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力学において、オイラーのコマ(オイラーのこま、英: Euler Top)とは、剛体の回転運動(コマの運動)の一種。重力などの外力が全く作用しない自由な運動に相当する。オイラー方程式が可積分となる例の一つとして、知られる。
無重力状態で放られた剛体の回転運動や、重心で支えられた剛体の自由回転運動
など、外力が働かない剛体の運動をオイラーのコマと呼ぶ。
外力が作用しない場合、剛体の運動を記述するオイラー方程式は、
で与えられる。
但し、座標原点は剛体の固定点もしくは、剛体の重心位置とし、各座標は慣性主軸方向に一致させるものとする。
ここで、定数I1、I2、I3 は主慣性モーメントである。
オイラーのコマでは、運動エネルギーE と全角運動量の大きさL2が系の保存量となる。
運動エネルギーE と全角運動量の大きさL2を指定することで定まる等エネルギー面と等角運動量面は、(ω1, ω2, ω3)空間における2つの楕円面を成しており、運動の軌道はそれらの交わりによって定められる曲線となる。
オイラーのコマは可積分な系の一つであり、その解は楕円関数で記述できる[1]。
- I1<I2<I3の場合
慣性モーメントにI1<I2<I3 の関係が成り立つとき、運動の解はヤコビの楕円関数を用いて、
と表される。ここで、λは
で与えられる定数であり、時間tはt=0でω2=0となるように取り直している。
これらは次の周期T を持つ周期運動である。
但し、K=K(k)は第一種完全楕円積分である。
- I1=I2<I3の場合
慣性モーメントにI1=I2<I3 の関係が成り立つとき、運動の解は
となる。
- ^ L.D. Landau and E.M. Lifshitz (1969), chapter.VI