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グリーゼ710

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
グリーゼ710
Gliese 710
星座 へび座
見かけの等級 (mv) 9.656
9.65 - 9.69(変光)[1]
変光星型 疑わしい
位置
元期:J2000
赤経 (RA, α)  18h 19m 50.8412023907s[2]
赤緯 (Dec, δ) −01° 56′ 19.005321656″[2]
視線速度 (Rv) -14.468 km/s[2]
固有運動 (μ) 赤経: -0.460 ミリ秒/[2]
赤緯: -0.028 ミリ秒/年[2]
年周視差 (π) 52.5185 ± 0.0478ミリ秒[2]
(誤差0.1%)
距離 62.1 ± 0.06 光年[注 1]
(19.04 ± 0.02 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 8.3[注 2]
グリーゼ710の位置(赤丸)
物理的性質
半径 0.67 R[3]
質量 0.6 M[4]
表面重力 83 G
自転速度 6.4 km/s[5]
スペクトル分類 K7 Vk[2]
光度 0.10 L[6]
表面温度 4,250 K[4], 4,109[7], 4,200[6]
色指数 (B-V) 1.36
色指数 (U-B) 1.23
金属量[Fe/H] 0.02(太陽比)[7]
他のカタログでの名称
BD-01 3474, GJ 710, HIP 89825, HD 168442, UGP 449, Vys/McC 63, NSV 10635, Gaia DR2 4270814637616488064
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グリーゼ710(Gliese 710)とは、へび座の尾部に存在する10等星で、太陽の0.6倍程度の質量を持つK型主系列星である。肉眼で観測することのできない暗い星だが、およそ135万年後に太陽系に1光年以内の距離にまで接近すると予測されている。

大きさの比較
太陽 グリーゼ710
太陽 Exoplanet


太陽系への接近

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現在、グリーゼ710は地球から約62光年の距離にあるが、ヒッパルコス衛星などが観測した恒星の座標、固有運動視線速度に基づいた計算から、グリーゼ710は136万年後に地球から1.1光年まで接近すると推定された[4]。ただし、より近い距離まで接近する可能性も皆無ではなく、太陽から1,000 au(0.016光年、1496億キロメートル)以内を通過する可能性が1万分の1ほどあるとされている[8]。仮にこの距離まで近づいた場合は、オールトの雲に加えエッジワース・カイパーベルト天体にまで影響が及ぶと考えられる。

現在から前後1000万年の期間では、グリーゼ710は、その接近距離と質量から太陽系へ最も大きな重力的影響を及ぼす恒星となると考えられる。特に、オールトの雲をかきまぜて太陽系の内側に多くの彗星を向かわせることになり、彗星の衝突確率の上昇を招くことが予想されている。もっとも、ガルシア-サンチェスらのモデルによる試算では、地球への小天体の衝突確率はほんの5%上昇する程度である[4]

2016年に公開されたガイア計画の第1回公開データによって、グリーゼ710の運動を推定する精度が向上し、太陽系への最接近は現在から135万年後で、太陽から13,366 ± 6,250 au(0.0648 ± 0.0303pc、0.211 ± 0.099光年)の距離を通過すると計算されている[9]。この距離まで接近すると、オールトの雲に与える重力的な影響は、従来の見積もりの20倍に及ぶとみられる。最接近時には、視等級は-2.7と全天で最も明るい恒星になると予想される[9]。この星は距離が近い割には固有運動が著しく小さいが、これはグリーゼ710の運動が視線方向に沿う、即ち、太陽系に向けてほぼ真っ直ぐに移動していることを意味している。

2018年に公開されたガイア計画の第2回公開データを用いての計算では、95%の信頼区間で128.1+7.1
−6.0
万年後に最接近し、太陽から0.068+0.038
−0.016
パーセク(0.222+0.124
−0.052
光年、14,019+7,842
−3,289
au)を通過するという結果が示された[10]

なお、過去1000万年の間に太陽系に最も重力的な影響を与えたのは、7万年前に0.82光年まで接近したショルツ星である[11]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ VSX: Detail for NSV 10635”. AAVSO. 2017年7月21日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g HD 168442 -- Variable Star”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2020年5月16日閲覧。
  3. ^ Johnson H. M. & Wright C. D. (1983). “Predicted infrared brightness of stars within 25 parsecs of the sun”. The Astrophysical Journal Supplement Series 53: 643-711. doi:10.1086/190905. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1983ApJS...53..643J/abstract. 
  4. ^ a b c d García-Sánchez, Joan; et al. (1999-02), “Stellar Encounters with the Oort Cloud Based on HIPPARCOS Data”, Astronomical Journal 117 (2): 1042-1055, Bibcode1999AJ....117.1042G, doi:10.1086/300723 
  5. ^ Herrero, E.; et al. (2012-01), “Optimizing exoplanet transit searches around low-mass stars with inclination constraints”, Astronomy and Astrophysics 537: A147, Bibcode2012A&A...537A.147H, doi:10.1051/0004-6361/201117809 
  6. ^ a b McDonald, I.; Zijlstra, A. A.; Byer, M. L. (2012-11), “Fundamental parameters and infrared excesses of Hipparcos stars”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 427 (1): 343-357, Bibcode2012MNRAS.427..343M, doi:10.1111/j.1365-2966.2012.21873.x 
  7. ^ a b Franchini, M.; et al. (2014-07), “The FEROS-Lick/SDSS observational data base of spectral indices of FGK stars for stellar population studies”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 442 (1): 220-228, Bibcode2014MNRAS.442..220F, doi:10.1093/mnras/stu873 
  8. ^ Bobylev, V. V. (2010-03). “Searching for stars closely encountering with the solar system”. Astronomy Letters 36 (3): 220-226. Bibcode2010AstL...36..220B. doi:10.1134/S1063773710030060. 
  9. ^ a b Berski, Filip; Dybczyński, Piotr A. (2016-11), “Gliese 710 will pass the Sun even closer. Close approach parameters recalculated based on the first Gaia data release”, Astronomy and Astrophysics 595: L10, Bibcode2016A&A...595L..10B, doi:10.1051/0004-6361/201629835 
  10. ^ Bailer-Jones, C. A. L.; Rybizki, J.; Andrae, R.; Fouesneau, M. (2018). “New stellar encounters discovered in the second Gaia data release”. Astronomy & Astrophysics 616: A37. arXiv:1805.07581. Bibcode2018A&A...616A..37B. doi:10.1051/0004-6361/201833456. ISSN 0004-6361. 
  11. ^ Mamajek, Eric E.; et al. (2015-02), “The Closest Known Flyby of a Star to the Solar System”, Astrophysical Journal Letters 800 (1): L17, Bibcode2015ApJ...800L..17M, doi:10.1088/2041-8205/800/1/L17 

外部リンク

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