ガマズミ
ガマズミ | |||||||||||||||||||||||||||
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ガマズミの花と葉
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Viburnum dilatatum Thunb. (1782)[1] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ガマズミ(莢蒾)、アラゲガマズミ[1] |
ガマズミ(莢蒾[2]、学名: Viburnum dilatatum)は、山地や丘陵地の明るい林や草原に生えるガマズミ科[注 1]ガマズミ属に属する落葉低木。秋に赤く熟した果実は食用になり、薬酒にもなる。
名称
[編集]和名「ガマズミ」の語源は諸説あり、赤い実という意味の「かがずみ」が転訛したもの[3]、果実を頬張ると噛まずに種を吐き出すため「かまず実」の説がある[4]。また、昔は熟した赤い果実を染料に使ったので「染め」がゾメからズミへ転訛したと説く人もいる[5]。別名はアラゲガマズミ[1][2]、ヨスズ[5]、ヨソゾメ[6][7]、ヨツズミ[8][6][7]、ヨウゾメ[8][6]ともよばれる。中国名は「莢迷」[1]「莢蒾」(きょうめい)[8]。
分布域・生育地
[編集]日本、朝鮮半島、中国などの東アジア地域に分布し、日本では北海道南西部、本州、四国、九州に分布する[3][2]。平地から山地、丘陵地に分布し、雑木林や山野の日当たりのよい場所に自生する[8][6][7][2]。
形態・生態
[編集]落葉広葉樹の低木で、樹高2 - 4メートル (m) 程度となる[7]。樹皮は灰褐色[2]。若い枝は星状毛や腺点があって、灰緑色で楕円形の皮目も多い[2]。古枝は灰黒色で皮目がある[7]。
葉は対生し、長さ6 - 15センチメートル (cm) 程度の円形や卵形から広卵形で、葉縁に細かい鋸歯がある[3][7]。表面には羽状の葉脈がわずかに出っ張り、凹凸がある。表面は脈上にだけ毛があり触るとざらつくが[9]、裏面では腺点や星状毛などが多い。秋には紅葉し、橙色からやや淡い赤色、時に複数の色が混じるが、紅葉初期は紫色が残って周辺部が黒ずむことも多い[9]。
花期は5 - 6月[2]。本年枝の先に散房花序を出して、白い小さな花が平頭状に多数咲く[3][6][7]。花は直径約5ミリメートル (mm) で、花冠は深く5裂する[7]。雄蕊は5個[7]。
果期は晩夏から秋にかけて(9 - 10月)[7]。果実は直径6 mm程度の球形で、赤く熟して食用できる[3]。果実は最終的に晩秋のころに表面に白っぽい粉をふき、この時期がもっとも美味になる。冬になっても、赤い果実が残っていることがある[2]。果実はヒヨドリやメジロなどの小鳥に食べられて運ばれ、排泄物と一緒に種子が散布されて分布域を広げる[5]。
冬芽は卵形で粗い毛が多く生え、紅色を帯びた芽鱗は4枚ついて、外側の2枚は小さい[2]。枝の先端につく頂芽は、よく頂生芽を伴ってつけている[2]。枝の側芽は対生し、頂芽よりも小さい[2]。冬芽わきに残る葉痕は、倒松形やV字形で、維管束痕は3個つく[2]。
分類
[編集]近縁のコバノガマズミ(Viburnum erosum Thunb.)やミヤマガマズミ(Viburnum wrightii Miq)の葉は比較的細長く先端が尖った楕円形であるので、区別できる(しかし葉は変異が多いため、区別しにくいこともある)。
利用
[編集]秋以降の果実は食べられ、ワイン色が美しい果実酒になる[6]。材は丈夫なことから、鎌や鍬など農具の柄に用いられる[3]。染料や油も採られる[3]。枝は柔らかく折れにくいので、昔から何かを束ねる時に使った。枝をよって縄をつくり、刈柴などを手際よくまとめた。
食用
[編集]果実は甘酸っぱく食用になる[3]。初秋には酸味が強くて生食できないが、秋が深まると透明感が出て甘くなる[6]。ダイコンやカブなどの浅漬けを漬ける時に一緒に用いられ[4]、「赤漬け」は長野県戸隠村でよく行うもので紅色に染まり、実の酸味がついた大根漬けとなる。生食するほか、ジュースやキャンディ、酢、ポン酢、果実酒、ジャム[6]、ゼリー、健康ドリンクなどに商品化されている。鮮やかな赤色に完熟した果実は、焼酎やホワイトリカーに漬け込んで3か月以上たてば果実酒になり、ほぼ半年で実を取り出すと退色しない[4]。同属のコバノガマズミ、ミヤマガマズミ、ヤブデマリ、オオカメノキなども同様に利用することができる[4]。
丈夫でよく分枝するため、庭木として観賞用に植樹されることもある。
薬用
[編集]果実は「莢蒾子」(きょうめいし)とよんで、赤く熟した果実をとって薬用にする[8]。果実を焼酎に漬けて果実酒にすると、疲労倦怠、動脈硬化予防などの薬用効果もある[7]。ガマズミの薬酒は、果実を乾燥したもの、熟した生果実のどちらでもよく、容器の3分の1ほど入れて35度のホワイトリカーに1か月以上漬け込んで作る[8]。1日に猪口1杯程度飲むとされるが、妊婦は服用しない[8]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 最新のAPG体系ではガマズミ科 (Viburnaceae) に分類される。2017年に採択される以前はレンプクソウ科 (Adoxaceae) に分類され、古いクロンキスト体系や新エングラー体系ではスイカズラ科 (Caprifoliaceae) に分類されていた[1]。
出典
[編集]- ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Viburnum dilatatum Thunb. ガマズミ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月22日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 26.
- ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 265.
- ^ a b c d 戸門秀雄 2007, p. 119.
- ^ a b c 戸門秀雄 2007, p. 118.
- ^ a b c d e f g h 篠原準八 2008, p. 92.
- ^ a b c d e f g h i j k 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 67.
- ^ a b c d e f g 貝津好孝 1995, p. 210.
- ^ a b 林将之 2008, p. 76.
参考文献
[編集]- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、210頁。ISBN 4-09-208016-6。
- 篠原準八『食べごろ 摘み草図鑑:採取時期・採取部位・調理方法がわかる』講談社、2008年10月8日、92頁。ISBN 978-4-06-214355-4。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、26頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 戸門秀雄『山菜・木の実 おいしい50選』恒文社、2007年4月16日、118 - 119頁。ISBN 978-4-7704-1125-9。
- 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑 5〉、2009年8月4日、67頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、265頁。ISBN 4-522-21557-6。