ステウンス・クリント
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ステウンス・クリントの景観 | |||
英名 | Stevns Klint | ||
仏名 | Stevns Klint | ||
面積 | 50 ha (緩衝地帯 4,136 ha) | ||
登録区分 | 自然遺産 | ||
IUCN分類 | Unassigned | ||
登録基準 | (8) | ||
登録年 | 2014年 | ||
公式サイト | 世界遺産センター | ||
地図 | |||
使用方法・表示 |
ステウンス・クリント(Stevns Klint, ステウンス断崖[1])はデンマーク、シェラン島にある白亜質の断崖である。地質時代区分のダニアン期の模式地の一つとなっている[2]。海岸沿いの14.5キロメートル[3]ないし15キロメートル[4]にわたる断崖であり、度重なる浸食によって40メートル以上の高さになった[5]。デンマークの首都コペンハーゲンの南方45キロメートルに位置するこの断崖は[3]、スカンジナビア半島、南ヨーロッパ、アフリカを行き来する渡り鳥の通り道としての重要性、希少生物の生息地としての重要性、さらには軍事史上の文化的価値を有する場所であるとともに[6]、世界でもK-Pg境界が特によく露出した場所の一つという地質学的重要性を持つ[7]。その地質学的価値が認められ、2014年にUNESCOの世界遺産リストに登録された。
スティーブンス・クリント等と表記されることもある。
地質学
[編集]ステウンス・クリントは、マーストリヒチアン期(7200万年前 - 6600万年前)の最上層からダニアン期(6600万年前 - 6200万年前)の最下層が露出している[8]。イリジウムを含む数センチメートルの黒色粘土岩層が、K-Pg境界を明瞭に示している[5]。K-Pg境界は恐竜絶滅の原因ともいわれるチクシュルーブ・クレーターを形成した隕石(チクシュルーブ衝突体)衝突の痕跡と考えられており、同クレーターが海中にあるのに対し、ステウンス・クリントはその観察が容易であるため、地球史の解明への貢献も大きかった[9]。その時期の化石も多く産出しており、K-Pg境界における大量絶滅前後の生態系の研究にも貢献している[10]。ステウンスの地層群は1953年に建てられた冷戦期の要塞のトンネル(後述)の中でも見ることができる。断崖の外肛動物を含む白亜は、通常兵器と核兵器の双方に対して高い耐衝撃性を備えている[11]。
世界遺産
[編集]デンマーク当局は2013年に推薦した。世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は「登録」を勧告し[12]、2014年の第38回世界遺産委員会で正式登録された[13]。同じ年に申請されていたワッデン海(ドイツ・オランダの世界遺産として2009年に登録)のデンマーク側への拡大も認められたため[14]、デンマークは世界遺産リスト登録件数を2件増やして6件とした。デンマークの世界遺産登録は2004年のイルリサット・アイスフィヨルド以来のことである。
登録名
[編集]世界遺産としての登録名は英語登録名、仏語登録名ともデンマーク語をそのまま使った Stevns Klint である。その日本語表記は以下のように揺れがある。
- スティーブンス・クリント (日本ユネスコ協会連盟[9]、地球の歩き方編集室[15]ほか[3])
- スティーヴンス・クリント (『今がわかる時代がわかる世界地図2015年』[16])
- ステウンスクリント (『なるほど知図帳・世界2015』[17])
- ステウンスの崖壁 (世界遺産検定事務局[18])
登録基準
[編集]この世界遺産は世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たし、登録された(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。
- (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
- 世界遺産委員会はこの基準の適用理由として、「この資産は約6700万年前の白亜紀末に起こったチクシュルーブ隕石の衝突の、地球規模で傑出した代表例を提示している」、「ステウンス・クリントは科学、とりわけK-Pg境界の明確化と説明に関する科学への過去、現在、未来の貢献の点で、高度の重要性を有する」[19]等と説明した。
沿岸の建造物
[編集]2008年にステウンスの要塞が冷戦博物館として一般公開された。博物館の特色は軍備の大規模な展示と、要塞地下施設での1時間半ほどのガイド・ツアーである。地下施設には1.6キロメートルのトンネル群、居住区、司令部などがあり、病院や礼拝堂も備わっている。また、15センチ砲2門のための補給廠2棟も残る。トンネル群は地下18メートルから20メートルの深さで、ステウンスの白亜層に穿たれている。最高機密であったこの要塞は1953年に建造されたもので、2000年まで実際に稼動していた[20]。
ステウンスの断崖の上には、西暦1200年に遡る旧Højerup教会(Højerup Gamle Kirke)が建っている。この教会からの階段を通って崖に行くことも出来る。この教会には浸食の結果、断崖が迫り、1928年の地すべりでは内陣が崩壊し、崖下に転落した。これにかわる新しい教会(Højerup Kirke)は1913年に崖から300メートルのところに建てられた[21]。
脚注
[編集]- ^ 『世界全地図ライブアトラス』講談社、1992年、p.100
- ^ 「地質図―地質用語(TS素案:2008)」(『地質調査総合センター研究資料集』no. 486)p.11
- ^ a b c 古田 & 古田 2014, p. 126
- ^ IUCN 2014, p. 55
- ^ a b “Stevns Klint” (Danish). Den Store Danske. 23 June 2014閲覧。
- ^ IUCN 2014, p. 56
- ^ IUCN 2014, pp. 55–56
- ^ Surlyk F, Damholt T. & Bjerager M. (2006). “Stevns Klint, Denmark: Uppermost Maastrichtian chalk, Cretaceous-Tertiary boundary, and lower Danian bryozoan mound complex”. Bulletin of the Geological Society of Denmark 54: 1-48 .
- ^ a b 日本ユネスコ協会連盟 2014, p. 25
- ^ IUCN 2014, p. 59
- ^ Cliff Stevns Klint(Rotary Danmark)
- ^ IUCN 2014, p. 60
- ^ “Six new sites inscribed on World Heritage List”. UNESCO. 23 June 2014閲覧。
- ^ 日本ユネスコ協会連盟 2014, p. 29
- ^ 地球の歩き方編集室『地球の歩き方 北欧 2015-2016年』ダイヤモンド・ビッグ社、2015年、p.44
- ^ 『今がわかる時代がわかる世界地図2015年』成美堂出版、2015年、p.143
- ^ 『なるほど知図帳・世界2015』昭文社、2015年、p.132
- ^ 『すべてがわかる世界遺産大事典〈下〉』マイナビ出版、2016年
- ^ World Heritage Centre 2014より翻訳の上、引用。
- ^ “Stevensfort Cold War Museum”. Kalklanded. 23 June 2014閲覧。
- ^ “Højerup” (Danish). Den Store Danske. 24 June 2014閲覧。
参考文献
[編集]- IUCN (2014), IUCN Evaluations of Nominations of Natural and Mixed Properties to the World Heritage List (WHC-14/38.COM/INF.8B2)
- World Heritage Centre (2014), Report of the Decisions adopted by the World Heritage Committee at its 38th session (Doha, 2014) (WHC-14/38.COM/16)
- 日本ユネスコ協会連盟『世界遺産年報2015』講談社、2014年。
- 古田陽久; 古田真美『世界遺産事典 - 2015改訂版』シンクタンクせとうち総合研究機構、2014年。