グリッピア
グリッピア | ||||||||||||||||||||||||||||||
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生体復元画
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||
前期 - 中期三畳紀 | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Grippia Wiman, 1929 | ||||||||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
グリッピア(学名:Grippia)は、イルカに類似した絶滅した爬虫類のグループである、魚竜の属。全長は1 - 1.5メートルと小型であった。スヴァールバル諸島から産出した標本 SVT 203 の化石は元々 Grippia longirostris に分類されていたが、2000年時点ではヘルヴェチコサウルスに近縁な非魚鰭類の双弓類に属すると考えられている[2][3]。
発見の歴史
[編集]化石はグリーンランド、中国、ノルウェー、カナダの下部三畳系から産出している。完全な骨格は発見されていないが、保存状態の良い標本が見つかっている。以下に示すものは特筆すべきものである。
- ノルウェーのAgardh Bayで発見された海産鉄鉱石。部分的な頭骨化石から構成されているが、第二次世界大戦期に失われており、おそらく破壊されている[4]。
- ブリティッシュコロンビア州の Sulphur Mountain 累層の Vega Phroso シルト岩部層。保存の良い前肢・複数の肋骨・単一の椎体からなる標本[5]。しかし、長らくグリッピアに近縁な Gulosaurus helmi に分類されていた[6]。
進化
[編集]魚鰭類は陸棲四肢動物から完全な水棲爬虫類に進化した生物であるが、陸棲の頃の系統は発見されていない。グリッピアは水棲適応した最初期の魚鰭類の一つである[7]。グリッピアは前期三畳紀のオレネキアン期から中期三畳紀のアニシアン期にかけての約2億5000万年前から2億3500万年前まで生息していたと考えられており、また、原始的な解剖学的特徴を示すことから初期の魚鰭類の中でも特に基盤的であったとされる[3]。
グリッピアは、より派生的な魚竜との生存競争に敗れて絶滅したという仮説が提唱されている。資源を奪われたと考えられるグリッピアは最終的には約2億3500万年前に絶滅した[8]。
以下は魚鰭類の中でグリッピアの位置づけを示すクラドグラム[8]。
魚鰭類 |
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特徴
[編集]頭骨
[編集]1929年以降、複数のグリッピアの頭骨が分析されている。G. longirostris に属する頭骨標本はいくつかが再分析されており、各標本が詳細に記載され、属全体を代表するような一貫した形質が纏められた。なお、どの頭骨標本も吻部先端は発見されておらず、吻部先端のについての記載は推測に過ぎない[3]。
藻谷亮介は分析に基づいて複数のダイアグラムを組み立て、G. lonirostrisを以下のように記載した[3]。
- 左右に狭い形状を取る。
- 眼窩は上側頭窓よりも大型である。
- 方形頬骨は上側頭窓に入り込まない。
- 外鼻孔の前方縁が前上顎骨で形成されている。
- 後前頭骨の後方突起が大型の後眼窩骨に重複している。他の基盤的魚竜の頭骨と同様である。
前肢
[編集]G. longirostris の前肢は特徴的である。Wiman, 1933 での記載では、完全には水棲適応していない非常に原始的な前肢を持つとされた[9]。これらの記載には各指の先端に「蹄」(hoof)が存在するとされていたが、この記載は後に否定された[10]。
藻谷が1998年に行った前肢の記載では、ほぼ完全な標本に焦点が当てられた。なお、当該の標本は指骨の複数の遠位部が失われていると断定されている[10]。
- 指は5本である。
- 上腕骨と指骨は発達している。
- 関節した橈骨が附随している。
- 尺骨と橈骨は幅の広い扇状の形状に広がっている。
- 中手骨の分離は、4つの近位手根骨と遠位手根骨により促されている。
- 第2から第4中手骨と指骨は他の有羊膜類に似ているが、平坦である。
- 第1および第4中手骨と指骨は、外見が新月状で、内側の手根骨の方に凹状である。
- 第4および第5指骨の遠位端はより卵型をなす。
生態
[編集]G. longirostris は前期三畳紀から中期三畳紀の間に、水棲適応を果たしていた[10]。グリッピアの正確な食性については議論がある。本種に割り当てられている歯の分析からは、ずんぐりとした後方の歯と、置換する上顎骨歯が見られる。このことから、グリッピアは雑食性であったことが示唆されている[7]。なお、30年代と80年代に行われた研究では、本種は軟体動物や小型の魚類を専門的に捕食していたとされており、互いに矛盾する結論が得られている[2]。
出典
[編集]- ^ “Ichthyosaurs (Genus: 105; Species: 243)”. paleofile.com. 2021年8月21日閲覧。
- ^ a b Mazin, J.-M. (1981). “Grippia longirostris Wiman, 1929, un Ichthyopterygia primitif du Trias inférieur du Spitsberg”. Bulletin du Muséum National d'Histoire Naturelle 4: 317–340.
- ^ a b c d Motani, R (2000). “Skull of Grippia longirostris: no contradiction with a diapsid affinity for the Ichthyopterygia”. Palaeontology 43: 1–14. doi:10.1111/1475-4983.00115.
- ^ Wilman, C. (1929). “Eine neue Reptilian-Ordnung aus der Trias Spitzbergens”. Bulletin of Geological Institutions of the University of Upsala 22: 183–196.
- ^ Cuthbertson, R.S.; Russel, A.P.; Anderson, J.S. (2013). “Cranial morphology and relationships of a new grippidian (Ichtyopterygia) from the Vega-Phroso Siltstone Member (Lower Triassic) of British Columbia, Canada”. Journal of Vertebrate Paleontology 33 (4): 831–847. doi:10.1080/02724634.2013.755989.
- ^ Cuthbertson, Robin S.; Russell, Anthony P.; Anderson, Jason S. (2013). “Cranial morphology and relationships of a new grippidian (Ichthyopterygia) from the Vega-Phroso Siltstone Member (Lower Triassic) of British Columbia, Canada”. Journal of Vertebrate Paleontology 33 (4): 831–847. doi:10.1080/02724634.2013.755989.
- ^ a b Motani, R. (1997). “Redescription of the dentition of grippia longirostris (ichthyosauria) with a comparison with utatsusaurus hataii”. Journal of Vertebrate Paleontology 17: 39–44. doi:10.1080/02724634.1997.10010951.
- ^ a b Motani, R.; Manabe, M.; Dong, Z.M. (1999). “The Status of Humalayasaurus Tibetensis (Ichthyopterygia)”. Paludicola 2: 174–181.
- ^ Brinkman, Z.X.; Nicholls, E.L. (1992). “A Primitive Ichthyosaur from the Lower Triassic of British Columbia, Canada”. Palaeontology 35: 465–474.
- ^ a b c Motani, R. (1998). “First Complete Forefin of the Ichthyosaur Grippia Longirostris from the Triassic of Spitsbergen”. Palaeontology 41: 591–599.