ジャアナヒラタゴミムシ
ジャアナヒラタゴミムシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1][2] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
絶滅危惧II類(環境省レッドリスト) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Jujiroa ana (S. Uéno, 1955)[2] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ジャアナヒラタゴミムシ[2][8] |
ジャアナヒラタゴミムシ (Jujiroa ana) は、コウチュウ目(鞘翅目)オサムシ亜目(食肉亜目)オサムシ科[1][3]ホラアナヒラタゴミムシ属[7] Jujiroa [注 1][1][3]に分類されるゴミムシの一種。
愛知県豊橋市北東部の鍾乳洞「嵩山蛇穴」[注 2][12]を基準産地として記載された種で[3]、日本(本州)の固有種である[1]。
分布
[編集]東海地方(愛知県豊橋市の蛇穴)にのみ分布する[注 3][3]。和名や原記載における学名 Ja ana は、基準産地の「蛇穴」に由来する[2]。
形態・生態
[編集]体長は12.5 mm前後で[8]、体色は飴色[3]。体のキチン質化は弱く[1]、体形はやや細く、両側はほぼ平行である[3]。複眼は退化傾向で小さい[3]。各脚はやや短くてがっしりしているが[3]、オスの跗節下面には吸着毛がない[1]。
地中性で、地中の地下浅層や洞窟[注 4]に生息する[1]が、洞窟周辺の林床に設置したベイトトラップで採集される場合もある[3]。生活史についての詳細は不明だが、他の小動物を捕食する肉食性昆虫と考えられている[注 5][2]。
ホラアナヒラタゴミムシ属[注 1][7] Jujiroa は洞窟性または地中性の褐色の種からなり、東海地方 - 四国にかけて太平洋側の地域のみから発見されている[8]。同属には Ja 亜属[注 6]以外にも[8]、ヒラノアカヒラタゴミムシ Jujiroa minobusana (Habu) [注 7][18]を含む Yukihikos 亜属や、ホラアナヒラタゴミムシ Jujiroa nipponica (Habu) [注 8] やホラズミヒラタゴミムシ Jujiroa troglodytes S. Uéno[注 9] など3種[注 10]を含む Jujiroa 亜属がいるが、 Ja 亜属はオスの前跗節下面に吸着毛がない点でこれらの亜属と区別できる[8]。
保全状況
[編集]- 愛知県レッドデータブック (2020) - 絶滅危惧II類[3]
全国的に希少な洞穴生物の一種だが[19]、基準産地の蛇穴では生息確認が途絶えており[注 11]、絶滅が危惧される[3]。減少の要因としては洞窟内部および生息地周辺の森林の乾燥化による影響のほか、マニアによる過剰採集・トラップの放置などが考えられている[3]。
関連論文
[編集]- Shun-Ichi Uéno (1955). “New cave-dwelling Anchomenids of Japan” (英語). Opuscula entomologica (Societas Entomologica Lundensis) 20 (1): 56-64.[3] - 原記載論文。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ a b ホラアナヒラタゴミムシ属[7] Jujiroa はナガゴミムシ亜科 Pterostichinae [4]のヒラタゴミムシ族に分類される[5]。なお原記載において分類された Ja 属は2020年現在、ホラアナヒラタゴミムシ属の亜属とされている[2]。
- ^ 「嵩山蛇穴」(すせのじゃあな[9] / すせじゃあな[10])は石巻山多米県立自然公園(弓張山地一帯)に位置する[11]。豊橋市嵩山町字浅間下(標高約140 m)の山腹にあり、洞窟入口の高さは約1.3 m[10]・奥行きは約70 mである[9]。1957年(昭和32年)7月1日に「嵩山蛇穴」として国の史跡に指定されている[10]。
- ^ 長谷川道明ほか (2020) は「蛇穴と静岡県西部に分布する」と述べている[3]。静岡県内ではかつて竜ヶ岩洞(引佐郡引佐町/現:浜松市浜名区引佐町)で発見されたとされ[13]、静岡県レッドデータブック(2004年版)では「要注目種(N-III 部会注目種)」に選定されていたが、2019年度のレッドデータブック改訂のための資料調査により、「静岡県内では記録されていない」と判断されたため、同年の改訂版レッドデータブックからは削除されている[14]。なお、河路掛吾 (2014) は「2013年6月に六所山(愛知県豊田市)で本種を採集・記録した」と報告している[15]。
- ^ 洞窟内部の石の下などから発見される[3]。なお、河路掛吾 (2014) は「地表から約1.5 mの樹木の幹の上で本種を採集した」と報告している[15]。
- ^ 河路掛吾 (2014) は「樹木の幹で本種を採集した際、本種は幹の穴(直径約2 mmに頭を突っ込んでおり、採集してみると口には5 mmほどのハエ類の幼虫(蛆)と思われるものを咥えていた」と報告している[15]。
- ^ Ja 亜属には本州以外にも、イノウエアナヒラタゴミムシ Jujiroa (Ja) toshioi (Habu, 1981) が静岡県内で記録されている[16](タイプ標本:静岡県湖西市梅田にて1979年6月8日に採集されたメス個体)[17]。
- ^ 体長11.5 - 12.5 mmで、本州(静岡県・山梨県)の地中に生息する[8]。
- ^ 四国に生息する[8]。
- ^ 体長11.5 - 12.5 mmで、愛知県(蛇穴洞窟と新穴洞窟)に生息する[8]。
- ^ 残り1種はナガホラアナヒラタゴミムシ Jujiroa elongata S. Uéno (三重県に生息)[8]。
- ^ 蛇穴に隣接する新穴(入口が閉鎖されている)に生息している可能性もあるが、そちらの生息状況は未調査である[3]。本種は地下性の種であるため、分布の詳細を把握することが困難とされる[2]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i 岸本 2010.
- ^ a b c d e f g h i 岸本 2015.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 長谷川ほか 2020.
- ^ a b 上野 1985, p. 105; 小松 2018, p. 42.
- ^ a b 豊田市生物調査報告書作成委員会『豊田市生物調査報告書〈分冊その2〉』(PDF)豊田市環境部環境政策課、 日本・愛知県豊田市、2016年3月、102頁。オリジナルの2020年6月23日時点におけるアーカイブ 。2020年6月23日閲覧。 - 豊田市ホームページの「生物調査報告書」から「003-2 IX 昆虫1-16 (PDF 11.6MB)」をクリックして閲覧可能。
- ^ a b 上野 1985, p. 122.
- ^ a b c d 上野 & 岸本 2001.
- ^ a b c d e f g h i j 上野 1985, p. 132.
- ^ a b “とよはしネイチャースポット保全マニュアル-嵩山蛇穴・浅間神社周辺(すせのじゃあな・せんげんじんじゃし”. 豊橋市 公式ウェブサイト. 豊橋市. 2020年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月23日閲覧。
- ^ a b c “嵩山蛇穴遺跡”. 豊橋市美術博物館 公式ウェブサイト. 豊橋市美術博物館. 2020年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月23日閲覧。
- ^ “石巻山多米県立自然公園 公園計画書 (公園計画の一部変更) (案)” (PDF). 愛知県. p. 3 (2016年). 2020年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月23日閲覧。
- ^ 「嵩山蛇穴」『国指定史跡ガイド』 。コトバンクより2020年7月9日閲覧。
- ^ 青島晃 著、静岡県県民生活局自然保護課 編『ふるさとの自然 西部編』(PDF)静岡県、1990年3月31日、106-107頁。オリジナルの2020年11月7日時点におけるアーカイブ 。2020年11月7日閲覧。 - 静岡県公式ホームページの「自然観察ガイドブック」より閲覧可能。また静岡県立中央図書館・静岡市立中央図書館・国立国会図書館(東京本館)に蔵書あり。
- ^ 平井剛夫「静岡県レッドデータブックの改訂(甲虫)」(PDF)『自然史しずおか』第69号、NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク、2020年6月15日、11頁、2020年11月7日閲覧。
- ^ a b c 河路掛吾「【短報】ジャアナヒラタゴミムシを愛知県豊田市六所山で採集」『佳香蝶』第66巻第260号、名古屋昆虫同好会、 日本・名古屋市熱田区、2014年12月13日、74頁、ISSN 0287-6477。 - 愛知県図書館に蔵書あり。
- ^ 多比良嘉晃(コウチュウ目) 著「昆虫類」、静岡県自然環境調査委員会 昆虫類部会 編『静岡県野生生物目録』(PDF)(初版)静岡県環境森林部自然保護室、2005年3月31日、110頁。 NCID BA7747557X。オリジナルの2020年11月7日時点におけるアーカイブ 。2020年11月7日閲覧。 - 静岡県公式ホームページの「静岡県野生生物目録(初版)」より閲覧可能。また静岡県立中央図書館・静岡市立清水中央図書館・国立国会図書館(東京本館および関西館)に蔵書あり。
- ^ 吉武啓, 栗原隆, 吉松慎一, 中谷至伸, 安田耕司「農業環境技術研究所所蔵の土生昶申コレクション(昆虫綱:コウチュウ目:オサムシ科)標本目録」『農業環境技術研究所報告』第28号、独立行政法人 農業環境技術研究所、2011年3月、1-327頁、doi:10.24514/00002988、ISSN 09119450、NAID 120006773609、2021年6月20日閲覧。「85. Ja toshioi Habu, 1981 イノウエアナヒラタゴミムシ Holotype female (COL-109), Shizuoka, Kosai, Umeda, 8. vi. 1979, T. Inoue leg. (Habu, 1981a).」
- ^ 上野 1985, p. 131.
- ^ “第2章 環境の現況” (PDF). 日本・愛知県豊橋市: 豊橋市環境部環境政策課. p. 22 (2004年). 2020年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月23日閲覧。 - 豊橋市ホームページの「平成16年度版 とよはしの環境」から「第2章 環境の現況>第1節 自然環境>『気候、地形・地質、植物・動物 PDF 28KB』」をクリックして閲覧可能。
参考文献
[編集]- 上野俊一 著「オサムシ科 Carabidae」、上野, 俊一、黒澤, 良彦、佐藤, 正孝(編著) 編『原色日本甲虫図鑑(II)』(2刷発行)保育社、1989年11月1日(原著1985年1月31日(初版発行))、14-179頁。ISBN 978-4586300693。
- 上野俊一、岸本年郎「中国四川省南部の石灰洞で見つかったホラアナヒラタゴミムシ属の1新種 A New Cave Species of the Genus Jujiroa (Coleoptera, Carabidae, Platyninae) from Southern Sichuan, Southwest China」『洞窟学雑誌』第26巻、日本洞窟学会、2001年12月30日、30-36頁、ISSN 0386233X、NAID 10013367973。
- 岸本年郎『ジャアナヒラタゴミムシ - 改訂レッドリスト 付属説明資料 昆虫類』(PDF)(プレスリリース)環境省自然環境局野生生物課、2010年3月、8頁。オリジナルの2020年6月23日時点におけるアーカイブ 。2020年6月24日閲覧。
- 岸本年郎 著「ジャアナヒラタゴミムシ Jujiroa ana (S. Uéno, 1955)」、環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物- 昆虫類』(PDF) 5巻、ぎょうせい、2015年2月1日、232頁。ISBN 978-4324098998。オリジナルの2020年6月25日時点におけるアーカイブ 。2020年6月25日閲覧。
- 小松貴「日本の地下空隙に生息する陸生節足動物の多様性 Diversity of troglobiontic arthropods in Japan」『タクサ:日本動物分類学会誌』第44巻、日本動物分類学会、2018年2月28日、39-51頁、doi:10.19004/taxa.44.0_39。
- 長谷川道明・蟹江昇・戸田尚希 著「ジャアナヒラタゴミムシ」、愛知県環境調査センター 編『愛知県の絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブックあいち 2020 動物編』(PDF)愛知県環境局環境政策部自然環境課、 日本・愛知県名古屋市中区、2020年3月、330頁。オリジナルの2020年6月23日時点におけるアーカイブ 。2020年6月24日閲覧。
- 長谷川道明・蟹江昇・戸田尚希 (2020年3月). “ジャアナヒラタゴミムシ Jujiroa ana (S.Uéno)” (PDF). レッドデータブックあいち2020. レッドデータブックあいち2020. 愛知県. 2020年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月8日閲覧。
関連項目
[編集]- メクラチビゴミムシ - 本種と同様に地中・洞窟で生活するゴミムシの一群
- 昆虫類レッドリスト (環境省)