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エウリュバテス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エウリュバテス
3548 Eurybates[1][2][3]
2019年から2020年にかけてハッブル宇宙望遠鏡によって撮像されたエウリュバテスとその衛星ケータ。
2019年から2020年にかけてハッブル宇宙望遠鏡によって撮像されたエウリュバテスとその衛星ケータ。
仮符号・別名 1973 SO[1][2]
分類 小惑星[1][2]
軌道の種類 木星のトロヤ群[1][2]
エウリュバテス族
発見
発見日 1973年9月19日[1][2]
発見者 C. J. van Houten
I. van Houten-G
Tom Gehrels[2]
発見場所 パロマー山天文台[1][2]
軌道要素と性質
元期:2021年7月1日 (JD 2,459,396.5)[1]
軌道長半径 (a) 5.200137121405401 au[1]
近日点距離 (q) 4.732647299252124 au[1]
遠日点距離 (Q) 5.667626943558679 au[1]
離心率 (e) 0.08989951827018978 [1]
公転周期 (P) 4331.32348553578 日
11.86 [1]
軌道傾斜角 (i) 8.056507731656978 [1]
近日点引数 (ω) 27.15970831468039 度[1]
昇交点黄経 (Ω) 43.5496641391539 度[1]
平均近点角 (M) 337.6150445397238 度[1]
ティスラン・パラメータ (T jup) 2.972 [1]
物理的性質
直径 63.885±0.299 キロメートル[1]
自転周期 8.711 時間[1]
スペクトル分類 C[4]
絶対等級 (H) 9.84 [1]
アルベド(反射能) 0.052±0.007[1]
Template (ノート 解説) ■Project

エウリュバテス[5][6] (3548 Eurybates) は、木星のトロヤ群小惑星の1つ[1][2]で、「ギリシャ群」と呼ばれるラグランジュ点4 (L4) に位置する炭素質小惑星小惑星族の1つであるエウリュバテス族 (: Eurybates family) を代表する天体で、直径約64 キロメートル[1]と見られている。アメリカ航空宇宙局 (NASA) のトロヤ群小惑星探査機ルーシー (Lucy) の目標天体の1つとなっており、計画では2027年8月12日に近接観測される予定。ケータ (Queta) という名前の衛星を持つ[1]

発見

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1973年9月19日、ライデンのオランダ人天文学者コルネーリス・ファン・ハウテンイングリット・ファン・ハウテン=フルーネフェルトの夫妻が、アメリカ カリフォルニア州パロマー山天文台トム・ゲーレルスが撮影した写真乾板から発見した[1][2]。過去の観測記録では、アメリカ インディアナ州ブルックリンのゲーテ・リンク天文台で1954年2月9日に撮影されたものが最も古い[2]

軌道と分類

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エウリュバテスは、木星とほぼ同じ軌道上で木星の約60°前方にあるラグランジュ点4 (L4) を、木星と1:1の軌道共鳴関係を保ちながら公転している[1][2]。約11年10ヶ月(4,331日)の公転周期で、太陽から4.7 - 5.2 天文単位 (au) の距離を公転する軌道を持つ[1][2]

エウリュバテス族

エウリュバテスは、小惑星の族の1つ「エウリュバテス族」の代表天体である[7]。エウリュバテス族には、200以上の炭素質または始原的な小惑星が分類されている[8]。日本の体操競技選手であった加藤澤男にちなんで命名されたカトウサワオ (43212 Katosawao) もエウリュバテス族の小惑星である[9]

物理的特徴

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エウリュバテスは、炭素質小惑星のC型小惑星に分類されている[4]。1992年の測光観測で得られた光度曲線から、8.711時間という自転周期が得られている[4]。赤外線天文衛星IRAS、日本の赤外線天文衛星あかり、NASAの広視野赤外線探査機WISEの拡張ミッションNEOWISEによる観測結果から、直径は63.89 - 72.14 km、表面のアルベドは0.052 - 0.060 とされている[10][11][12]

名称

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ギリシャ神話に登場する古代の英雄で、トロイ戦争の際ギリシャ軍の伝令使を務めたエウリュバテース[5] (Eurybates) にちなんで命名された[3]

衛星

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エウリュバテスには、衛星が1つ発見されており、ケータ (Queta) と命名されている[13]。この衛星は、2018年9月12日と14日にハッブル宇宙望遠鏡で撮影された画像の中から、Keith S. Nollらによって発見が報告され、S/2018 (3548) 1という仮符号が付けられた[14][15]。その後の追加観測によって2020年1月3日に衛星の存在が確認され、2020年1月9日に小惑星電子回報 (Minor Planet Electronic Circular, MPEC) で発見が公表された[15]

2020年10月15日、国際天文学連合の絶対等級が12等より暗い木星のトロヤ群の命名規約に基づいて、メキシコの陸上選手エンリケータ・バシリオの愛称にちなんで「Queta」という名称が与えられた[13]。エンリケータ・バシリオは、1968年10月12日にメキシコシティで開催されたオリンピックの開会式で女性として初めて聖火台聖火を灯した。後にメキシコオリンピック委員会の常任理事に就任した。女性として最初に聖火リレーの最終走者を務めたことが、エウリュバテスのような伝令使の役割を想起させることが理由となった[13]

ケータの見かけの等級はわずかに26.77等と、エウリュバテスの6,000倍以上暗いことから、サイズは非常に小さく、直径1km以下である可能性が高いとされる[16]。エウリュバテスと同じアルベドと仮定すると、その直径は0.8±0.2kmとなる[17]。エウリュバテスに対する公転周期は82.6±0.4日、軌道長半径は2,310±100 km、軌道離心率は0.05±0.05と真円に近い楕円軌道を取っている[13]。ケータは、おそらくエウリュバテスの破片であると考えられている。この衛星の存在は、ルーシーのミッションに悪影響を与えるものではなく、むしろ2027年8月のフライバイの際に探査機が調査すべき新たな天体が加わったものと捉えられている[16][18]

探査計画

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2021年10月16日打ち上げ予定のNASAのトロヤ群小惑星探査機ルーシーが近接観測する計画となっている。フライバイは2027年8月12日の予定で、エウリュバテスから1,000 kmの距離を秒速5.8 kmの速度で通過する計画である[19]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 3548 Eurybates (1973 SO)”. JPL Small-Body Database Browser. JPL. 2021年10月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l (3548) Eurybates = 1954 CB = 1957 JX = 1973 SO = 1978 EE5 = 1985 TZ”. 小惑星センター. IAU. 2021年10月7日閲覧。
  3. ^ a b “(3548) Eurybates”. Dictionary of Minor Planet Names. Berlin, Heidelberg: Springer Berlin Heidelberg. (2007). p. 283. doi:10.1007/978-3-540-29925-7_3547 
  4. ^ a b c LCDB Data for (3548) Eurybates”. Asteroid Lightcurve Database (LCDB). 13 April 2017閲覧。
  5. ^ a b 呉茂一イリアス(上)』グーテンベルク21、1997年、17頁https://books.google.co.jp/books?id=ZN029z-0xjkC 
  6. ^ Greshko, Michael (2021年10月20日). 北村京子: “探査機ルーシーが木星トロヤ群へと旅立つ、何がわかる?”. ナショナルジオグラフィック日本版サイト. 2021年10月23日閲覧。
  7. ^ Asteroid (3548) Eurybates - Proper elements”. AstDyS-2, Asteroids - Dynamic Site. 2021年10月12日閲覧。
  8. ^ Nesvorný, D.; Broz, M.; Carruba, V. (December 2014). Identification and Dynamical Properties of Asteroid Families. 297–321. arXiv:1502.01628. Bibcode2015aste.book..297N. doi:10.2458/azu_uapress_9780816532131-ch016. ISBN 9780816532131 
  9. ^ (43212) 2000AL113 - Proper elements”. AstDyS-2, Asteroids - Dynamic Site. 2021年10月12日閲覧。
  10. ^ Tedesco, E. F.; Noah, P. V.; Noah, M.; Price, S. D. (October 2004). “IRAS Minor Planet Survey V6.0”. NASA Planetary Data System - IRAS-A-FPA-3-RDR-IMPS-V6.0: IRAS-A-FPA-3-RDR-IMPS-V6.0. Bibcode2004PDSS...12.....T. https://sbnarchive.psi.edu/pds3/iras/IRAS_A_FPA_3_RDR_IMPS_V6_0/data/diamalb.tab. 
  11. ^ Usui, Fumihiko; Kuroda, Daisuke; Müller, Thomas G.; Hasegawa, Sunao; Ishiguro, Masateru; Ootsubo, Takafumi et al. (October 2011). “Asteroid Catalog Using Akari: AKARI/IRC Mid-Infrared Asteroid Survey”. Publications of the Astronomical Society of Japan 63 (5): 1117-1138. Bibcode2011PASJ...63.1117U. doi:10.1093/pasj/63.5.1117.  (online, 臼井文彦「Mid-Infrared Asteroid Survey with AKARI / 「あかり」衛星による小惑星の中間赤外線サーベイ」東京大学 博士論文乙第17829号、2013年、NAID 500000941211 
  12. ^ Grav, T.; Mainzer, A. K.; Bauer, J. M.; Masiero, J. R.; Nugent, C. R. (November 2012). “WISE/NEOWISE Observations of the Jovian Trojan Population: Taxonomy”. The Astrophysical Journal 759 (1): 10. arXiv:1209.1549. Bibcode2012ApJ...759...49G. doi:10.1088/0004-637X/759/1/49.  (online catalog)
  13. ^ a b c d MPEC 2020-T164 : (3548) Eurybates I = Queta”. Minor Planet Electronic Circular. Minor Planet Center (2020年10月15日). 2021年10月12日閲覧。
  14. ^ Noll, Keith S. (2018), HST Proposal 15622, Space Telescope Science Institute, https://archive.stsci.edu/proposal_search.php?id=16056&mission=hst 2021年10月12日閲覧。 
  15. ^ a b MPEC 2020-A113 : S/2018 (3548) 1”. Minor Planet Electronic Circular. Minor Planet Center (10 January 2020). 10 January 2020閲覧。
  16. ^ a b Talbert, Tricia (2020年1月9日). “NASA's Lucy Mission Confirms Discovery of Eurybates Satellite”. NASA. 2021年10月12日閲覧。
  17. ^ Noll, K. S.; Brown, M. E.; Weaver, H. A.; Grundy, W. M.; Porter, S. B.; Buie, M. W.; Levison, H. F.; Olkin, C. et al. (2020-09-04). “Detection of a Satellite of the Trojan Asteroid (3548) Eurybates-A Lucy Mission Target”. The Planetary Science Journal (American Astronomical Society) 1 (2): 44. doi:10.3847/psj/abac54. ISSN 2632-3338. 
  18. ^ SwRI-led Lucy mission now has a new destination”. Southwest Research Institute (2020年1月9日). 2021年10月12日閲覧。
  19. ^ Levison, H. F.; Olkin, C.; Noll, K. S.; Marchi, S.; Lucy Team (March 2017). “Lucy: Surveying the Diversity of the Trojan Asteroids: The Fossils of Planet Formation”. 48th Lunar and Planetary Science Conference (1964): 2025. Bibcode2017LPI....48.2025L. https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2017/pdf/2025.pdf. 

外部リンク

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