コンテンツにスキップ

ギリシア・ローマ伝記神話辞典

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ギリシア・ローマ伝記神話辞典
Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology
1867年版の表紙
1867年版の表紙
編集者 ウィリアム・スミス
発行日 1844年 - 1849年
発行元 テイラー、ウォルトン・アンド・メイバリー、マレー
ジャンル 辞典
イギリス
言語 イギリス英語
ページ数 3,700ページ以上
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

ギリシア・ローマ伝記神話辞典』(ギリシア・ローマでんきしんわじてん、: Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology)は、ウィリアム・スミスが編纂した古典古代の伝記辞典1844年から1849年にかけて、テイラー、 ウォルトン・アンド・メイバリー、マレーの3社によってロンドンで出版された。全3巻、3700ページ以上に及ぶ。19世紀辞書学の古典作品の一つで、『ギリシア・ローマ古代史辞典』及び『ギリシア・ローマ地理辞典』の姉妹版。[1]

著者とその範囲

[編集]

スミスの辞典では、編集者に加えて、無署名の項目の著者35人を列挙している。主としてオックスフォード大学ケンブリッジ大学ラグビー校ボン大学の古典学者だが、一部の著者は他の機関の学者である。神話学についての項目の大部分は、ドイツ人のレオンハルト・シュミッツ英語版によるものである。[2]

伝記に関して、スミスは包括的な内容にすることを目的としており、序文で次のように書いている。

この辞典の伝記項目には、最も初期の時代から西暦476年の西ローマ帝国の滅亡、そして 1453年のトルコ人のコンスタンチノープル占領による東ローマ帝国の滅亡に至るまで、ギリシアとローマの作品に登場する重要人物の名前がす​​べて含まれている。

辞典の価値の大部分は、個々の項目の奥深さや精細さだけでなく、ギリシャやローマの作家に加えて、ルネサンスから19世紀半ばまでの近代学問への豊富で具体的な引用にある。項目では、異なる伝統や権威者の間での意見の相違、近代学者の解釈について頻繁に言及されている。しかしながら、古典作品の異なる版で使用される付番方式が変動的であり、引用での誤植を認識する難しさから、依然として元の資料を確認するべきである。辞典の項目の多くは、最近の作品において参考にされており、ロバート・グレーヴスは、『ギリシャ神話』を書いた際に印象的な資料を盗用したとして非難された。[3][注釈 1]

サミュエル・シャープは、自分の作品をエドワード・バンバリーが盗用したと考えており、1850年9月3日の日記で次のように述べている。[4]

スミス博士の『古代伝記辞典』に載っているプトレマイオスについての項目を読んで、私は確かに屈辱を感じました。それらはすべてE.H.バンベリーが私の『エジプト史』を参考にして書いたもので、参考にするために兄のダンから本を借りたにもかかわらず、謝辞は何一つありませんでした。

著名な著者

[編集]

利用と有効性

[編集]

現在、スミスの辞典はパブリックドメインとなっており、インターネット上で閲覧可能である。

2013年の『オックスフォード古典辞典』第4版は、1949年の初版で「新しいスミス」[3]と評価されたスミスの辞典について、次のように評している。[5]

古代の文学資料のみに依存した事実に基づく内容に関して、その項目は綿密で正確な傾向があり、依然として驚くほど実用的である。

しかし、スミスの辞典には重大な欠点がある。例えば、イリオスとクノッソスについて「編集者は吟遊詩人の空想とみなした。」[3][注釈 4]といった記述のことである。特に最近の発見(アリストテレス『アテナイ人の国政』線文字Bの解読など)や碑文資料などの大部分が欠けている。また、辞典が出版されてから数十年、数世紀後に公表されたこともあり、近代の学説などは含まれていない。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ グレーヴスが言及していないのは、本で使用された資料がスミスの辞典から抜粋されたものであるためだ。このことは、グレーヴスの参考文献一覧とスミスの辞典を比較すれば明らかである。
  2. ^ ユスティニアヌス1世の法制定についてだけでなく、カトーやクラッスス、ドルスス、ガイウスといった政治家や法学者の伝記に関する辞書の項目を執筆した。
  3. ^ プロイセン生まれの古典学者、後にスコットランドに移住。
  4. ^ ロバート・グレーヴス著『ギリシャ神話』(1955)の序文より引用

出典

[編集]
  1. ^ Chisholm, Hugh, ed, "Smith, Sir William", Encyclopædia Britannica, Vol. 25 (11th ed.). Cambridge University Press,  (1911), p. 270.
  2. ^ Nick Lowe「Killing the Graves myth」『Times Online』(The times)2005年12月20日。オリジナルの2016年7月1日時点におけるアーカイブ。
  3. ^ a b c Stray (2007), p. 53.
  4. ^ Clayden, PW (1883) (英語). Samuel Sharpe, egyptologist and translator of the Bible. K. Paul, Trench & co.. p. 82. https://archive.org/stream/cu31924026852180/cu31924026852180_djvu.txt 
  5. ^ Peter Green (2013). “Review: [Untitled”]. The Classical Journal 108 (3): 369-372. doi:10.5184/classicalj.108.3.0369. http://www.jstor.org/stable/10.5184/classicalj.108.3.0369. 

参考文献

[編集]
  • Hugh Chisholm, ed (1911). “Smith, Sir William” (英語). Encyclopædia Britannica. 25 (11 ed.). Cambridge University Press. p. 270 
  • Clayden, PW『Samuel Sharpe, egyptologist and translator of the Bible』Paul、London、1883年。 
  • Stray, Christophe (2007). “Sir William Smith and his dictionaries: a study in scarlet and black” (英語). Bulletin of the Institute of Classical Studies (Oxford University Press) (101): 35-54. ISSN 2398-3264. JSTOR 43768051. 
  • Green, Pater (2013). “Review: [Untitled]” (英語). The Classical Journal 108 (3): 369-372. doi:10.5184/classicalj.108.3.0369. ISSN 0009-8353. 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]

ミシガン大学図書館のデジタルコレクションでは全巻がオンラインで閲覧可能となっている。

インターネットアーカイブ上には、『ギリシア・ローマ伝記神話辞典』に一部基づく派生作品も存在している。