コンテンツにスキップ

シングス・ウィー・ライク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『シングス・ウィー・ライク』
ジャック・ブルーススタジオ・アルバム
リリース
録音 1968年8月
イングランドの旗 ロンドン IBCスタジオ[1]
ジャンル ジャズ
時間
レーベル イギリスの旗 ポリドール・レコード
アメリカ合衆国の旗 アトコ・レコード[2]
プロデュース ジャック・ブルース
専門評論家によるレビュー
ジャック・ブルース アルバム 年表
ソングス・フォー・ア・テイラー
(1969年)
シングス・ウィー・ライク
(1970年)
ハーモニー・ロウ
(1971年)
テンプレートを表示

シングス・ウィー・ライク[注釈 1]』(Things We Like)は、スコットランドのミュージシャン、ジャック・ブルース1970年に発表した、ソロ名義では2作目のスタジオ・アルバム。ただし録音はソロ・デビュー作『ソングス・フォー・ア・テイラー』(1969年発表)よりも早い1968年8月である[3][4]

背景

[編集]

全曲ともインストゥルメンタルで、音楽的にはジャズポスト・バップフリー・ジャズ)からの影響が強い[3]

本作に参加したジョン・マクラフリンディック・ヘクストール=スミスジョン・ハイズマンは、ブルースがかつて在籍したグレアム・ボンド・オーガニゼーション(以下、GBO)の人脈である。マクラフリンは1963年4月、アレクシス・コーナーズ・ブルース・インコーポレイテッドを脱退したブルース、グレアム・ボンドジンジャー・ベイカーと、GBOの前身に当たるグレアム・ボンド・カルテット(以下、GBQ)を結成した[5][6][7]。GBQのライヴ録音はボンド名義のアルバム『Solid Bond』(1970年発売)に収録された[8]。ヘクストール=スミスはブルースらと共にブルース・インコーポレイテッドに在籍していたが、同年9月にマクラフリンと入れ替わってGBQに加入した[7]。ヘクストール=スミスを迎えたGBQはGBOとして[5]デビューしたが、1965年夏にブルース[9]、1966年5月にベイカーが脱退。ハイズマンはベイカーの後任としてGBOに加入し[10]、ヘクストール=スミスと共に1967年の解散まで在籍した。

1968年の夏、ブルースは在籍していたクリームの活動の合間にヘクストール=スミス、ハイズマンとトリオを結成して、ロンドン100 Clubでコンサートを開いた[11]。これをきっかけに、彼等は8月にIBCスタジオでジャズのアルバムを録音し始めた。その初日が終わってブルースが車で帰宅する途中、彼は旧知のマクラフリンがギターを携えて歩いているのを見かけて声をかけた[注釈 2]。マクラフリンを含む4名は録音を3日間で終えた[11]

ブルースは本作を初のソロ・アルバムにすると自分は今後ジャズ・ベース・プレイヤーとして見られるようになると考え、発表を延期した[12]。そして1970年秋に本作を『ソングス・フォー・ア・テイラー』(1969年)に続く2作目のアルバムとして発表した。同じセッションで録音されたアウトテイク「エイジング・ジャック・ブルース、スリー、フロム・スコットランド、イングランド」は、2003年発売のリマスターCDにボーナス・トラックとして収録された[1]

ブルースは本作が完成した後も、参加メンバーとの交流を持った。ヘクストール=スミスとハイズマンは1968年にコロシアムを結成し、1969年にブルースの『ソングス・フォー・ア・テイラー』のレコーディングに参加した。マクラフリンは1969年にトニー・ウィリアムストニー・ウィリアムス・ライフタイムを結成し、1970年にブルースをウィリアムスに紹介した。ブルースはライフタイムに加入して、マクラフリンと共にセカンド・アルバム『ターン・イット・オーヴァー』(1970年)に参加した[13][14]

評価

[編集]

Lindsay Planerはオールミュージックにおいて5点満点中4点を付け、アルバムの音楽性に関してローランド・カークを引き合いに出し、「HCKHHブルース」におけるジョン・マクラフリンの演奏を「ロバート・フリップが『アイランズ』(1971年)期のキング・クリムゾンで披露したジャズ的なフレットさばきに近い」と評している[3]。また、ロバート・クリストガウは本作にB+を付け「多くのロック・ミュージシャンが指向してきた単純なモダニズムよりも、オーネット・コールマンビバップに負うところが大きい、楽しめるコンテンポラリー・ジャズのLP」と評している[15]

収録曲

[編集]

特記なき楽曲はジャック・ブルース作。

  1. オーヴァー・ザ・クリフ - "Over the Cliff" – 2:53
  2. スタチューズ - "Statues" – 7:33
  3. サム・エンチャンテッド・ディック - "Sam Enchanted Dick (Medley)" – 7:28
  4. *(a) サムズ・サック - "Sam Sack" (Milt Jackson)
  5. *(b) リルズ・スリルズ - "Rill's Thrills" (Dick Heckstall-Smith)
  6. ボーン・トゥ・ビー・ブルー - "Born to Be Blue" (Mel Tormé, Robert Wells) – 4:26
  7. HCKHHブルース - "HCKHH Blues" – 8:57
  8. アーサーのバラード - "Ballad for Arthur" – 7:43
  9. シングス・ウィー・ライク - "Things We Like" – 3:33

2003年リマスターCDボーナス・トラック

[編集]
  1. エイジング・ジャック・ブルース、スリー、フロム・スコットランド、イングランド - "Ageing Jack Bruce, Three, from Scotland, England" (D. Heckstall-Smith)

参加ミュージシャン

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 2003年再発CD (UICY-9303)帯の表記に準拠。1992年再発CD (POCP-2166)では『シングズ・ウィー・ライク』と表記されていた。
  2. ^ マクラフリンは浮かない様子だったのでブルースが尋ねると、マイルス・デイヴィストニー・ウイリアムスに誘われたが旅費がなくて行けないとのことだった。そこでブルースはマクラフリンをセッション・ミュージシャンとして本作の製作に招いた。

出典

[編集]
  1. ^ a b Jack Bruce - Things We Like (CD, Album) at Discogs - 2003年リマスターCDの情報
  2. ^ Jack Bruce - Things We Like (Vinyl, LP, Album) at Discogs - アメリカ盤LPの情報
  3. ^ a b c Planer, Lindsay. “Things We Like - Jack Bruce”. AllMusic. 2016年4月13日閲覧。
  4. ^ Shapiro (2010), pp. 118–119.
  5. ^ a b Jack Bruce”. The Official Jack Bruce Website. 2016年4月13日閲覧。
  6. ^ Discogs”. 2024年12月15日閲覧。
  7. ^ a b Shapiro (2010), p. 66.
  8. ^ Graham Bond - Solid Bond (Vinyl, LP) at Discogs
  9. ^ Shapiro (2010), pp. 72, 75, 76.
  10. ^ Unterburger, Richie. “Graham Bond - Biography & History”. AllMusic. 2016年4月13日閲覧。
  11. ^ a b Shapiro (2010), pp. 118, 303.
  12. ^ Shapiro (2010), p. 119.
  13. ^ Mason, Stewart. “Turn It Over - The Tony Williams Lifetime, Tony Williams”. AllMusic. 2016年4月13日閲覧。
  14. ^ Shapiro (2010), pp. 132–139, 304, 305.
  15. ^ Christgau, Robert. “CG: Jack Bruce”. 2016年4月13日閲覧。

引用文献

[編集]
  • Shapiro, Harry (2010). Jack Bruce: Composing Himself: The Authorised Biography by Harry Shapiro. London: A Genuine Jawbone Book. ISBN 978-1-906002-26-8 

外部リンク

[編集]