スカイロン
スカイロン | |
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側面から見たスカイロン | |
基本データ | |
運用国 | イギリス |
開発者 | リアクション・エンジンズ |
使用期間 | 開発中止 |
開発費用 | 71億ユーロ[1] |
原型 | HOTOL |
公式ページ | Reaction Engines Ltd - Space Access: SKYLON |
物理的特徴 | |
段数 | 1段 |
総質量 | 345 トン |
空虚質量 | 53 トン |
全長 | 83.3 m |
軌道投入能力 | |
低軌道 |
15,000 kg 300km / 0度 |
ISS軌道 | 11,000 kg |
スカイロン(英語: Skylon)は、イギリスの企業リアクション・エンジンズ (REL) により設計されたスペースプレーンである。
概要
[編集]一般的な使い捨て型ロケットとは異なり、SABRE (Synergistic Air-Breathing Rocket Engine) と呼ばれる、大気中では酸化剤の替わりに空気を使用するエアブリージング・ロケット両用のエンジンを使用し、200回の再使用を想定したスペースプレーンであった。研究では、開発が成功すれば低軌道への打ち上げコストを2011年当時の1kgあたり1万5千ユーロから[2]、約650ユーロにまで低減させると見積もられていた[3]。2004年の見積もりによる開発費用は、総額約120億ドル[3]。
スカイロンの離陸は、ロケットのような垂直離陸ではなく、航空機のように普通の滑走路からの水平離陸で行われる。機内の液体水素と大気中の酸素を燃焼させて高度26 km、マッハ5.4まで加速した後、酸素の供給を機内の液体酸素 (LOX) に切り替えさらに加速、軌道上に到達する[4]。ペイロードを放出した後は、今度は大気圏再突入により地上に帰還する。飛行に乗員は必要ないが、ペイロードとして乗客の搭乗が想定されていた。再突入時の熱からの保護には、セラミックス系複合材料が用いられる。計画では、検査と整備の後、2日以内の再飛行を実現することが目標となっていた。
2012年時点で、スカイロンの開発・建造に必要な資金のうちごく一部だけが確保されていた。SABREエンジンの研究・開発は欧州宇宙機関 (ESA) の小規模な支援の下進められていた。2011年1月、REL社はイギリス政府に対して計画のための更なる支援を要請、4月REL社はエンジンの予冷器技術の試験成功を条件に3億5千万ドルの支援を獲得したと発表した。この技術の試験は2012年11月に成功し、スカイロンの設計は最終段階に入った[5][6]。2013年7月16日、イギリス政府はSABREエンジンの実寸大プロトタイプの作成を支援するため、6千万ユーロの出資を確約した[7]。
2013年時点でもし全ての開発計画が承認されれば、2019年には最初の試験飛行が実施され、2022年には国際宇宙ステーション (ISS) に到達する計画であった。打ち上げ能力は高度300 kmの赤道軌道に15トン、ISS軌道では11トンと見積もられており、これは欧州補給機 (ATV) より約45%多い数字である[8]。
2015年11月に、英国のBAEシステムズ社から2千万ポンドの資金提供と、技術移転を始めとした業務提携の契約を結んだ[9]。
しかしその後スカイロンが打ち上げられることはなく、リアクション・エンジンズ社は2024年10月末に経営破綻した[10]。
諸元
[編集]出典: the Skylon User Manual[11]
諸元
- 乗員: なし、地上からの遠隔操作
- 定員: 30人(乗客用モジュールを使用)
- ペイロード: 15,000 kg
- 全長: 83.3 m
- 全高:
- 翼幅: 25.4 m
- 空虚重量: 53,000 kg
- 運用時重量: 345,000 kg
- 動力: SABRE 、1,350 kN × 2
- 胴体直径: 6.75 m
性能
- 最大速度: 軌道上まで到達可(エアブリージング時はマッハ5.5)
- 実用上昇限度: 26,000 m(エアブリージング時)、>200 km
- 最大推力重量比: ~1.2 – 3(大気中では ~0.768)
- * 比推力: 大気中 3500秒 (35 kN·s/kg)、大気圏外 450 s (4.5 kN·s/kg)[12]
登場作品
[編集]- 『ガーリー・エアフォース』
- ベルクトを成層圏まで運ぶ手段として登場。試作品のため大気圏再突入は不可能という設定。
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- ^ Alan Bond (2010年). “Video of Alan Bond Lecture”. Travelling at the edge of space: Reaction Engines and Skylon in the next 20 years. Reaction Engines Limited. 9 March 2011閲覧。
- ^ “Skylon Test Date”. UK Parliament (2011年). 2011年1月27日閲覧。
- ^ a b “Skylon FAQ”. Frequently Asked Questions. Reaction Engines Limited (2010年). 2015年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年1月25日閲覧。
- ^ Hempsell and Longstaff (2009). Skylon User Manual. p. 5
- ^ “Skylon spaceplane engine concept achieves key milestone”. BBC (28 November 2012). 28 November 2012閲覧。
- ^ “Hypersonic Flight ‘Breakthrough’ Could Have Us in Tokyo by Lunch”. Wired (30 November 2012). 1 December 2012閲覧。
- ^ “UK earmarks £60m for super-fast space rocket engine”. http://www.guardian.co.uk (16 July 2013). 19 July 2013閲覧。
- ^ “Sabre rocket engine could open up access to space as never before”. ガーディアン (2013年7月17日). 2013年8月29日閲覧。
- ^ “BAE Systems and Reaction Engines to develop a ground breaking new aerospace engine”. ReactionEngines (2015年11月2日). 2015年11月4日閲覧。
- ^ “Reaction Engines' hypersonic hopes stall as funding fizzles out” (英語) (2024年11月1日). 2024年11月2日閲覧。
- ^ Hempsell and Longstaff (2009). Skylon User Manual. p. 3
- ^ Hempsell and Longstaff (2009). Skylon User Manual. p. 12
- Hempsell, Mark; Longstaff, Roger (2009) (英語) (PDF). Skylon User Manual. リアクション・エンジンズ. pp. 1–21. オリジナルの2016年4月18日時点におけるアーカイブ。
- ““宇宙まで15分”を実現する次世代エンジン「Sabre」開発に90億円を投入 ―イギリス”. ガジェット速報 (2013年7月17日). 2013年8月29日閲覧。
- “地球の裏側まで4時間で到着できる航空機「SKYLON」のテストが2019年に実施予定”. GIGAZINE (2014年12月15日). 2014年12月19日閲覧。