コンテンツにスキップ

キャベンディッシュ (バナナ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
キャベンディッシュ
Cavendish
一房のキャベンディッシュ
Musa acuminata英語版
品種群 キャベンディッシュ亜群
下位品種群 キャベンディッシュ
テンプレートを表示

キャベンディッシュ英語: Cavendish)は、バナナ栽培品種としてはMusa acuminataに、品種群英語版としてはAAA栽培型のキャベンディッシュ亜群に属する。

ドワーフ・キャベンディッシュ英語版グランド・ナイン英語版など商業的に重要な栽培品種が含まれる。1950年代以降、キャベンディッシュはもっとも流通量の多い栽培品種であり[1]パナマ病によって荒廃したグロス・ミチェルから主役の座を奪った。

栽培の歴史

[編集]
樹上で成熟中のキャベンディッシュ

栽培品種の名称は第6代デボンシャー公ウィリアム・キャベンディッシュ英語版に因んでいる。1834年頃、ウィリアム・キャベンディッシュはインド洋モーリシャスからバナナの荷物を受取り、庭師のジョセフ・パクストンチャッツワース・ハウスの温室で栽培した[2]。チャッツワース・ハウス産のバナナは、1850年代に太平洋の様々な場所に持ち込まれている。この一方で、15世紀にはすでに北大西洋カナリア諸島でバナナが生産されていたとする研究者もおり、初期のポルトガル人探検家によって広められたとされる[3]

アフリカにおけるバナナの生産は、初期のオーストロネシア人の船乗りによって東南アジアからマダガスカルに紹介されたのがきっかけである[4]。1888年、カナリア諸島産のバナナがFyffes英語版社によってイングランドに輸出された。この際に輸出されたバナナはドワーフ・キャベンディッシュであることが知られている[5]

1903年にはすでにキャベンディッシュの商業生産が開始されているが、当時の主要な品種だったグロス・ミチェルが1950年代にパナマ病で荒廃すると、キャベンディッシュが主役の座を奪った。

利用

[編集]
店頭で販売されている状態

1998年から2000年の統計において、キャベンディッシュは世界で生産されるバナナの47%を占めており、また国際取引に用いられるバナナの大半を占めていた[1]。日本国内ではほぼこれ1種類のみが常食範囲内である。キャベンディッシュの果実は生食ができ、また焼きバナナ、フルーツサラダコンポート、補完用食品としても利用される。市場で販売される際の外皮は部分的に緑色であり、熟すと黄色に変化する。熟すにつれて澱粉糖質に変化して甘い果実となる。

成熟が最終段階(第7段階)に到達すると、茶色または黒色のシュガースポットが生じる。熟しすぎると外皮は黒色に変化し、果肉は柔らかくなってしまう。収穫されるまでは自然に成熟するが、ひとたび収穫されると自然に黄色に変化することはなく、再び成熟を開始するためにエチレンガスでガス処理を行う必要がある。多くの小売業者は第3段階から第6段階でキャベンディッシュを販売しており、第4段階が理想的である。

キャベンディッシュのPLUコードは4011と4186であり、有機栽培種には94011が割り当てられている[6]。キャベンディッシュは陰茎に似た円柱形をしているため、コンドームの正しい使用法を説明するための性教育に使用される場合がある[7]

病害

[編集]

キャベンディッシュはグロス・ミチェルが植えられていた土壌でも生育したため、つる割病に対する耐性が強いと信じられた。しかし2008年半ばには、スマトラ島マレーシアでつる割病に侵されたキャベンディッシュが報告されている[8]。人為的に栽培されているキャベンディッシュは有性生殖ではなく栄養生殖によって繁殖するため、実質的に遺伝子型が同一のクローンとなり[9]、病害抵抗性が徐々に低下する。

脚注

[編集]
  1. ^ a b Arias, Pedro; Dankers, Cora; Liu, Pascal; Pilkauskas, Paul (2003). The World Banana Economy 1985–2002. Rome: Food and Agriculture Organization of the United Nations. ISBN 92-5-105057-0. ISSN 1810-0783. http://www.fao.org/docrep/007/y5102e/y5102e04.htm 30 July 2013閲覧。 
  2. ^ peak district local history, customs, wildlife, transport - Peakland Heritage”. web.archive.org (2016年3月14日). 2021年4月27日閲覧。
  3. ^ Mohan Jain, S.; Priyadarshan, P. M. (2009). Breeding Plantation Tree Crops: Tropical Species. Springer Science+Business Media, LLC. ISBN 978-0-387-71199-7. https://books.google.com/books?id=xReHR3_QYdkC&pg=PA19&lpg=PA19&dq=dwarf+cavendish+plantation#v=onepage&q=dwarf%20cavendish%20plantation&f=false 
  4. ^ Rowe, Phillip; Rosales, Franklin E. (1996). “Bananas and Plantains”. In Janick, Jules; Moore, James N.. Tree and Tropical Fruits. Fruit Breeding. I. John Wiley & Sons. pp. 169–171. ISBN 978-0-471-31014-3. https://books.google.com/books?id=7YBrT6Up_S0C&pg=PA169 
  5. ^ Davies, Peter N. (1 January 1990). Fyffes and the Banana: Musa Sapientum : a Centenary History, 1888-1988. Athlone Press. pp. 23–51. ISBN 978-0-485-11382-2. https://books.google.co.jp/books?id=ysyzAAAAIAAJ 
  6. ^ PLU Codes(Alphabetical Order)”. www.innvista.com. 2010年6月22日閲覧。
  7. ^ Wight, Daniel, and Charles Abraham. "From psycho-social theory to sustainable classroom practice: developing a research-based teacher-delivered sex education programme." Health education research 15.1(2000): 25-38.
  8. ^ Ploetz, R. C. (2005). “Panama disease, an old nemesis rears its ugly head: Part 1, the beginnings of the banana export trades”. Plant Health Progress. doi:10.1094/PHP-2005-1221-01-RV. 
  9. ^ あと10年、世界からバナナが消える? 1億トン廃棄、疫病との闘い | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)”. forbesjapan.com. 2024年8月24日閲覧。

外部リンク

[編集]