ゴマギ
ゴマギ(ゴマキ) | ||||||||||||||||||||||||
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東京大学小石川植物園 2013年4月
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Viburnum sieboldii Miq. (1866)[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ゴマキ、ゴマギ(胡麻木)[2] | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Siebold's viburnum |
ゴマギ(胡麻木[3]、学名: Viburnum sieboldii )は、ガマズミ科[注 1]ガマズミ属の落葉高木。別名、ゴマキ[2][5][6]。[要検証 ]
名前の由来
[編集]和名のゴマギは、生葉を揉んだり、枝や葉を傷つけるとゴマ(胡麻)に似た臭気がすることで、「胡麻木」に由来する[2][6][7]。学名の種小名 sieboldii は、シーボルトへの献名。
分布と生育環境
[編集]日本固有種。本州の主に関東地方以西の太平洋側、四国、九州、沖縄に分布し[2][7]、標高50 - 1300メートル (m) の低地や山地の落葉樹林内に生育し、湿った場所に多い[5]。川沿いなどにも生える[3]。
特徴
[編集]落葉広葉樹の小高木[3]。樹高は2 - 5 mになるが、大きいものは高さ7 mに達する[8][3]。幹の樹皮は褐灰色で皮目は少なく滑らか[3]。若い枝は緑色で白い毛が密に生え、のちに緑色から淡灰色になる[3]。古くなると縦に裂ける[3]。枝を折ると、ゴマのような香りがするのが特徴的である[3]。
葉は対生し、葉柄は長さ5 - 20ミリメートル (mm) になり、多少毛が生え、上面に広い溝があり、ごくまれに托葉がある。葉身は長さ5 - 15センチメートル (cm) 、幅2 - 9 cm、形は長楕円形から倒卵形まれに倒披針形で、先端は円頭または鋭頭でときに短い尾状になり、基部はくさび形から円形、縁には鋭鋸歯または粗鋸歯があるが、基部近くには鋸歯はない。革質で葉の表面はしわ状で光沢があり[8]、暗緑色で毛がなく、裏面は淡緑色で多少毛が生えるがのちに脈上と脈腋に毛が残る。側脈は6 - 12対あり、葉の縁までほぼまっすぐに伸び、表面はへこみ裏面に突き出る[2][5][6]。
花期は4月 - 6月[3]。枝先に長さ4 - 7 cm、径6 - 14 cmになるピラミッド形の散房花序をつけ、白色の多数の花を密につける。花序枝はふつう対生し、花序の軸とともにふつう毛がある。萼は長さ0.7 - 1 mmの小さな杯状で、上部がわずかに5裂する。花冠は高杯状で上部が5深裂して平開して径7 - 9 mmになり、花冠裂片は長さ2 - 3.2 mmの卵形、花冠筒部は長さ約1.5 mmと短い。雄蕊は5個あり、花冠から突き出て、花糸の長さ3 - 4 mm、葯は楕円形で長さ1.3 - 1.5 mmになる。子房は長さ2.5 - 3 mmになる長楕円形で、柱頭はほぼ無柄。
果期は7月下旬 - 10月。花後にできる果実は長さ8 - 10 mmになる楕円形の核果で、赤い果序に鈴なりにつき[8]、最初は赤くなって完全に熟すと黒くなる。中に種子1個が入る核は長さ7 - 8 mm、厚さ約2.5 mmになる倒卵状楕円形で、核の腹側に縦に走る深い溝が1個ある[2][5][6]。
冬芽は長楕円形で、頂芽は測芽よりも大きい[3]。冬芽を包む芽鱗は4枚つき、内側の2枚は軟毛があり、外側の2枚が早く落ちる[3]。葉痕のなかにある維管束痕は、3個横に並ぶ[3]。
変種
[編集]- マルバゴマキ Viburnum sieboldii Miq. var. obovatifolium (Yanagita) Sugim.[9] - 別名、マルバゴマギ、ヒロハゴマキ、オオバゴマキ。基本種のゴマギより低木状で、樹高は約2 mになり、しばしば群生する。葉は基本種より大きく、ふつう長さ10 - 19 cm、大きいもので長さ25 cmになるものもあり、縁には鋭い鋸歯がある。葉身は倒卵形から広倒卵形で、側脈は8 - 12対ある。散房花序も大きく、ふつう径10 - 16 cmになる。本州の東北地方と北陸地方などの日本海側に分布し、標高30 - 1400 mの山地に生育する[5][6]。もともと基本種と形態的に同一であったものが、冬季に積雪が多い日本海側気候である環境条件に適応して分化し、固定化した変種である。基本種のゴマギと分布域を接する区域(福島県、岐阜県、京都府、兵庫県、岡山県、鳥取県など)では、ゴマギとの交雑によって生じたと考えられる中間型がみられる[2]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 最新の植物分類体系であるAPG体系では、ガマズミ科(Viburnaceae)であるが、古いクロンキスト体系と新エングラー体系ではスイカズラ科(Caprifoliaceae)に分類された[1]。APG植物分類体系ができたとき、ガマズミ属は、ニワトコ属とともに、スイカズラ科からレンプクソウ科に移されている[4]。
出典
[編集]- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Viburnum sieboldii Miq. ゴマキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g 茂木透 写真ほか 2001, pp. 462–465
- ^ a b c d e f g h i j k l 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 28.
- ^ 大場秀章 編著 2011, p. 225
- ^ a b c d e 佐竹義輔ほか 編 1989, pp. 227–228
- ^ a b c d e 牧野富太郎 原著ほか 2008, p. 708
- ^ a b 辻井達一 2006, p. 205.
- ^ a b c 辻井達一 2006, p. 204.
- ^ “検索結果詳細表示マルバゴマキ”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 2014年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月31日閲覧。 [ マルバゴマキ] 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
参考文献
[編集]- 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本II』平凡社、1989年2月。ISBN 4-582-53505-4。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、28頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、203 - 205頁。ISBN 4-12-101834-6。
- 茂木透 写真、高橋秀男・勝山輝男 監修『樹に咲く花:合弁花・単子葉・裸子植物』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 5〉、2001年7月。ISBN 4-635-07005-0。
- 牧野富太郎 原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男 編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年11月。ISBN 978-4-8326-1000-2。
- 大場秀章 編著『植物分類表』(初版第3刷訂正入)アボック社、2011年。