コンテンツにスキップ

アルン・ショウリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アルン・ショウリー
RMA
Arun Shourie
アルン・ショウリー(2009年)
インドの旗 インド 通信情報技術大臣英語版[1]
任期
2003年1月29日 – 2004年5月22日
首相アタル・ビハーリー・ヴァージペーイー
前任者ピラモド・マハジャン英語版
後任者ダヤニディ・マラン英語版
インドの旗 インド ラージヤ・サバー(上院)議員
任期
1998年 – 2004年
任期
2004年 – 2010年
個人情報
生誕 (1941-11-02) 1941年11月2日(83歳)
イギリス領インド帝国の旗 イギリス領インド帝国 パンジャーブ州英語版ジャランダル(現 インドの旗 インド パンジャーブ州
国籍インドの旗 インド
政党インド人民党
配偶者Anita Shourie
親戚H・D・ショウリー英語版(父)
ナリーニ・シン英語版(妹)
子供1人
住居ニューデリー
出身校デリー大学(BA)
シラキュース大学 (PhD)
専業ジャーナリスト
世界銀行エコノミスト
政治家
受賞パドマ・ブーシャン勲章(1990年)
マグサイサイ賞(1982年)
公式サイトArun Shourie Blog

アルン・ショウリー(Arun Shourie、1941年11月2日 - )は、インド経済学者、ジャーナリスト作家政治家である[2]世界銀行エコノミスト、インド計画委員会英語版コンサルタント、『インディアン・エクスプレス英語版』紙・『ザ・タイムズ・オブ・インディア』紙の編集長、第2次ヴァージペーイー内閣の通信情報技術大臣英語版などを歴任した。1982年にマグサイサイ賞を受賞し、1990年にパドマ・ブーシャン勲章を受章した[3]

1990年代から2000年代初頭にかけてはヒンドゥー・ナショナリズムの主要な知識人の一人として認識され、著書の中でのイスラム教キリスト教に関する発言が物議を醸したり、左翼思想家を攻撃するなどしていたが、現在は宗教全般に懐疑的であると同時に、「最も理性に近い」として仏教に親近感を抱いている[4][5]。この懐疑主義は、障害のある息子を育て、病気の妻の面倒を見てきた経験から生まれたものである。2011年の著書"Does He Know a Mother's Heart: How Suffering Refutes Religion"(彼は母の心を知っているのか: 苦しみが宗教を否定する)では、「人生と、人生によってもたらされるものに対処するためには、仏陀の姿勢が最も役に立つ」と提言している[6]

若年期

[編集]

ショウリーは1941年11月2日イギリス領インド帝国パンジャーブ州英語版ジャランダルで生まれた[7]。妹はジャーナリストのナリーニ・シン英語版である[8]

デリー大学セント・スティーブンズ・カレッジ英語版で経済学の学士号を取得した[8]。1966年、シラキュース大学マックスウェル行政大学院で経済学のPh.D.を取得した[9][10][11]

私生活

[編集]

アニータと結婚し、息子が1人いる[12]。 ショウリーは自分の人生を振り返り、「私が書いたものは、裁判に勝つことを目的とした弁護人の事件日記のようなものだ」と語り、ジャーナリズムに対する意見も述べている[13]

キャリア

[編集]

経済学者

[編集]

シラキュース大学で経済学のPh.D.を取得した後、1967年に世界銀行にエコノミストとして入行し、10年以上勤務した。1972年から1974年にかけてはインド計画委員会英語版のコンサルタントを兼務し、この頃からジャーナリストとしてインドの経済政策を批判する記事を書くようになった[7]

ジャーナリスト

[編集]

1975年、インディラ・ガンジー首相が発令した非常事態宣言英語版の施行中、ショウリーはこれを市民の自由を脅かすものとして反対し、『インディアン・エクスプレス英語版』紙への寄稿を始めた。この新聞を保有するラムナス・ゴエンカ英語版には、政府の検閲の目が向けられた[7]。1976年、インド社会科学研究評議会英語版のフェローに選出された[14]。1979年1月、ゴエンカはショウリーを『インディアン・エクスプレス』紙の編集長に任命し、ショウリーに紙面を好きなようにしても良いと言った[7]。ショウリーは、報道の自由を求めるキャンペーンを展開し、政府の汚職を暴き、市民の自由を守るために同紙を活用し、知的で大胆不敵なライター兼編集者として評判を集めた。マーサ・ヌスバウムの言葉を借りれば「彼の真実への献身は、あらゆる政治領域で称賛を得た」のである[15]

ショウリーは「ベテラン・ジャーナリスト」と呼ばれた[16][17]。1982年、「腐敗、不平等、不正の効果的な敵対者としてペンを使う憂慮すべき市民」としてマグサイサイ賞の報道・文学・創造的情報伝達部門を受賞した[14]。2000年、国際新聞編集者協会世界報道の自由のヒーロー英語版の一人に選ばれた。また、国際エディター・オブ・ザ・イヤー賞英語版や出版の自由賞を受賞している[7]

政治家

[編集]

ショウリーはインド人民党(BJP)代表としてラージヤ・サバー(上院)のウッタル・プラデーシュ州選出議員候補に指名され、1998年から2004年まで、2004年から2010年までの2期連続で国会議員を務めた。

第2次ヴァージペーイー内閣では投資・通信・情報技術大臣英語版として入閣し[18]マルチスズキへの売却、VSNL英語版タタ・グループへの売却、ヒンドゥスタン・ジンク英語版の売却などを指揮した[19]

ショウリーは、ラジーヴ・ガンディー政権が、共産主義的暴力を緩和し、ムスリムの票を維持するために提案した1986年の「ムスリム女性(離婚に関する権利の保護)法」(Muslim Women (Protection of Rights on Divorce) Act 1986)に異議を唱えた多くの人々のうちの一人である。政府は、これはインドの憲法上の世俗主義を強化するものだと主張したが、イスラム教徒とヒンズー教徒の両方から広く批判を浴びた。エインズリー・エンブリー英語版によれば、リベラル派はこれを「イスラムの蒙昧主義への屈服、13世紀への逆戻り」と見なし、ヒンズー教復興派の批評家たちは「インドの統一を弱める」と考えた。ショウリーは、クルアーンが要求する女性の扱いは、実際には女性の保護のためにあるにもかかわらず、イスラム法の実際の適用は女性を抑圧しているとする記事を書いた。これは、イスラム教そのものに対する明白な攻撃と受け取られ、批判を浴びた。イスラム学者のラフィーク・ザカリア英語版は、ショウリーのイスラム教改革への関心は、実際には、イスラム女性の窮状をイスラム教コミュニティの後進性の例として用いた、ヒンドゥー教側からの侮蔑を示すものであると述べた。ヴィール・サンフビ英語版は、これを「リベラルの顔をしたヒンドゥー排外主義」と呼んだ[20]

2009年の総選挙でインド人民党が敗北すると、ショウリーは党内の内省と説明責任を求めた。ショウリーは、党内の派閥主義と、自分たちの利益のためにジャーナリストに情報をリークする人たちを非難した[21]

政治学者のクリストフ・ジェフレロー英語版は、ショウリーは「過激なヒンドゥー教のテーマに共感する作家」と評し[22]、ショウリーはヒンドゥー・ナショナリズム組織である民族義勇団(RSS)の目的への支持を公言している。そのため、ショウリーのジャーナリズムを賞賛する人々の中には、不安を覚える人もいる[23]。ショウリーは、2002年のゴドラ列車襲撃事件英語版のようなイスラム教徒の暴力は危険だと考えているが、人々は「ヒンドゥトヴァ」という言葉を再定義する傾向にあると述べている。RSSとつながりがあり、ショウリーも党員であるインド人民党(BJP)の著名なメンバー、特にラール・クリシュナ・アードヴァーニーアタル・ビハーリー・ヴァージペーイーは、宗派間の憎しみに反対しており、BJPを包括的にしようとする中で、ムスリムとヒンドゥー双方のそうした憎しみを促進する極端な主張をする者を除外しようとしたと言う[24]

政治学者であるショウリーは、現在の選挙制度は能力や誠実さには関係ないと考えている。ショウリーは「明日のインド・グローバルサミット英語版」という文化会議で自分の見解を強調し、現在の選挙制度に変化をもたらすための圧力は社会からもたらされるべきであると付け加えた[25]

作家

[編集]

ショウリーには数多くの著書がある。マーサ・ヌスバウムは、ショウリーの著作の特徴を次のように述べている。

明らかに、賢明で決然とした、マックレーカー英語版の創造物である。それらはポレミック的であり、人身攻撃的であり、しばしば非常に荒々しい調子である。しかし、そのスタイルにもかかわらず、これらの本は明らかに、特異ではあっても幅広い学識を持ち、言論と報道の自由に対する情熱を持ち、時事問題の下に潜り込んで根本的な問題を解決しようとする、優れた人物の作品なのである[23]

ガンディーを除く宗教的な思想家にはほとんど関心がなく、ヌスバウムによれば、彼の著書は「バランスを取ろうとはしない。複雑さの感覚はどこにもない。どれも同じように嘲笑的、優越的な口調である」[26]

歴史家のD・N・ジャ英語版は、NCERT教科書論争英語版に関連したショウリーの著書"Eminent Historians"について、この本には「中傷」が含まれており、「歴史とは何の関係もない」と批判している[27][28][29]

著作物

[編集]

単著

  • Symptoms of fascism, New Delhi : Vikas, 1978, 322 p.
  • Hinduism : essence and consequence : a study of the Upanishads, the Gita and the Brahma-Sutras, Sahibabad : Vikas House, 1979, 414 p.
  • Institutions in the Janata phase, Bombay : Popular Prakashan, 1980, 300 p.
  • Mrs Gandhi's second reign, New Delhi : Vikas ; New York : Distributed by Advent Books, 1983, 532 p.
  • The Assassination & after, New Delhi : Roli Books Internat., 1985, 160 p.
  • On the current situation : new opportunities, new challenges, Pune : New Quest, 1985, 57 p.
  • Religion in Politics, New Delhi : Roli Books, 1987, 334 p.
  • Individuals, institutions, processes : how one may strengthen the other in India today, New Delhi, India ; New York, N.Y., U.S.A. : Viking, 1990, 239 p.
  • The State as charade: V.P. Singh, Chandra Shekhar & the rest, New Delhi : Roli Books, 1991, 425 p.
  • "The Only fatherland" : communists, "Quit India", and the Soviet Union, New Delhi : ASA Publications, 1991, 204 p.
  • These lethal, inexorable laws: Rajiv, his men, and his regime, New Delhi : Roli Books, 1991, 433 p.
  • A Secular Agenda: For Saving Our Country, for Welding It, New Delhi : ASA Publications, 1993, 376 p.
  • Indian Controversies: Essays on Religion in Politics, New Delhi : Rupa & Co., 1993, 522 p.
  • Missionaries in India : continuities, changes, dilemmas, New Delhi : ASA Publications, 1994, 305 p.
  • World of Fatwas: Shariah in Action, New Delhi : ASA Publications, 1995, 685 p.
  • Worshipping False Gods: Ambedkar, and the facts which have been erased, New Delhi : ASA Publ., 1997, 663 p.
  • Eminent Historians: Their Technology, Their Life, Their Fraud, New Delhi : ASA Publ., 1998, 271 p.
  • Harvesting Our Souls: Missionaries, Their Design, Their Claims, New Delhi : ASA Publ., 2000, 432 p.
  • Courts and Their Judgments: Premises, Prerequisites, Consequences, New Delhi : Rupa & Co., 2001, 454 p.
  • Governance And The Sclerosis That Has Set In, New Delhi : ASA Publ., 2005, 262 p.
  • Will the Iron Fence Save a Tree Hollowed by Termites?: Defence Imperatives Beyond the Military, New Delhi : ASA Publications, 2005, 485 p.
  • Falling Over Backwards: An Essay on Reservations, and on Judicial Populism, New Delhi : ASA : Rupa & Co., 2006, 378 p.
  • The Parliamentary System: What We Have Made Of It, What We Can Make Of It, New Delhi : Rupa & Co., 2006, 264 p.
  • Where Will All this Take Us?: Denial, Disunity, Disarray, New Delhi : Rupa & Co., 2006, 604 p.
  • Are We Deceiving Ourselves Again?: Lessons the Chinese Taught Pandit Nehru But which We Still Refuse to Learn, New Delhi : ASA Publ., 2008, 204 p.
  • We Must Have No Price: National Security, Reforms, Political Reconstruction, New Delhi : Express Group : Rupa & Co., 2010, 343 p.
  • Does He Know A Mothers Heart : How Suffering Refutes Religion, Noida : HarperCollins, 2011, 444 p.
  • Two Saints: Speculations Around and About Ramakrishna Paramahamsa and Ramana Maharishi, Noida : HarperCollins, 2017, 496 p.
  • Anita Gets Bail: What Are Our Courts Doing? What Should We Do About Them?, Noida : HarperCollins, 2018, 288 p.
  • Preparing For Death, India Viking, 2020, 528 p.

共著

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ Archived copy”. 2 October 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月19日閲覧。
  2. ^ Archived copy”. 14 February 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。13 February 2017閲覧。
  3. ^ Padma Awards”. Ministry of Home Affairs, Government of India (2015年). 15 October 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。21 July 2015閲覧。
  4. ^ Vir Sanghvi (19 May 2017), "A few God Men", Business-Insider. Retrieved 20 March 2020.
  5. ^ Utpal Kumar (18 June 2017), "The loneliness of being Arun Shourie", DailyO.in. Retrieved 20 March 2020.
  6. ^ IANS (9 July 2011), "Arun Shourie pens down his trauma", Hindustan Times. Retrieved 20 March 2020.
  7. ^ a b c d e International Press Institute
  8. ^ a b “Nalini Singh's daughter Ratna writes novel about mother-daughter troubled relationship”. The Sunday Guardian. (9 August 2014). http://www.sunday-guardian.com/investigation/nalini-singhs-daughter-ratna-writes-novel-about-mother-daughter-troubled-relationship 
  9. ^ “SU's Who”. Syracuse University Magazine (Syracuse, New York). http://surface.syr.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1071&context=sumagazine 2017年6月19日閲覧。 
  10. ^ Shourie, Arun (1965). Taxation of the Indian agriculture (M.A.) (English). Syracuse University & University Microfilms. OCLC 83238831. 2021年1月31日閲覧
  11. ^ Shourie, Arun (1966). Allocation of foreign exchange in India (PhD) (English). Syracuse University. OCLC 222018035. 2021年1月31日閲覧
  12. ^ God's an invention to suit society's needs: Arun Shourie
  13. ^ Arun, Shourie (6 October 2017). “Interview with Arun Shourie Decentralised Emergency in India By Srikant Kottackal translated by A J Philip senior journalist and columnist”. The News Freedom. 6 October 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。7 October 2017閲覧。
  14. ^ a b Magsaysay Foundation (2012)
  15. ^ Nussbaum (2009), p. 61
  16. ^ Arun Maira (2004). Remaking India: One Country, One Destiny. SAGE Publications. p. 25. ISBN 9780761932734. https://books.google.com/books?id=KRVtyruwoIgC&q=arun+shourie+&pg=PA25 
  17. ^ Arun Shourie's Speech on Media Freedom at Press Club of India: Full Transcript”. 2021年12月16日閲覧。
  18. ^ Jaffrelot, Christophe, ed (2009). Hindu Nationalism: A Reader. Princeton University Press. p. 344. ISBN 978-1-40082-803-6. https://books.google.com/books?id=mOXWgr53A5kC&pg=PA344 
  19. ^ Johri, Meera (2010) (英語). Greatness of Spirit: Profiles of Indian Magsaysay Award Winners. Rajpal & Sons. ISBN 9788170288589. https://books.google.com/books?id=j1iegDJAYakC&q=As+Disinvestment+Minister%2C+he+led+the+sale+of+Maruti%2C+VSNL%2C+Hindustan+Zinc+among+others&pg=PA103 
  20. ^ Embree (1990), pp. 107–111
  21. ^ Indian Express (2009)
  22. ^ Jaffrelot (1996), p. 353
  23. ^ a b Nussbaum (2009), p. 62
  24. ^ Nussbaum (2009), pp. 66–68
  25. ^ Arun Shourie says pressure to change electoral system should come from society-Politics News , Firstpost” (8 October 2017). 2021年12月16日閲覧。
  26. ^ Nussbaum (2009), p. 63
  27. ^ Grist to the reactionary mill”. Indian Express (9 July 2014). 9 July 2015閲覧。
  28. ^ How History Was Unmade At Nalanda! D N Jha”. Kafila (9 July 2014). 9 July 2015閲覧。
  29. ^ Sreedathan, G. (9 November 2014). “Votes do not guide intellectuals: D N Jha”. Business Standard. http://www.business-standard.com/article/opinion/votes-do-not-guide-intellectuals-d-n-jha-114112900682_1.html 9 July 2015閲覧。 

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]