マルバニッケイ
マルバニッケイ | |||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() | |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Cinnamomum daphnoides Siebold & Zucc. (1846)[2] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
マルバニッケイ(丸葉肉桂[3])、コウチニッケイ[3][4] |
マルバニッケイ(丸葉肉桂、学名: Cinnamomum daphnoides)は、クスノキ科ニッケイ属に分類される常緑亜高木の1種である。コウチニッケイともよばれる。葉が厚く、先端が丸い倒卵形であり(和名の由来[3])、三行脈が目立つ。九州から沖縄県硫黄鳥島まで、海岸に生え、島嶼に多い。
概要
[編集]常緑亜高木であり、樹高10メートル (m)、幹の直径30センチメートル (cm) ほどになる[3][5]。密に分枝し、上を向いた葉が密につく[3][5][6]。樹皮は黒褐色で平滑、浅い縦じわがある[3]。新枝は淡黄緑色、四稜形で淡褐色の絹毛が密生する[3][5][4]。冬芽は卵形で先は尖る[3]。頂芽の鱗芽には淡褐色の絹毛が密生する[3]。葉は対生またはやや互生し、葉柄は絹毛に覆われ長さ6–7ミリメートル (mm)、葉身は倒卵形(最大幅は先端側)で、2.5–4.5 × 1–2 cm、基部はくさび形、先端は丸く、葉縁は全縁で縁が裏面へ反り返り、かたい革質、三行脈が目立ち、表面でへこみ裏面へ突出し、表面は初めは伏毛を散生するがのちに無毛、裏面に淡褐色の絹毛が密生する[3][5][6]。樹皮や葉には、ニッケイ属の特徴であるシナモンに似た芳香がする[3][6]。
花期は6月と12–1月の2回[3]。数個の黄緑色の花からなる散形花序が腋生し、花序柄は長く、短い絹毛が密生する[3][5][4]。花被片は広卵形、長さ 3–3.5 mm、両面に細毛を密生し、6裂、花後に脱落する[3][5]。雄しべは9個、3個ずつ3輪につき、外側2輪の雄しべの葯は内向、最内輪の雄しべの葯は外向で花糸基部に1対の腺体がある[5]。雄しべの内側には仮雄しべが1輪ある[5]。雌しべは1個、花柱は細く、柱頭は肥大する[5]。果実は液果、楕円形、長さ約 1 cm、熟すと黒紫色になる[3][4]。果托は杯状で果実の基部を包む[3]。種子は楕円形、縦条が数本ある[3]。
分布
[編集]福岡県(大島)、長崎県(男女群島)、鹿児島県(大隅半島、薩摩半島、屋久島、種子島、トカラ列島、奄美大島[4][7])、沖縄県(硫黄鳥島)に分布しており[5]、日本固有種とされていたが、2014年に中国浙江省の韮山列島から報告された[2]。
主に海岸林や山頂部等の風衝地に生育し、種子島からトカラ列島にかけて、特徴的な海岸低木林を成立させる[3][5][4]。また、庭木などにも利用されており、自生地以外でも見ることができる[3]。
保全状況評価
[編集]マルバニッケイは、IUCNレッドリストカテゴリーでは低危険種 (LC) に指定されている[1]。また、環境省のレッドデータでは準絶滅危惧とされている[8]。
準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)
生育地である各地方公共団体のレッドデータブックでは、福岡県、長崎県、沖縄県で準絶滅危惧に、鹿児島県では分布特性上重要な種に指定されている[8]。
近縁種
[編集]マルバニッケイは、日本で見られる同属別種であるニッケイやヤブニッケイに比べて、葉の形が異なり、葉の大きさも半分かそれ以下とかなり小さい点で異なる[5][9]。マルバニッケイと同様に葉の小さいものにシバニッケイ(Cinnamomum doederleinii)があり、奄美大島以南の琉球列島に分布しているが、葉の先端が鈍く尖り、葉の裏の毛が少ない点でマルバニッケイと異なる[5][9]。また、奄美大島や沖縄群島には、両者の中間的な特徴をもつケシバニッケイ(Cinnamomum doederleinii var. pseudodaphnoides)が分布する[5][10]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b de Kok, R. (2021年). “Cinnamomum daphnoides”. The IUCN Red List of Threatened Species 2020. IUCN. 2024年2月11日閲覧。
- ^ a b c d e “Cinnamomum daphnoides”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年2月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 太田和夫 (2000). “マルバニッケイ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. pp. 400–402. ISBN 4-635-07003-4
- ^ a b c d e f 新里孝和・新城和治・横田昌嗣 (2018). “マルバニッケイ(コウチニッケイ)”. In 沖縄県文化環境部自然保護課編. 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物第3版(菌類編・植物編)-レッドデータおきなわ-. 沖縄県. p. 161
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 米倉浩司 (2015). “クスノキ属”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 79–81. ISBN 978-4582535310
- ^ a b c 林将之 (2020). “マルバニッケイ”. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類 増補改訂版. 山と渓谷社. p. 117. ISBN 978-4635070447
- ^ “マルバニッケイ”. 琉球の植物. 国立科学博物館. 2025年2月11日閲覧。
- ^ a b “マルバニッケイ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2025年2月11日閲覧。
- ^ a b 太田和夫 (2000). “ニッケイの仲間の見分け方”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. pp. 404–405. ISBN 4-635-07003-4
- ^ “ケシバニッケイ”. 琉球の植物. 国立科学博物館. 2025年2月11日閲覧。
参考文献
[編集]- 鹿児島県環境生活部環境保護課編 『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物-鹿児島県レッドデータブック植物編-』 財団法人鹿児島県環境技術協会、2003年。
- 島袋敬一編著 『琉球列島維管束植物集覧』 九州大学出版会、1997年。
- 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第7巻 シダ植物~まめ科』 新星図書出版、1989年。
外部リンク
[編集]- “Cinnamomum daphnoides”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2025年2月11日閲覧。(英語)
- 波田善夫. “マルバニッケイ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. 2025年2月11日閲覧。
- “マルバニッケイ”. 植物データベース. 熊本大学薬学部薬用植物園. 2025年2月11日閲覧。
- 牧野標本館所蔵シーボルトコレクション - マルバニッケイの標本