エンディングノート
エンディングノートとは、高齢者が、自身の人生の終末期に迎える死や認知症に備えて、自身の希望を書き留めておくノート[1]。終活ノート[2]、遺言ノートとも。
概要
[編集]自身が死亡したときや、判断力・意思疎通能力の喪失を伴う病気[3]にかかったときに希望する内容を記す。特に後者の内容を、事前指示(英: Advanced directive)と呼ぶ場合がある[4]。
書籍や文具の形でエンディングノートが頒布されている。終活するに当たって、1番最初に記入するものとされる[5]。
また、法務省(司法書士連合会)や自治体、NPO法人などが、エンディングノートを無料配布し、関連講座を開いている例もある[6]。
内容
[編集]書かれる事柄は特に決まっておらず、各エンディングノートによって様々だが、『豊かな死を受け入れるために -遺された方への解説書-』(東京博善監修、全日本葬祭業協同組合連合会協力)では、主に
- 氏名・住所・生年月日・電話番号などの個人情報
- 年金や健康保険、運転免許、マイナンバーなどの番号や居室内でのありか
- 電気・ガス・水道、ネット、SNSなどの契約番号やアカウント、パスワード
- 銀行口座・株式・不動産・保有車・生命保険など
- クレジットカードについて
- 葬式について、事前契約・希望葬儀社や菩提寺、呼ぶ人リストなど
- 遺言書の預け先、公証人など
- 自身が病気や介護が必要になった際に希望すること
- ペットについて
などを挙げている。
基本的に「家族のために書き残す」「遺された方への解説書」と、各ノートのサブタイトルが示すように、自身の遺産の処分や契約解除・引き継ぎ、葬儀埋葬等を行う遺族や成年後見人等に向けて書く物である。
注意点
[編集]法的効力を有する性格の文書である遺言とは異なり、法的効力はなく、生前に交わした第三者との契約内容を無視、一方的に破棄できるものでないことに留意する[7]。
その他
[編集]日本で一番古くに刊行されたエンディングノートは、井上治代の『遺言ノート』(ベストセラーズ、1996年)である[8]。
2011年にはエンディングノートを題材とした「エンディングノート (映画)」(砂田麻美監督)が公開。日本製ドキュメンタリー映画としては「ゆきゆきて神軍」(1987年)以来、初めて興行収入1億円を突破。翌2012年には本映画をモチーフにしたテレビドラマ『家族、貸します 〜ファミリー・コンプレックス〜』が、日本テレビ系列で放映された。
参考文献
[編集]- 『- 家族のために書き残す - 自分を記録するエンディングノート -人生の引き継ぎ帳-』(高橋憲一郎編著、CISC出版、2004年)
- 『終活ハンドブック』(本田桂子監修、PHP研究所、2011年)
- 『豊かな死を受け入れるために -遺された方への解説書-』(東京博善監修、全日本葬祭業協同組合連合会協力、廣済堂、2020年)
脚注
[編集]- ^ エンディングノートの意味とは - Yahoo!辞書[リンク切れ]
- ^ ソニー生命>「終活ノート(エンディングノート)とは?作り方・書き方のポイントを解説!」
- ^ 認知症などが想定される。
- ^ 山本悠司:終末期患者の意思を尊重する方法―米国の活動の日本への移行可能性について―.医療・生命と倫理・社会 12: 13-27, 2015(大阪大学大学院医学系研究科 医の倫理と公共政策学)
- ^ 本田桂子監修『終活ハンドブック』(PHP研究所、2011年)
- ^ 堺市南区>地域福祉課>南保健福祉総合センター>「エンディングノート」の配布を行っております
- ^ 東京弁護士会>「エンディングノートで出来ること、出来ないこと ─エンディングノートの法的効力─」
- ^ 木村由香、安藤孝敏「マス・メディアにおける終活のとらえ方と その変遷 -テキストマイニングによる新聞記事による内容分析-」(横浜国立大学、2018年)[1]
関連項目
[編集]- リビング・ウィル(事前指示書・生命維持治療に関する医師の指示書)
- 遺言 / 遺書
- 終活