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コキーコヤスガエル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コキーコヤスガエル
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 両生綱 Amphibia
: 無尾目 Anura
: コヤスガエル科 Eleutherodactylidae
: コヤスガエル属 Eleutherodactylus
亜属 : Eleutherodactylus[2]
: コキーコヤスガエル E. coqui
学名
Eleutherodactylus coqui
Thomas, 1966[3]
英名
Common Coquí
ヒロ (ハワイ島)で撮影された写真

コキーコヤスガエル (学名:Eleutherodactylus coqui) は、コヤスガエル科に属するカエルの1種。プエルトリコ固有種

夜間に "COQUI" と表記される声で大音量で鳴く[4]オタマジャクシを経由せずに卵からカエルの形態で孵化するため、繁殖に水辺を必要としない。ハワイなどで外来種として分布を拡大しており、世界の侵略的外来種ワースト100の一覧に挙げられている。

プエルトリコの文化において重要な動物で、国獣として扱われる。

形態

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雄成体は全長30-37 mm(平均34 mm)、雌は全長36-52 mm(平均41 mm)。この差は、雄が繁殖行動により多くのエネルギーを投資するためだと考えられる[5]

体色は灰色から灰褐色。指の間に水掻きはなく、泳ぎは不得意である。指の先端には吸盤があり、滑りやすい表面に張り付くことができる。

分布

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プエルトリコ固有種であり、ビエケス島クレブラ島に広く豊富に分布する。例外的に、プエルトリコ乾燥森英語版には稀である。ヴァージン諸島イスパニョーラ島[6]フロリダハワイ[7]に侵入している。ハワイには1980年代に観葉植物に紛れて持ち込まれたとみられ、主要な4島に侵入した。本種は世界の侵略的外来種ワースト100に選定されている[8]

小アンティル諸島(セント・トーマス島、セント・ジョン島、セント・クロイ島)、ガラパゴス諸島にも移入分布する[9]

プエルトリコでは最も個体数の多いカエルで、その密度は1haあたり20,000個体と推定されている[10]。外来種としては、ハワイで1haあたり91,000個体に達している[11]。侵入先でこれほど高い個体密度となる原因として、天敵や種間競争の欠如、豊富な食物などが挙げられる。個体密度は季節や環境に応じて変動するが、一般的には雨季の終わりに最も高くなり、乾季には減少する[12]

生息環境を選ばず、中湿性環境から広葉樹林、山岳、都市部などでも見られる。アナナスの葉の付け根や樹洞、岩・倒木などの下に潜む[13]。繁殖に水溜りを必要としないため、適度に湿度があれば、標高の高い場所にも生息できる。プエルトリコでは海抜1200 m、ハワイでも海抜1170 mまで見られる[14]。成体は幼体より標高の高い場所に住む傾向がある。

生態

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夜行性である。餌は主に節足動物である。待ち伏せ型の捕食者で、幼体はアリなどの小型の獲物を食べるが、成体になるとクモ・ガ・コオロギ・カタツムリ・小型のカエルなど様々なものを餌とするようになる[10]。巣を守っている雄は、栄養補給のために自身が守る卵の一部を食べることがある。

本種を対象に行われた調査では、夜間に鳴いている雄は、鳴かない雄に比べて18%の食物しか摂取できないことが示された[15]

一年中繁殖可能だが、特に雨季に活発になる。1回の産卵数は16-40で、8週おきに年6回の産卵が可能である。雄は卵を他個体やオカクチキレガイ属英語版のカタツムリから保護する[5]。体内受精を行い、17–26日後に産卵する。卵から成体になるまでは約8か月かかる。

卵は植物上に産み付けられる。マミジロミツドリオオクロアカウソプエルトリココビトドリなどの鳥の巣を利用することもある[14]オタマジャクシにはならず、卵から小さなカエルとして孵化する。孵化の時点では短い尻尾があるが、これはすぐに消失する。

鳴き声

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音楽・音声外部リンク
The coqui's distinct calls may be heard here, and here.

雄の鳴き声は "COQUI" と表記されるが、"CO" は他の雄に対して縄張りを主張するためのもので、"QUI" は雌を呼ぶためのものだと考えられている。本種の聴覚器官は、最も鋭敏な周波数が雌雄で異なるため、これに合わせて2種類の音を使い分けていると考えられる[16]

鳴き声は雌を引き寄せるほか、縄張りを主張する目的もある。他の雄が縄張りに侵入すると、唄による争いが始まる。一定のリズムで歌い続けることができなくなった方が敗者となり、肉体的な争いなしに縄張りから追い出される。

外来種問題

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在来種無脊椎動物を大量に捕食することで、生態系を脅かしている。また、他の外来種(クマネズミジャワマングースミナミオオガシラ)の餌資源となっていることも指摘されている。鳴き声による騒音被害も発生している[17]

日本には定着していないものの、外来生物法により特定外来生物に指定されており、基本的に飼育はできない。

脚注

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  1. ^ Hedges, B., Joglar, R., Thomas, R., Powell, R. & Rios-López, N. (2009). "Eleutherodactylus coqui". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2012.2. International Union for Conservation of Nature.
  2. ^ Heinicke, M.P., W.E. Duellman & S.B. Hedges (2007). “Major Caribbean and Central American frog faunas originated by ancient oceanic dispersal”. Proc. Nat. Acad. Sci. 104 (24): 10092–7. doi:10.1073/pnas.0611051104. PMC 1891260. PMID 17548823. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1891260/. 
  3. ^ Thomas, R. (1966). “New species of antillean Eleutherodactylus”. Quart. J. Florida Acad. Sci. 28: 375–391. 
  4. ^ Listen to this species's mating call here.
  5. ^ a b Henderson and Schwartz, p. 42.
  6. ^ Joglar, R.L. and Rios, N. (1998). “Eleutherodactylus coqui (Puerto Rican Coqui, Coquí Común) in Dominican Republic”. Herpetological Review 29: 107. 
  7. ^ Campbell III, Earl W. Kraus, Fred (2002) (PDF). Neotropical Frogs in Hawaii: Status and Management Options for an Unusual Introduced Pest. Wildlife Damage Management, Internet Center for USDA national Wildlife Research Center. University of Nebraska–Lincoln. http://digitalcommons.unl.edu/icwdm_usdanwrc/469/ 2007年12月13日閲覧。. 
  8. ^ S. Lowe, M. Browne, S. Boudjelas, M. De Poorter (2000). 100 of the World's Worst Invasive Alien Species: A selection from the Global Invasive Species Database. The Invasive Species Specialist Group (ISSG), a specialist group of the Species Survival Commission (SSC) of the World Conservation Union (IUCN). p. 12. 
  9. ^ コキーコヤスガエル 国立環境研究所 侵入生物DB
  10. ^ a b Douglas P. Reagan and Robert B. Waide, ed (1996). The Food Web of a Tropical Rain Forest. University Of Chicago Press. ISBN 0-226-70600-1 
  11. ^ Karen H. Beard, Robert Al-Chokhachy, Nathania C. Tuttle, and Eric O'Neill (2008). “Population density estimates and growth rates of Eleutherodactylus coqui in Hawaii”. Journal of Herpetology 42 (4): 626–636. doi:10.1670/07-314R1.1. 
  12. ^ Jarrod H. Fogarty and Francisco J. Vilella (2002). “Population dynamic of Eleutherodactylus coqui in Cordillera Forest reserves of Puerto Rico”. Journal of Herpetology 36 (2): 193–201. doi:10.1670/0022-1511(2002)036[0193:PDOECI]2.0.CO;2. JSTOR 1565991. 
  13. ^ Henderson and Schwartz, p. 41.
  14. ^ a b The Ecology of Eleutherodactylus coqui”. issg Database. October 15, 2006閲覧。
  15. ^ Woolbright, Lawrence L.; Stewart, Margaret M. (1987). “Foraging Success of the Tropical Frog, Eleutherodactylus Coqui: The Cost of Calling”. Copeia 1987 (1): 69–75. doi:10.2307/1446039. 
  16. ^ Narins, Peter M. and Robert R. Capranica (1976). “Sexual Differences in the Auditory System of the Tree Frog Eleutherodactylus coqui”. Science 192 (4237): 378–380. doi:10.1126/science.1257772. PMID 1257772. 
  17. ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7 

参考文献

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  • Robert W. Henderson and A. Schwartz (1991). Amphibians and Reptiles of the West Indies: Descriptions, Distributions, and Natural History. University Press of Florida. ISBN 0-8130-1049-7 

外部リンク

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