クラヴィーア練習曲集第2巻
クラヴィーア練習曲集 第2巻(くらう゛ぃーあれんしゅうきょくしゅうだい2かん ドイツ語: Clavier-Übung II)は、1735年に出版された、ヨハン・ゼバスティアン・バッハによる鍵盤楽曲集である。『イタリア協奏曲』と『フランス風序曲』の2曲から成る。2段鍵盤式チェンバロのために作曲されており、当時のイタリア様式(コンチェルト・グロッソ)とフランス様式(フランス風序曲)とが対比されている。
経緯
[編集]『フランス風序曲』は元々はハ短調で作曲されていた。1735年の出版に向けてバッハはロ短調に移調して、例えば第1曲のリズムなど、譜面にいささかの変更を加えている。移調の理由は不明である。想像できるのは、『イタリア協奏曲』との対比を強めるのが目的だったということである。調性面では、『イタリア協奏曲』がヘ調(フラット調)で長調、『フランス風序曲』がロ調(シャープ調)で短調であり、ヘ音とロ音は互いに三全音の音程であるため、ヘ調とロ調は最遠隔調の関係である。別の動機としてありそうなのは、AからHまでの8つのドイツ音名で考えると、『クラヴィーア練習曲集 第1巻』の6曲ではヘ(F)調とロ(H)調以外の6つが使われているため、残った調性を本作で埋め合わせようとしたということである[1]。
『第1巻』の6つのパルティータの調配列は、不規則な連続体に見えるかもしれないが、音程が拡大しながら上下を繰り返すという連続体を生じている。すなわち第1曲(変ロ調)から第2曲(ハ調)へは2度上に、第2曲から第3曲(イ調)へは3度下に、第3曲から第4曲(ニ調)へは4度上に、第4曲から第5曲(ト長調)へは5度下に、最後に第5曲から第6曲(ホ調)へは6度上に進む、という具合である[2]。この連続体は本曲集にも持ち越され、『パルティータ第6番』(ホ調)から『イタリア協奏曲』(ヘ調)へは7度下に、『イタリア協奏曲』から『フランス風序曲』へは増4度上に向かう。こうして18世紀の鍵盤楽曲にとって慣習的な調性の連続は完成する。まさしくバッハ自身の名字(BACH)と同じく、B(変ロ調)から始まりH(ロ調)で終わるのであった。
註
[編集]- ^ [1] Archived 2007-09-29 at the Wayback Machine. Programme notes for recording by Lucy Carolan
- ^ Tomita, Yo (2002年). “J.S. Bach: The Six Partitas”. Yo Tomita's personal web space. 13 November 2021時点のオリジナルよりアーカイブ。31 October 2015閲覧。