アンドレ・S・ラバルト
André S. Labarthe アンドレ・S・ラバルト | |
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2008年撮影 | |
本名 |
アンドレ=シルヴァン・ラバルト (André-Sylvain Labarthe) |
生年月日 | 1931年12月18日 |
没年月日 | 2018年3月5日(86歳没) |
出生地 | フランス共和国、ピレネー=アトランティック県オロロン=サント=マリー |
死没地 | フランス共和国、パリ |
職業 | 批評家、映画プロデューサー、映画監督、脚本家、俳優 |
活動期間 | 1950年代 - |
主な作品 | |
『われらの時代のシネアストたち』 |
アンドレ・S・ラバルト(André S. Labarthe, 本名:アンドレ・シルヴァン・ラバルト (André-Sylvain Labarthe)、1931年12月18日 オロロン=サント=マリー - 2018年3月5日)は、フランスの批評家、映画プロデューサー、映画監督、脚本家、俳優である。伝説的テレビドキュメンタリー『われらの時代のシネアストたち』のプロデューサー、監督として知られる。
来歴・人物
[編集]1931年12月18日、フランス・ピレネー=アトランティック県オロロン=サント=マリーで生まれる。
1950年代に映画批評家としてのキャリアを開始した。上映会でアンドレ・バザンと出逢い、1951年にバザンが共同設立した雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の編集に参加するよう頼んだ。自らの語るところによると、自分は、すでに同誌の一部となっていたジャック・リヴェットあるいはフランソワ・トリュフォーのようには、映画的な知識も第七芸術に対する溢れる情熱も持っていはいなかった。彼の批評的な視線はただ、彼を仲間入れることをアンドレ・バザンに決意させた。
ラバルト固有のヴィジョンは、『カイエ』誌の批評的位置づけに効果的に多大な貢献をしていく。共同編集・執筆者たちと同様に、ジャン・ルノワール、ハワード・ホークス、ジョン・フォードといった一定の映画作家たちに対する同様の賞賛を共有した。また、立ち現れる映画にもたいへんな注意を向け、ヌーヴェルヴァーグ、そしてジョン・カサヴェテス、シャーリー・クラークといったアメリカの新しい独立系映画作家たちのプロモーションに参加した。この件についての彼の準備は、同僚のいくつかの意見にときおり反対して、イタリアの若い映画を擁護するためにそれをもってくることもあった。
1964年、『われらの時代のシネアストたち Cinéastes de notre temps』シリーズを開始する。同シリーズは、ジャニーヌ・バザンとの共同プロデュースであり、ラバルト自身もいくつかの作品を演出した。40年以上にもわたってつづいた同シリーズは、有名なシネアストたちについての52分間の肖像を構成した。第1作はルイス・ブニュエルに捧げられ、ラバルトはブニュエルに密着し、批評の範囲内で再認識させることに多大な貢献をした。同シリーズはテレビを通じて放映され、『カイエ』誌の批評的ヴィジョンと、映画史の彼のレクチャーはさらに定着した。
ラバルトのドキュメンタリーの足どりは反スペクタクル的である。スクープを探したりせず、演出は純化し、簡単な解説さえ不在であった。ドキュメンタリーシリーズ『われらの時代のシネアストたち』は、演出家の世界を転写し、インタヴュアの存在を忘れさせるように誘う。1980年代に同シリーズは中断する。アルテに局を移り、1990年代の初めに、『映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps』の名のもとに再スタートする。このタイトルの変更は、シリーズの連続性と新しい時代の誕生、現在ののみならずときの間にすでに亡くなっている映画に撮られた複数の映画作家たちにおける、この断裂に注意をする作家の意志に結びついている。
同シリーズの休止の期間、ラバルトが非活動的なままいたわけではない。『Cinéma, cinémas』と『Égale cinéma』という放送を共同作業をした。そこでは彼の好きなシネアストたちについての違った主題を演出した。コレオグラファーのウィリアム・フォーサイスについてのドキュメンタリー『William Forsythe au travail』も演出し、そこでは『われらの時代のシネアストたち』とおなじ原則を採用した。
ラバルトは、すべての以前にひとりの映画批評家でありつづけた。記事のなかにあってもカメラの後ろにあっても彼は職業をつらぬいた。それはつねに、分析の精神であり、パースペクティヴの設定である。
ジャン=リュック・ゴダールの盟友である。ゴダールの長篇デビュー作『勝手にしやがれ』や『女と男のいる舗道』など初期作品、最近でも『新ドイツ零年』や『JLG/自画像』に出演しているほか、ジャン=ピエール・リモザンなど若手監督の映画、無名監督の短篇に主演するなど、映画の出演歴が華々しく、すでに「批評家の余芸」の域は超えている。
2018年3月5日、パリにて死去。86歳没[1]。
引用
[編集]効果をかなり修正しながら、対話装置の範囲でカメラを導入すること。紙への転写を除去したすべてのもの。沈黙、視線、笑い、身振り、声の抑揚。句読点をつけたり観念の表現に色づけするすべてのもの、そして、ときおり同様に、汚染されたもの、そのすべて。カメラが最初の計画へ戻り、材料を構成することで終わる。そこで演出家は、利益を取らなければならない。アルトーが言うように、演出家が、登録された単純な器官でありつづけることに満足したくないのならば。装置は、運を捉えたりこの些細な細部を固定するためのより秩序だてる機械ではない。この細部は、とるに足らないか、奇妙であるか、逸話的であるか、たんに愚かであることに気づくことができるだろうが、しかしそれはできあがろうとする映画同様、一連の布なのである。根底において、敵はなんなのかといえば、意図するということなのだ。私にとっては、演出(mise en scène)とは、意図の軌跡をすべて転倒させることを許すことなのだ。私が同意する、偶然、運、実験といった概念の価値を比べてみてください。これらは、途方もなく私の興味を引くもので、映画のもつ自然へと反射を起こすもののなかにあるのだ。
— アンドレ・ラバルト、『Entretien avec André S. Labarthe』、パリ、2005年1月29日[2]
フィルモグラフィ
[編集]監督
[編集]1960年代 - 1970年代
[編集]- Roger Leenhardt ou Le dernier humaniste - われらの時代のシネアストたち Cinéastes de notre temps テレビ映画 1965年 ※ロジェ・レーナルト
- Marcel Pagnol ou le cinéma tel qu'on le parle - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1966年 ※マルセル・パニョル
- Raoul Walsh ou le bon vieux temps - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1966年 共同監督ユベール・ナップ ※ラオール・ウォルシュ
- Entre chien et loup, John Ford - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1966年 共同監督ユベール・ナップ ※ジョン・フォード
- Samuel Fuller Independant Filmmaker - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1967年 ※サミュエル・フラー
- D'un silence l'autre, Josef von Sternberg - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1967年 ※ジョセフ・フォン・スタンバーグ
- 恐竜と赤ん坊 Le Dinosaure et le bébe, dialogue en huit parties entre Fritz Lang et Jean-Luc Godard - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1967年 ※フリッツ・ラング、ジャン=リュック・ゴダール
- Pierre Perrault, l'action parlée - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1968年 共同監督ジャン=ルイ・コモリ ※ピエール・ペロー
- Les Deux marseillaises ドキュメンタリー 1968年
- Jerry Lewis(第一部) - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1968年 ※ジェリー・ルイス
- Festival de Tours - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1968年
- Conversation avec George Cukor - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1969年 共同監督ユベール・ナップ ※ジョージ・キューカー
- John Cassavetes - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1969年 共同監督ユベール・ナップ ※ジョン・カサヴェテス
- Alain Robbe-Grillet, 1ere partie : la désignation - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1969年 共同監督ノエル・バーチ ※アラン・ロブ=グリエ
- Alain Robbe-Grillet, 2e partie : les formes d’Éros - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1969年 共同監督ノエル・バーチ
- King Vidor - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1969年 共同監督ユベール・ナップ ※キング・ヴィダー
- Rome brûle, portrait de Shirley Clarke - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1970年 共同監督ノエル・バーチ ※シャーリー・クラーク
- Busby Berkeley - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1971年 共同監督ユベール・ナップ ※バスビー・バークレー
- Jean-Pierre Melville: portrait en neuf poses - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1971年 ※ジャン=ピエール・メルヴィル
- Jerry Lewis(第二部) - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1971年
- Claude Autant-Lara, l'oreille du diable - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1972年 ※クロード・オータン=ララ
- Norman Mac Laren - われらの時代のシネアストたち テレビ映画 1972年 ※ノーマン・マクラレン
1980年代 -
[編集]- Cinéma cinémas テレビシリーズ 1982年
- Sylvie Guillem au travail ドキュメンタリー(52分) 1988年 ※シルヴィ・ギエム
- William Forsythe au travail テレビドキュメンタリー 1989年 ※ウィリアム・フォーサイス
- Nanni Moretti - 映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps テレビ映画 1990年 ※ナンニ・モレッティ
- The Scorsese Machine - 映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps テレビ映画 1990年 ※マーティン・スコセッシ
- Claude Chabrol, l'entomologiste - 映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps テレビ映画 1991年 ※クロード・シャブロル
- Eric Rohmer, preuves à l'appui(第一部・第二部) - 映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps テレビ映画 1994年 共同監督ジャン・ドゥーシェ ※エリック・ロメール
- Georges Franju, le visionnaire - 映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps テレビ映画 1996年 ※ジョルジュ・フランジュ
- David Cronenberg: I Have to Make the Word Be Flesh - 映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps テレビ映画 1999年 ※デイヴィッド・クローネンバーグ
- Hitchcok et Ford, le loup et l'agneau - 映画、われらの時代の Cinéma, de notre temps テレビ映画 2000年 ※アルフレッド・ヒッチコック、ジョン・フォード
- Artaud cité - Atrocités - Collection un siècle d'écrivains (47分) 2001年
- Maigret Simenon, le discours de la méthode テレビ映画 2003年 ※ジョルジュ・シムノン
脚本
[編集]出演
[編集]- La Vie commence demain 1949年 監督ニコル・ヴェドレス、出演ジャン=ピエール・オーモン、アンドレ・ジッド、ダニエル・ラガッシュ、パブロ・ピカソ、ジャン・ロスタン、ジャン=ポール・サルトル
- 勝手にしやがれ À bout de souffle 1960年 監督ジャン=リュック・ゴダール
- 女と男のいる舗道 Vivre sa vie: Film en douze tableaux 1962年 監督ジャン=リュック・ゴダール
- ロゴパグ Ro.Go.Pa.G. オムニバス 1963年
新世界 Il Nuovo mondo 声の出演 監督ジャン=リュック・ゴダール - Noviciat 1964年 監督ノエル・バーチ
- われらの時代のシネアストたち Cinéastes de notre temps
Jean Renoir le patron, 3e partie: La règle et l'exception 監督ジャック・リヴェット - 狂気の愛 L'Amour fou 1969年 監督ジャック・リヴェット
- Grand écran テレビシリーズ
Jerry Lewis 1974年 監督・脚本シャルル・L・ビッチ、出演ジェリー・ルイス - Peut-être en automne テレビ映画 1976年 監督ジャネット・ユベール
- Brigade des mineurs テレビシリーズ
Le mal du pays 1978年 監督ジャン・シャポ - Va voir maman, papa travaille 1978年 監督フランソワ・ルテリエ
- La Passion テレビ映画 1978年
- La Déchirure テレビ映画 1982年
- L'Île bleue テレビ映画 1983年 監督ジャン=クロード・ギディセリ
- Cinématon 1984年 監督ジェラール・クーラン
- Série noire テレビシリーズ
Adieu la vie 1986年 監督モーリス・ドゥゴーソン、出演ジャン=クロード・ドーファン、ファブリス・ルキーニ - Les Quarante ans des cahiers du cinéma テレビ映画 1991年 出演クロード・ド・ジヴレー、アントワーヌ・ド・ベック、ジャン・エルマン、ベルナデット・ラフォン、ジャン=クロード・ブリアリ
- 新ドイツ零年 Allemagne 90 neuf zéro 1991年 監督ジャン=リュック・ゴダール、出演エディ・コンスタンティーヌ、ハンス・ツィシュラー
- Salut les coquins テレビ映画 1991年 監督マルセル・ズムール、出演マクシム・ルルー、ジャン=ピエール・カッセル
- 子どもたちはロシア風に遊ぶ Les Enfants jouent à la Russie 1993年 監督・脚本・編集・出演ジャン=リュック・ゴダール、プロデューサールート・ヴァルトブルゲール、撮影・製作主任・助監督カロリーヌ・シャンプティエ、出演ラズロ・サボ、ベルナール・エイゼンシッツ
- JLG/自画像 JLG/JLG - autoportrait de décembre 1995年 監督・脚本・編集・主演ジャン=リュック・ゴダール、出演ジュヌヴィエーヴ・パスキエ、ルイ・セガン、ベルナール・エイゼンシッツ
- Le Mariage de Fanny 短篇 1999年 監督オリヴィエ・L・ブリュネ、声の出演ドミニク・ブラン
- Léaud l'unique テレビ映画 2001年 監督・脚本・出演セルジュ・ル・ペロン、出演ジャン=ピエール・レオ、ラズロ・サボ、オリヴィエ・アサヤス、ベルナルド・ベルトルッチ、ラウール・クタール、ジャン=リュック・ゴダール、イレーヌ・ジャコブ、アキ・カウリスマキ、アニエス・ヴァルダ
- NOVO / ノボ Novo 2002年 監督ジャン=ピエール・リモザン、脚本クリストフ・オノレ、出演エドゥアルド・ノリエガ、アナ・ムグラリス、ナタリー・リシャール
- アンリ・ラングロワ ファントム・オブ・シネマテーク Le Fantôme d'Henri Langlois ドキュメンタリー 2004年 監督ジャック・リシャール
- Bottom 短篇 2006年 監督ジョヴァンニ・スポルティエロ
- さすらいの女神たち Tournée 2010年 監督・脚本・主演マチュー・アマルリック
関連事項
[編集]脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “HOMMAGE À ANDRÉ S. LABARTHE” (フランス語). Cinematheque. (2018年3月6日) 2018年3月6日閲覧。
- ^ 『Entretien avec André S. Labarthe』、監督Luc Lagier、パリ、2005年1月29日。
外部リンク
[編集]- André S. Labarthe, cinéaste & critique - インタビュー
- Les deux Lumières : splendeurs et misères du cinéma - インタビュー
- L'homme de demain, hier et aujourd'hui - 『ユマニテ l'Humanité』紙上のインタビュー
- アンドレ・S・ラバルト - IMDb