ゲッツ/ジルベルト
『ゲッツ/ジルベルト』 | |
---|---|
スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト の スタジオ・アルバム | |
リリース | |
録音 | ニューヨーク、A&R レコーディング・スタジオ(1963年3月18日 - 3月19日)[2] |
ジャンル | ジャズ、ボサノヴァ |
時間 | |
レーベル | ヴァーヴ・レコード |
プロデュース | クリード・テイラー |
専門評論家によるレビュー | |
チャート最高順位 | |
|
『ゲッツ/ジルベルト』(英語: Getz/Gilberto)は、アメリカのジャズ・サックス奏者スタン・ゲッツと、ブラジルのボサ・ノヴァ歌手ジョアン・ジルベルトが連名で1963年に録音し、1964年に発表したアルバム。アントニオ・カルロス・ジョビンがピアノで参加し、アストラッド・ジルベルトが2曲でボーカルをつとめた。
解説
[編集]スタン・ゲッツは、チャーリー・バードとの連名で発表したアルバム『ジャズ・サンバ』(1962年)でボサ・ノヴァを取り入れ、大ヒットとなる。1963年には、ボサ・ノヴァ界の大物であるジョアン・ジルベルト(当時アメリカ在住だった)とアントニオ・カルロス・ジョビンを招き、本作を制作。クリード・テイラーがプロデュースを担当し、フィル・ラモーンとヴァル・ヴァレンティンがレコーディング・エンジニアを務めた[4]。異なるジャンルの音楽家による共同作業のため、レコーディング中には緊張感があったと伝えられ、スタンがボサ・ノヴァを正しく理解していないことに対してジョアンが怒り、ポルトガル語と英語の両方を話せるアントニオに、スタンに対して「バカ」と言うように頼んだが、アントニオはスタンに、わざと違う意味で伝えたというエピソードもある[5]。
当時ジョアンの妻だったアストラッド・ジルベルトが、「イパネマの娘」「コルコヴァード」の2曲でボーカルを担当。これが、アストラッドの歌手デビューであった。ジョアンは全編ポルトガル語で歌ったが、アストラッドのパートは英訳詞で歌われている。なお、「イパネマの娘」のシングル・ヴァージョンは、クリード・テイラーの判断により、ジョアンのボーカル・パートがカットされ、アストラッドが単独で歌った形に編集された[5]。
ジャケットの絵はプエルトリコ出身の画家オルガ・アルビズが描いた。
スタンとジョアンは、1964年10月9日にカーネギー・ホール公演を行い、その模様は後にライヴ・アルバム『ゲッツ/ジルベルト#2』として発表されるが、これは厳密には、両者がそれぞれ別のバンドを従えての演奏で、2人が実際に共演した場面は少ない。スタンが1975年に録音したアルバム『ゲッツ・ジルベルト・アゲイン(英語: The Best of Two Worlds)』は、本作と同様、ジョアンが全面参加したコラボレーション・アルバムとなった。
評価
[編集]本作は、ビルボード誌のアルバム・チャートで2位に達する大ヒット作となり、「イパネマの娘」もシングルとして全米5位に達した[3]。そして、グラミー賞ではアルバムが2部門(最優秀アルバム賞、最優秀エンジニア賞)を受賞、「デサフィナード」が最優秀インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞を受賞、「イパネマの娘」が最優秀レコード賞を受賞した[3]。本作の音楽は本来のボサ・ノヴァとは別物であると主張する声も多かったが、結果的にはアメリカにおけるボサ・ノヴァ・ブームを決定づけた作品となった[5]。
《ローリング・ストーン》誌が選んだ「歴史上最も偉大な500枚のアルバム」(2012年改定版)において447位にランクインしている[6]。
収録曲
[編集]- Side 1
- イパネマの娘(英語: The Girl from Ipanema) (アントニオ・カルロス・ジョビン, ヴィニシウス・ヂ・モライス, ノーマン・ギンベル) - 5:13
- ドラリセ(ポルトガル語: Doralice) (ドリヴァル・カイミ, アントーニオ・アウメイダ)) - 2:43
- プラ・マシュカー・メウ・コラソン(ポルトガル語: Para Machucar Meu Coração) (アリ・バホーゾ) - 5:03
- デサフィナード(ポルトガル語: Desafinado) (ジョビン, ニュウトン・メンドンサ) - 4:00
- Side 2
- コルコヴァード(ポルトガル語: Corcovado) (ジョビン, ジーン・リーズ) - 4:13
- ソ・ダンソ・サンバ(ポルトガル語: Só Danço Samba) (ジョビン, ヂ・モライス) - 3:31
- オ・グランジ・アモール(ポルトガル語: O Grande Amor) (ジョビン, ヂ・モライス) - 5:24
- ヴィヴォ・ソニャンド(ポルトガル語: Vivo Sonhando) (ジョビン) - 2:52
パーソネル
[編集]ミュージシャン
[編集]- スタン・ゲッツ - テナー・サックス
- ジョアン・ジルベルト - ギター、ボーカル
- アントニオ・カルロス・ジョビン - ピアノ
- セバスチャン・ネト - ベース - オリジナル盤を含む一部のリリースでは、誤ってトミー・ウィリアムスがクレジットされている[7]。
- ミルトン・バナナ - ドラムス、パンデイロ
- アストラッド・ジルベルト - ボーカル (A1, B1)
プロダクション
[編集]- クリード・テイラー - プロデューサー
- フィル・ラモーン - レコーディング・エンジニア
- ヴァル・ヴァレンティン - レコーディング・エンジニア
- オルガ・アルビズ - カバーの絵
脚注
[編集]- ^ Jazz news: 'Getz/Gilberto' Turns 50
- ^ Simons, David (2004). Studio Stories - How the Great New York Records Were Made. San Francisco: Backbeat Books.Cf. especially, pp.60-61.
- ^ a b c Getz/Gilberto - João Gilberto, Stan Getz : Awards : AllMusic
- ^ Stan Getz / Joao Gilberto* Featuring Antonio Carlos Jobim - Getz / Gilberto (Vinyl, LP, Album) at Discogs
- ^ a b c 日本盤CD(UCCU-5002)ライナーノーツ(藤本史昭、山口弘滋)
- ^ “Greatest Albums List (Published 2003)”. Rolling Stone. 2020年12月10日閲覧。– 2012年改訂版が掲載されている。
- ^ McCann, Bryan Daniel (2018-11-29). “1. Introduction” (英語). João Gilberto and Stan Getz's Getz/Gilberto. 33 1/3 Brazil. Bloomsbury Publishing. ISBN 978-1501323959 2020年12月10日閲覧。