オタクに優しいギャル
オタクに優しいギャル(オタクにやさしいギャル)は、おたくに対して優しく接するギャルという萌え要素を指す言葉で、インターネット・ミーム[1]。
概要
[編集]漫画などでよく見られるジャンルとなっており、控えめまたは根暗な主人公に対して、優しいギャルの少女として描かれる[2]。主に高校生で、成績が悪く描かれる傾向がある[3]。「てかさー」という口癖を持ち、オタクのことを「オタクくん」と呼ぶのも典型的とされる[4]。一人称は「あーし」などがある[5]。
受け身が多い男性読者にとって、なんとなくイメージ共有される「積極的なギャル」がマッチしたこと、優等生と不良というドラマの作りやすさ、「想像上のギャル」という存在が創作上都合がよかったことから、こういった作品が急増していった[6]。
漫画評論家の新野安は2014年連載開始の『おしえて!ギャル子ちゃん』(鈴木健也)を発端とみており、「ギャルは世間一般の規範に縛られないイメージがあり、だからクラスカーストを壊してくれるんじゃないかという願望を抱きやすい」と分析[7]。「トリックスター的な存在が、厳然とした秩序をかき乱してくれる物語って、普遍的に求められてると思うんですよね」とこの傾向が増えた理由を解説した[7]。またオタクの抱く理想の家父長制的世界と、現実の装飾世界をつないでくれる存在であり、「そこをつないでくれる潤滑油みたいな存在のギャルというキャラクターはすごく便利」だったと分析している[6]。
アニメ評論家のてらまっとは「奥手な男性主人公がヒロインに逆攻略されている作品」を「ラブコメ・ヌーヴェルヴァーグ」と位置づけ、『からかい上手の高木さん』(山本崇一朗)『宇崎ちゃんは遊びたい!』(丈)『イジらないで、長瀞さん』(ナナシ)などもこの系譜にあると分析。根底には「男性性の困難」(男らしさというものへの抵抗)という時代ゆえに支持されたと論じている[6]。
またアダルト評論家の安田理央は「(ヒロインが積極的なほうが)都合がよい」とも捉えており、漫画、官能小説、アダルトビデオでも女性が攻める作品が増えており、これには女性が積極的なほうがすぐに濡れ場に持ち込めて展開がしやすいという作り手側の身もふたもない理由もあると記述している。
反応
[編集]前述のように現実のギャル(コギャル、ヤマンバブームなど含む)ムーブメントが去った後に起きたミーム現象であり、「オタクに優しいギャル」はSNS漫画を中心に近年インターネット上で頻繁に見られる言葉となった[8][9]。それが現実世界で実在するかどうかについて、伝説上の生物であるネッシーや龍なども引き合いに出して、ユーモアを交えて語られるトピックとなっている[10]。「誰もが憧れる存在でありながら、UMAであり、ファンタジーにすぎない」とも言われ[11][12]、川柳やBotの題材にもなっている[13][14]。
前述の安田理央は「ギャルという存在がファンタジーになったからこそ、勝手なイメージを盛りやすくなった」[7]、「(かつてのエロコンテンツで描かれていた)清楚な美少女的キャラクターが”そんな女いねーよー“と非難されることが多かったが、(草食性男子にとってのギャルが)ある種の異世界人と設定されているのが興味深い」。「実際、どこにもいない架空の存在であり、だからこそ描きやすい」と分析した[6]。
一方、コスプレイヤーの霜月めあのように、オタクに優しいギャルであることを自認している者もいたり[15]、メイクの褒め言葉として使用されることもある[16]。「オタクに優しいギャル」は、おたくのギャルに対するコンプレックスなどの屈折した思いが込められていると分析する者もいる[1]。
前述の新野は「ギャル物の作品が好きな人が、現実のギャルと付き合いたいと思っているかというと、そうではない」と創作物と現実とは乖離していることも指摘している。
作品
[編集]オタクに優しいギャルを扱った作品には『その着せ替え人形は恋をする』[2]、『オタクに優しいギャルに私はなる!』[17][18][19]、『オタクに優しいギャルはいない!?』[20]、『2.5次元の誘惑』が含まれる。
変化形として、「ギャルに優しいオタク」を題材にした作品もある[21]。
出典
[編集]- ^ a b “第二十八冊『オタクに優しいギャルはいない!?』~白黒つけるだけが 恋じゃない~”. ライテック (2023年7月4日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ a b “【今の“オタクに優しいギャル界”の最高到達点】『その着せ替え人形は恋をする』喜多川海夢が可愛すぎるのでその可愛さの秘密を自分なりに考えたらオタクの夢を見てしまった”. アニメイトタイムズ (2022年1月29日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “「オタクに優しいギャル」が流行る今こそ知りたい「全盛期のギャル・ギャル男」のリアルとその後”. 講談社 (2023年5月5日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “好みの人格&声のキャラクターを作って自由に会話できるAIサービス「AkumaAI」を使って「ガジェットに詳しくてオタクに優しいギャル」を作ってみた”. GIGAZINE (2023年5月15日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “コスプレイヤーつんこが「オタクに優しいギャル」風ショット披露”. livedoor ニュース (2021年9月15日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ a b c d 安田理央「エロのミカタ」Vol.93 集英社『週刊プレイボーイ』2024年11月11日号No.46 139頁
- ^ a b c 安田理央「エロのミカタ」Vol.92 集英社『週刊プレイボーイ』2024年11月14日号No.45 139頁
- ^ ““オタクに優しいギャル”は存在するのか? 皆さんから意見を聞いてみました”. イード (2023年5月5日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “【実験】非現実的な展開NGなオタク男子が、ギャルに優しくされたらおちるのか”. ガジェット通信 (2020年8月31日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “「オタクに優しいギャルは実在した!」元eggモデルギャルレスラーが7ヶ月ぶりの復帰戦でデスマッチ・アマゾネスを魅了!”. バトル・ニュース (2022年11月23日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “オタクにやさしいギャルは実在した!「にじさんじEN」虎姫コトカが大先輩に仕掛けたスウィートなドッキリ”. イード (2022年12月31日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “コミックゼノンで連載中の「オタクに優しいギャルはいない!?」 最新刊2巻9月20日発売!”. ガジェット通信 (2022年9月20日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “「オタク川柳大賞」最終20句発表 「秀逸」「わかりみがすごい」とネット民絶賛”. 産経デジタル (2021年2月23日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “ChatGPTの活用で“全肯定ギャル子”や“癒しの子猫”と話せるLINE botが登場”. エムディエヌコーポレーション (2023年4月21日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “ギャルでオタク、霜月めあ「私服も肌露出やカラフルなものが多いかも」”. 徳間書店 (2022年5月8日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “中川翔子「ガン黒ギャルになりました」 制服ルーズソックス&平成ギャルメイクに反響「似合ってる!」「オタクに優しいギャル」”. オリコン (2022年9月24日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “【漫画】元ぼっち「オタクに優しいギャル」デビュー? 7万人が「爆笑」”. メディア・ヴァーグ (2024年3月21日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “女子ともオタクとも仲良くなりたい!ツイ4読切「オタクに優しいギャルに私はなる!」”. ナタリー (2023年6月21日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “【漫画】オタクに優しいギャルになりたい…なぜか空回りしてしまう女子高生の話に「優しい世界」「ほっこりした」の声”. ザテレビジョン (2024年3月30日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “漫画『この世界の片隅に』全巻41%ポイント還元 Kindleセールおすすめ8選”. KAI-YOU (2024年2月26日). 2024年4月6日閲覧。
- ^ “【コラム】コミカライズも連載中!4月28日発売「ギャルに優しいオタク君」をご紹介!”. アキバBlog (2023年4月9日). 2024年4月6日閲覧。