コンテンツにスキップ

シモツケ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
シモツケ
シモツケソウ、伊吹山(滋賀県米原市)にて、2013年7月5日撮影
 シモツケ、伊吹山滋賀県米原市)にて、2013年7月5日撮影
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
: シモツケ属 Spiraea
: シモツケソウ S. japonica 
学名
Spiraea japonica L.f. (1782)[1]
和名
シモツケ
英名
Japanese Spiraea
Japanese meadowsweet[2]
変種
  • var. ripensis Kitam. ドロノシモツケ[3]

シモツケ(下野[4]学名Spiraea japonica L.f.[1])は、バラ科シモツケ属分類される落葉低木の1[5][6][7][8][9][10]。山地に生え、庭や庭園にも植えられる。別名、ホソバシモツケ[1]キシモツケ(木下野)とも呼ばれる[9]中国名は、繡線菊[1]

名前の由来

[編集]

学名の名「Spiraea」はギリシャ語で「螺旋」を意味し、果実が螺旋状をしていることに由来する[9]。種小名「japonica」は「日本の」を意味する[11]

和名シモツケ(下野)は最初に下野国、現在の栃木県で発見されたことに由来する[7][12]

分布と生育環境

[編集]
山地の日当たりの良い草地ニッコウキスゲと共に生育するシモツケ

日本朝鮮半島から中国西北部にかけて温帯[8]に分布する[7]

日本では本州隠岐諸島[13]四国九州に分布する[5]

海岸から山地までの、日当たりの良い草地[5]や岩礫地などにやや稀に[8]生育する[12][6]ホシミスジ[14]フタスジチョウ幼虫食草として、フタスジチョウの成虫が花を吸蜜する[15]

特徴

[編集]

落葉広葉樹の低木[12]。株立ちで樹高0.2 - 1メートル (m) になる[5]樹皮は若い枝は暗褐色から茶褐色で、生長と共に灰褐色または暗褐色となり、なめらか、縦に裂けてはがれる[6][4]は細く、稜はなくほぼ円柱形[6]。若い枝は無毛だが、冬芽周辺に毛が残る[4]

は単葉で互生[6]葉身は長さ1 - 8センチメートル (cm) 、幅2 - 4 cm[6]の披針形、卵形または広卵形で、先は尖り、縁に不揃いの重鋸歯がある[5]。葉身の最大幅は基部寄り - 中央で[8]、葉身の基部は円形 - くさび形、葉柄は長さ1 - 5ミリメートル (mm) [6]。葉の表面は緑色、無毛またはやや密に短毛が生え、葉脈はへこみ、質は膜質 - 革質[6]。葉の裏面は淡緑色または粉白色で[5]、葉脈は隆起し、白色 - 淡黄色の軟毛が生え、ときに無毛[6]。葉身の形や大きさ、毛の変異が多い[8]子葉楕円[10]

開花時期は5 - 8月[5][6]。本年枝の枝先に頂端が平らな[6]複散房形花序に多数のを付ける[5]両性花[6]で、香気があり[7]、花の直径は3 - 6 mm[5]。花の色は濃紅色、紅色、薄紅色、稀に白色[6]などがある[5]花弁は5個、楕円形 - 広楕円形で、長さ2.5 - 3.5 mm、幅1.5 - 3 mm[6]雄蕊は25 - 30個で花弁よりも長い[6]雌蕊は5個[5]、花柱は無毛で長さ1 - 1.5 mm[6]

果実は長さ2 - 3 mmで球形の袋果で、腹縫合線上に毛があり[10]、5個集まってつく[6]。表面に光沢があり、先端に花柱が残り、9 - 10月に熟して上が裂開して種子を飛ばす[6][4]。冬でも枯れた果序が枝先によく残る[4]実生の観察例として、播種1年目に細い匍匐茎を15 cm程伸ばし、多数の葉を付け、2年目からはそれらの基部から数本ずつの茎を一斉に伸ばし、年々シュート数と高さを増し、4年目に初めて開花して結実した[10]

冬芽は卵形や長卵形で褐色をした鱗芽で、多数の芽鱗がつき、芽鱗の先は尖る[4]側芽は長さ1 - 2 mmで、枝に互生する[4]。葉痕は三角形[4]

利用

[編集]

庭木公園[6]鉢植えとして移植され、盆栽切り花[6]に利用されている[5]

分類

[編集]

変種

[編集]

品種

[編集]
  • オヤマシモツケ - 学名:Spiraea japonica L.f. f. alpina (Maxim.) Makino[17]
  • シロバナシモツケ - 白花[9]、学名:Spiraea japonica L.f. f. albiflora (Miq.) Kitam.[18]
  • コシモツケ - 矮性[9]、学名:Spiraea japonica L.f. f. bullata (Maxim.) Kitam.[19]
  • ウラジロシモツケ - 学名:Spiraea japonica L.f. f. hypoglauca (Koidz.) Kitam.[20]
  • ヒメシモツケ - 学名:Spiraea japonica L.f. f. ibukiensis (Makino) Kitam.[21]

栽培品種が多く、黄金葉のものも多い[8]

種の保全状況評価

[編集]

日本では以下の多数の都道府県で、レッドリストの指定を受けている。ニホンジカ食害により個体数が減少している地域がある[22]

変種のドロノシモツケは以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。

  • 絶滅危惧種 - 奈良県[25]
  • 絶滅危惧IB類 - 三重県[16]
  • 準絶滅危惧 - 和歌山県[31]

シモツケとシモツケソウとの比較

[編集]
木本のシモツケ(左)と草本であるシモツケソウ(右)

別名のキシモツケ(木下野)は、草本であるシモツケソウ(下野草)に対して木本であることを意味する[7]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Spiraea japonica L.f. シモツケ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月31日閲覧。
  2. ^ Spiraea japonica L. f.” (英語). アメリカ合衆国農務省. 2019年1月31日閲覧。
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ドロノシモツケ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月31日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 159
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 林 (2011)、276頁
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 菱山 (2011)、129頁
  7. ^ a b c d e 牧野 (1982)、190頁
  8. ^ a b c d e f 林 (2014)、237頁
  9. ^ a b c d e 岡部 (2003)、116頁
  10. ^ a b c d 八田 (2015)、114頁
  11. ^ 大川 (2009)、11頁
  12. ^ a b c 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 74.
  13. ^ a b 改訂しまねレッドデータブック(2013植物編)、シモツケ”. 島根県. 2019年1月30日閲覧。
  14. ^ 須田ほか (2012)、213頁
  15. ^ 蛭川 (2013)、141頁
  16. ^ a b c 三重県レッドデータブック2015” (PDF). 三重県. pp. 498 . 2019年1月30日閲覧。
  17. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “オヤマシモツケ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月31日閲覧。
  18. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “シロバナシモツケ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月31日閲覧。
  19. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “コシモツケ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月31日閲覧。
  20. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ウラジロシモツケ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月31日閲覧。
  21. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ヒメシモツケ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2019年1月31日閲覧。
  22. ^ a b 徳島県版レッドデータブック(レッドリスト)”. 徳島県 . 2019年1月30日閲覧。
  23. ^ 岡山県版レッドデータブック2009” (PDF). 岡山県. pp. 123 . 2019年1月30日閲覧。
  24. ^ 京都府レッドデータブック2015、シモツケ”. 京都府. 2019年1月30日閲覧。
  25. ^ a b 大切にしたい奈良県の野生動植物(植物・昆虫類)のレッドリスト、維管束植物” (PDF). 奈良県. pp. 6 . 2019年1月31日閲覧。
  26. ^ 絶滅のおそれのある野生生物(「レッドデータブックひろしま2011」)レッドデータブックについて、種子植物” (PDF). 広島県. pp. 4 . 2019年1月30日閲覧。
  27. ^ 愛媛県レッドデータブック2014、シモツケ”. 愛媛県. 2019年1月30日閲覧。
  28. ^ 福岡県の希少野生生物 福岡県レッドデータブック2011、シモツケ”. 福岡県 . 2019年1月30日閲覧。
  29. ^ 三重県レッドデータブック2015” (PDF). 三重県. pp. 653 . 2019年1月30日閲覧。
  30. ^ 大阪府における保護上重要な野生生物 レッドリスト、維管束植物” (PDF). 大阪府. pp. 8 . 2019年1月30日閲覧。
  31. ^ •和歌山県レッドリスト【2012改訂版】” (PDF). 和歌山県. pp. 45 . 2019年1月31日閲覧。

参考文献

[編集]
  • 大川勝德『伊吹山の植物』幻冬舎ルネッサンス、2009年10月20日。ISBN 9784779005299 
  • 岡部誠『木の名前-由来がわかる花木・庭木・街路樹445種』日東書院本社、2003年8月。ISBN 4528016419 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、159頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 菱山忠三郎(監修) 編『樹皮・葉でわかる樹木図鑑』成美堂出版、2011年6月。ISBN 978-4415310183 
  • 八田洋章 編『樹木の実生図鑑』文一総合出版、2015年9月1日。ISBN 9784829988404 
  • 須田真一、永幡嘉之、中村康弘、長谷川大、矢野勝也 著、日本チョウ類保全協会 編『日本のチョウ』誠文堂新光社〈フィールドガイド〉、2012年4月30日。ISBN 978-4416712030 
  • 林将之『樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』(山溪ハンディ図鑑14)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2014年4月15日。ISBN 978-4635070324 
  • 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、74頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 蛭川憲男『日本のチョウ 成虫・幼虫図鑑』メイツ出版、2013年4月。ISBN 978-4780413120 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]