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ガセリ菌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ラクトバチルス・ガセリ
分類
ドメイン : 細菌 Bacteria
: フィルミクテス門 Firmcutes
: バシラス綱 Bacilli
: ラクトバシラス目 Lactobacillales
: 乳酸桿菌科 Lactobacillaceae
: ラクトバシラス属 Lactobacillus
: L. ガセリ L. gasseri
学名
Lactobacillus gasseri Lauer and Kandler 1980

ラクトバチルス・ガセリLactobacillus gasseri)は乳酸菌の一種。グラム陽性桿菌ラクトバチルス属ガセリ菌。ガッセリ菌とも表される。

酸素の有無にかかわらず育つ通性嫌気性菌。ガゼリ菌は膣内細菌叢の一部である[1]。そのゲノムは配列決定されている[2]。ガゼリ菌は、健康な女性の生殖器下部の正常な常在菌である[3]。ガゼリ菌は、抗生物質であるラクトシリンも産生する[4]。ガゼリ菌は、バクテリオシンであるgassericin Aを生産する[5]

なお、ガセリ菌という名で販売されている製品の多くは、実際には本種ではなく近縁なラクトバチルス・パラガッセリであることが研究者グループによって提唱されている[6][7]L. パラガッセリは2018年にANIに基づきガセリ菌から分割されたもので、16S rRNAなど簡便な方法では区別が付けづらいため、本項に記述されている内容の一部は、本種ではなくL. パラガッセリの物である可能性がある。L ガセリは、L. パラガッセリの一部の株が備えている抗菌活性を持つガセリシンTや、グラム陰性菌オートインデューサーを妨害するN-アシル-L-ホモセリンラクトン分解酵素を産生する能力を持たない。

利用

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ガゼリ菌は、ヨーグルトの製造に利用されている。また、ヒトにラクトバチルスガセリPA-3を含むヨーグルトを連日摂取させたところ血清尿酸値の低下が認められた[8]

ガセリ菌は、機能性表示食品にも利用されている。機能性は、「内臓脂肪を減らす」「心理的なストレスを和らげ、睡眠の質(眠りの深さ)を高めるのに役立つ」「腸内環境の改善に役立つ」などである[9]

歴史的経緯

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以前は、ラクトバチルス・アシドフィルスLactobacillus acidophilus)と同じ扱いをされていたが、1980年に新たに分類され、ラクトバチルス・ガセリLactobacillus gasseri)として扱われるようになった。2018年にはラクトバチルス・ガセリから更にラクトバチルス・パラガッセリLactobacillus paragasseri)に分割することが提唱されている[6][7]

脚注

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  1. ^ Lauer, Eckhard; Kandler, Otto (1980). Lactobacillus gasseri sp. nov., a new species of the subgenus Thermobacterium. Zentralblatt für Bakteriologie: I. Abt. Originale C: Allgemeine, angewandte und ökologische Mikrobiologie (Elsevier) 1 (1): 75-78. doi:10.1016/S0172-5564(80)80019-4. https://doi.org/10.1016/S0172-5564(80)80019-4. 
  2. ^ Azcarate-Peril, M. A.; Altermann, E.; Goh, Y. J.; Tallon, R.; Sanozky-Dawes, R. B.; Pfeiler, E. A.; O'Flaherty, S.; Buck, B. L. et al. (2008). “Analysis of the Genome Sequence of Lactobacillus gasseri ATCC 33323 Reveals the Molecular Basis of an Autochthonous Intestinal Organism”. Applied and Environmental Microbiology 74 (15): 4610–4625. doi:10.1128/AEM.00054-08. ISSN 0099-2240. PMC 2519322. PMID 18539810. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2519322/. 
  3. ^ Nardis, C.; Mastromarino, P.; Mosca, L. (September 2013). “Vaginal microbiota and viral sexually transmitted diseases”. Annali di Igiene 25 (5): 443–56. doi:10.7416/ai.2013.1946. PMID 24048183. 
  4. ^ Check Hayden, Erika (11 September 2014). “Vaginal microbe yields novel antibiotic”. Nature. doi:10.1038/nature.2014.15900. 
  5. ^ Pandey N, Malik RK, Kaushik JK, Singroha G (2013). “Gassericin A: a circular bacteriocin produced by lactic acid bacteria Lactobacillus gasseri”. World Journal of Microbiology & Biotechnology 29 (11): 1977–87. doi:10.1007/s11274-013-1368-3. PMID 23712477. https://doi.org/10.1007/s11274-013-1368-3 2017年2月18日閲覧。. 
  6. ^ a b 有田正規, 遠藤明仁, 多田一風太 ほか、「データベースから発見されたガセリ菌のサブグループ In silico手法によるガセリ菌発見」『化学と生物』 2018年 56巻 7号 p.459-460, doi:10.1271/kagakutoseibutsu.56.459, 日本農芸化学会
  7. ^ a b Yasuhiro Tanizawa, Ipputa Tada, Hisami Kobayashi, Akihito Endo, Shintaro Maeno, Atsushi Toyoda, Masanori Arita, Yasukazu Nakamura, Mitsuo Sakamoto, Moriya Ohkuma, Masanori Tohno (2018). “Lactobacillus paragasseri sp. nov., a sister taxon of Lactobacillus gasseri, based on whole-genome sequence analyses”. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiolog 68 (11): 3512-3517. doi:10.1099/ijsem.0.003020. PMID 30226464. 
  8. ^ 山田成臣、「乳酸菌摂取が尿酸値へ及ぼす影響」『ミルクサイエンス』 2016年 65巻 3号 p.235-239, doi:10.11465/milk.65.235
  9. ^ 機能性表示食品データベース検索

関連項目

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参考文献

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