大な駐車場を用意。
- 毎日が低価格(EDLP)。
スーパーセンターの例
[編集]- アメリカ合衆国
- 日本
- スーパーストア[要曖昧さ回避](青森県)
- スーパーセンターアマノ(秋田県)
- スーパーセンタートラスト(秋田県)
- ベイシア、カインズスーパーホームセンター(関東地方)
- PLANT
- 西友
- イオンスーパーセンター(北海道・東北地方)※関東・中部・近畿・九州からは撤退
- エイヴイ(神奈川県) - 平成町店のみ
- 綿半スーパーセンター(中部地方)
- ドミースーパーセンター(愛知県三河地方)
- イズミヤスーパーセンター(近畿地方)
- スーパーセンターオークワ(中部地方・近畿地方)
- スーパーセンターマルナカ(香川県)
- スーパーセンタートライアル、メガセンタートライアル
- ハイパーセンターオサダ(長崎県)
- A-Zスーパーセンター(鹿児島県)
- ニシムタ(鹿児島県)
脚注
[編集]- ^ 「SuCとは、非食品中心のディスカウントストアと食品スーパーを融合させた業態で…ワンフロア・ワンストップ型、衣食住フルライン」「産業界の動き 総合スーパー(GMS)のスーパーセンター(SuC)への取組」 住友信託銀行 調査月報 2004年8月号
- ^ 「本来ハイパーマーケット業態は食品と非食品のコンビネーションによるワンストップショッピングの利便性を提供するのが競争的強みであるが、カルフールはそれを米国の消費者にうまく打ち出すことはできなかった。…米国型ハイパーマーケットであるハイパーマートUSAが4店舗までで打ち切りになった」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会、2004年9月
- ^ 「食品と非食品の購買頻度の違いは確かに存在するが、それを調整し一回の買い物で済めば時間的にも経済的にも消費者にとって極めて便利であることに着目したウォルマートはカルフールとは異なる地元企業独自の「微調整」を行った。」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会、2004年9月
- ^ 「最小の2700坪から最大の5200坪までの売場面積の範囲で、スーパーセンター業態に見合う適正な売場面積を決定するまで実験的な調整を行ってきたのである。」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会、2004年9月
- ^ 「消費者に食品部門も受け入れられるために,店舗内において様々な工夫が試みられた。例えば、試食してから食品が購買できる試食「バー(bars)」を設置することがその工夫の一つである。」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会、2004年9月
- ^ 「ウォルマートは、食品を主にしながら非食品の範囲を少しずつ広げていく。本国のハイパーマーケットとは逆の手順で米国的ハイパーマーケット概念、すなわち変容された新しい業態であるスーパーセンター概念を確立していった」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会、2004年9月
- ^ 「SuCとは、非食品中心のディスカウントストアと食品スーパーを融合させた業態で、1988年にウォルマートが、「1か所ですべての買い物を済ませたい」という消費者のニーズに応えるべく、フランス発祥のハイパーマートを原形に、より利便性を重視した新業態として、ワシントン州に1号店を出店したのが最初であり、元々はウォルマートの主力業態のみを指す固有名詞であった。」「産業界の動き 総合スーパー(GMS)のスーパーセンター(SuC)への取組」 住友信託銀行 調査月報、2004年8月号
- ^ 「取り扱い品目数が非食品分野7万品目、食品分野3万品目、床面積は約3,000〜6,500坪」「食料品市場で躍進するスーパーセンター-食料品スーパーマーケットは苦戦-」 「成長する米小売業界レポート」 日本貿易振興会 海外調査部米州課、2003年7月
- ^ 「ウォルマートが展開するSuCとは、売場面積1〜2万、ワンフロア・ワンストップ型、衣食住フルラインでアイテム数10万点という豊富な品揃え、EDLP、EDLCによる徹底した価格訴求、都市郊外もしくは更に離れた田舎(ルーラル)に立地 等の特徴を有するもの」「産業界の動き 総合スーパー(GMS)のスーパーセンター(SuC)への取組」 住友信託銀行 調査月報、2004年8月号
- ^ 「いかに店舗建設コストを抑えるかに対する解答の1つが、ワンフロアの「スーパーセンター」の導入だったのである。」「中規模総合小売企業の戦略的行動-新業態導入と組織変革-」 清水さゆり 早稲田大学商学研究紀要61号2005年11月30日
- ^ 「多層階GMSの客離れが起こって以降、いかに顧客の回遊性を高め、買上げ点数を増やすかということに頭を悩ませ続けている。…SuCはワンフロア・ワンストップという形態をとることにより、買上げ点数増加が期待できる業態として注目されている。」「産業界の動き 総合スーパー(GMS)のスーパーセンター(SuC)への取組」 住友信託銀行 調査月報、2004年8月号
「よほど魅力ある店作りをしない限り、お客さんは3階、4階へと上がってくれない。」「須藤和徳寿屋社長 店舗なくしても『心』は残る」日経ビジネス、2002年5月20日号 - ^ 「店舗の延べ面積が同じだとすると2フロアよりも6フロアの方が運営コストは高くなってしまう。レジ1つ、あるいは従業員1人でカバー出来る範囲が、6フロアの方が狭いからです。トータルの運用コストはざっと2〜3割も6フロアの方が高くなってしまいます。」「須藤和徳寿屋社長 店舗なくしても『心』は残る」日経ビジネス、2002年5月20日号
- ^ 「ウォルマートの本質は、ルーラルの住民の毎日の生活を支え、その人々と一緒になって生活上の問題を解決することを使命とする企業である。経営者自身もルーラルの生活スタイルをこよなく愛する。従って、経営者を含めたウォルマートの大多数のアソシエーツが自分達が良いと考えるルーラルの生活スタイルを提案し続ける。それに対してルーラルの住民も自らの生活上の要求を突きつける。自らの生活スタイルと一体のものだから、その要求の意味する内容が心底理解できその要求にぴったり合った商品やサービスが整えられるのである。…サム・ウォルトンは死ぬまでベントンビルから離れず、ルーラルの生活スタイルを変えることはなかった。車は実用車、店回りや出店候補地探しは自分で操縦する自家用機、出張すればエコノミー席、ホテルは安宿に2人で泊まる、という生活を送ったと言われている。心の底から農村部の生活こそが人間的な暮らしが出来ると確信した、だから皆にもそういう生活スタイルを自信を持って薦めることが出来たのだ。アソシエーツもそれが好きでルーラルに居住しているのだから当然の如くそれを受け入れる。店のアソシエーツは第一そこの住民である。ウォルマートが地域住民の熱烈と言える程の支持を集める理由は、今なお経営幹部から末端のパートタイマーに至るまでルーラルに住みルーラルの生活スタイルこそ素敵なものだと考え、提供しているからである。」「日本の小売業の来し方行く末(その15)ライフソリューションリテイラーへの道 序章」 株式会社イズミヤ総研常務取締役 及川邦雄「季刊イズミヤ総研」第39号
- ^ 「―小さな町には大きくつくれ。大きな町には小さくつくれ―これはフランスの学者ルネ・ユーリック氏が言った言葉です。故川崎進一東洋大学名誉教授が紹介して、日本で知られるようになりました。ここでいう町の大小とは地勢上というよりも人口密度や市場的なポテンシャルと考えてよいでしょう。ローカル地域には、巨大ショッピングセンターやスーパーセンターのような衣食住(+サービス)フルライン店舗のほうが、利便性が高く、競争上も有効なのです」「流通業界の動向」「いまこそ、食品スーパーは「食事問題解決業」へ転換しよう」 山本恭広(株)商業界/『食品商業』 編集長 寺岡精工 ニューバランス Vol.57、2007年4月1日
- ^ 「米ウォルマート・ストアーズ傘下の大手スーパー、西友の渡辺紀征最高経営責任者(CEO)は9日インタビューに応じ、商品を広大な平屋店舗で販売する『スーパーセンター』を2006年11月に浜松市平口にオープンする方針を明らかにした。スーパーセンターはウォルマートの主力で、同店が立地の選定など初期段階からウォルマートと手掛けた一号店となる」「西友が来秋 浜北に「スーパーセンター」」中日新聞、2005年8月10日
- ^ 「イオンはワンフロアの広い売り場に衣食住の商品を大量にそろえ、低価格で販売する「スーパーセンター」を2006年から本格出店する。郊外に年10店以上を新設し、主力業態に育てる。既存の総合スーパーからの業態転換も進め、2010年をメドに百店体制を目指す。」「イオン、スーパーセンターを本格出店」 日本経済新聞、2004年10月4日
- ^ 「総合スーパーを全国展開するイオンリテール(千葉市)は、スーパーセンター那須塩原店 (那須塩原市島方)を総合ディスカウントストアに業態転換し、「ザ・ビッグエクストラ那須 塩原店」として29日にオープンする。食品、衣料品、生活用品に絞り込み、一般スーパーより2-3割安で販売する。低価格志向に対応し、売り上げ2-3割増を目指す。スーパーセンター真岡店は2005年にオープン。直営売り場面積は1万2500平方メートルで、家電や家具も扱っていた。売り上げは当初目標を若干下回るなど、消費者の低価格志向に対応できなかったという。今月7日に閉鎖した。 真岡店はザ・ビッグエクストラとして3店舗目で、東日本では初めて。売り場面積を9900平方メートルに抑え、家具や家電の扱いをやめるなど、取扱品目も3割削減。商品を大量陳列して補充回数を削減し、段ボール箱のまま陳列するなど店内作業を効率化し、低価格での商品提供を可能とする。人員削減は伴わない。 営業時間は午前9時-午後9時。年中無休。空いたスペースは、テナントを誘致中という。 同社の鈴木新樹本部長は「購買頻度の高い生活必需品に絞り込んだ。今までにない驚きの価格を体験してもらう」と話している。 」
「ディスカウント店に転換 イオン真岡店、東日本初 ザ・ビッグエクストラ」 下野新聞2011年6月16日
「総合スーパーを全国展開するイオンリテール(千葉市)は、スーパーセンター那須塩原店 (那須塩原市島方)を総合ディスカウントストアに業態転換し、「ザ・ビッグエクストラ那須 塩原店」として29日にオープンする。真岡店に続き県内2店舗目。食品、衣料品、生活用品に絞り込み、一般スーパーより2-3割安で販売する。売り場面積は1万350平方メートル。同社は「買い替え頻度の高い商品をそろえ、来店頻度を高めてもらう」としている。営業時間は午前9時-午後9時。年中無休。 スーパーセンター那須塩原店は2008年にオープンしたが、売り上げ目標を下回っていたという。6月に開店したザ・ビッグエクストラ真岡店が前年同期の1.5倍の売り上げとなるなど好調なことから、那須塩原店も業態転換する。同社は「価格面で支持を得ている。食品以外のものが好評」としている。 今後の店舗展開については「真岡店や那須塩原店の動向を検討した上で判断する」という。」
「イオン那須塩原店、ディスカウント店に業態転換」 下野新聞2011年7月28日 - ^ 「スーパーセンターは日持ちのしない商品が多いため在庫管理が難しかったこと等から思うように収益が上がらなかった。…スーパーセンター8店舗中3店舗をホームセンターに業態転換する。」「株式会社ジョイの事業再構築計画のポイント」 「産業活力再生特別措置法 計画認定」 経済産業省 平成17年2月14日
- ^ 『日本経済新聞』2007年8月15日朝刊 長野経済27面
関連項目
[編集]- ハイパーマーケット
- パワーセンター
- ロードサイド店舗
- ショッピングセンター
- 複合商業施設
- ホームセンター
- ディスカウントストア
- EDLP(エブリデー・ロープライス)