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アメリカ合衆国副大統領就任宣誓

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
就任宣誓を行うカマラ・ハリス副大統領(2021年1月20日)

アメリカ合衆国副大統領就任宣誓(アメリカがっしゅうこくふくだいとうりょうしゅうにんせんせい、: oath of office of the vice president of the United States)は、アメリカ合衆国副大統領が就任する前に行う誓約あるいは確約である。アメリカ合衆国議会の議員や政府の閣僚が行うものと同じである。

予期せぬ出来事で次期大統領が着任できない場合には副大統領が大統領に昇格することになるので、次期大統領が就任式宣誓を行う前に、次期副大統領は、就任式の会場に赴き、宣誓を行うことになっている。アメリカ合衆国憲法第2条第1節第8項英語版には次期大統領が行うべき宣誓について明記されており、次期副大統領については宣誓を行うべきとは記述されていないが、憲法第6条第3項英語版ですべての政府の要職に就く者(連邦または州、選出または任命)は憲法の擁護を誓約せねばならないと記述されているので、これに基づいて行われる。1937年以降、憲法修正第20条(1933年批准)により、就任日は3月4日から変更され1月20日になっている。その年に、副大統領の就任宣誓もアメリカ合衆国議会議事堂上院から屋外の大統領就任式の会場に変更された[1]

宣誓文は、以下のようなものである。"I"と"do"の間には宣誓者本人のフルネームが入る。

I do solemnly swear (or affirm) that I will support and defend the Constitution of the United States against all enemies, foreign and domestic; that I will bear true faith and allegiance to the same; that I take this obligation freely, without any mental reservation or purpose of evasion; and that I will well and faithfully discharge the duties of the office on which I am about to enter. So help me God.[2]

背景

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第1議会英語版は、1789年5月に宣誓法enを可決し、上院議員のみが副大統領(上院議長でもある)の就任宣誓の立会人になれるとした。その年の暮れに、議会は、裁判所がすべての誓約と確約に立ち会えるようにする法律を可決した。1789年以降、宣誓は議会により数度の変更を経ている。副大統領、上院議員、下院議員、その他の政府役職者が復唱する現在の誓約は1884年から使われている[1]

副大統領職が1789年に創設されてから、その後の1世紀の間、副大統領は、大統領が就任宣誓を行う日(3月4日)に宣誓していたが、会場は別々であり、通常は副大統領が議長となる上院で行われた。20世紀半ばまでは、退任する副大統領または上院仮議長(副大統領が欠けた際に議長を代行する最高位の上院議員)の立ち会いで宣誓していた。常にではないが、時々、副大統領が上院で短い演説を行った。

これまで上院仮議長が20回も就任宣誓に立ち会い、その他、退任する副大統領が12回、最高裁判所陪席判事が10回、最高裁判所長官が6回、仮議長でない上院議員が5回、下院議長が4回、判事が2回、領事が1回(記録がない1回がある)それぞれ立会人を務めた。Warren E. Burger元最高裁判所長官は最多の3回も立会人を務めた。

就任宣誓はのべ59回行われ、47回がアメリカ合衆国議会議事堂の敷地内の数ヶ所で行われた。ホワイトハウスでは3回、フィラデルフィアコングレス・ホールでは2回行われた。また、フェデラル・ホール、Old Brick Capitol、キューバハバナ、ニューヨークの私邸、オブザーバトリー・サークル1番地においてもそれぞれ1回行われた。19世紀初頭に、重要性が相対的に欠如していたからか、副大統領の就任宣誓が行われた場所のうち2例が不明である。

次期大統領のウィリアム・R・キングの健康状態が悪化したことで、第32議会英語版の最終日の1853年3月3日に成立した法律により、キングは休養地のハバナで就任宣誓を行うことが許可された。現在に至るまで、外国で就任宣誓を行ったのはキングただ一人である。

これまで行われた就任宣誓

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日付 副大統領 場所 立会人
1789年6月3日
(任期開始は4月21日)
ジョン・アダムズ 1 フェデラル・ホール
ニューヨーク州ニューヨーク
ジョン・ラングドン
上院仮議長
1793年12月2日
(任期開始は3月4日)
ジョン・アダムズ 2 コングレス・ホール
ペンシルベニア州フィラデルフィア
ジョン・ラングドン
上院仮議長
1797年3月4日 トーマス・ジェファーソン 3 コングレス・ホール
ペンシルベニア州フィラデルフィア
en:William Bingham
上院仮議長
1801年3月4日 アーロン・バー 4 議事堂上院室英語版 en:James Hillhouse
上院仮議長
1805年3月4日 ジョージ・クリントン 5 議事堂の上院室 ジョン・マーシャル
最高裁判所長官
1809年3月4日 ジョージ・クリントン 6 the Journal of the Senate of the United Statesに記録がないので不明 不明
1813年5月24日
(任期開始は3月4日)
エルブリッジ・ゲリー 7 「副大統領はすでに法定の宣誓を行った」旨の文書を持って1813年5月24日に上院に出向いた。 John Davis
地方裁判所判事英語版
1817年3月4日 ダニエル・トンプキンズ 8 en:Old Brick Capitolの上院室 en:John Gaillard
上院仮議長
1821年3月3日
(任期開始は3月4日)
ダニエル・トンプキンズ 9 ダニエル・トンプキンズの私邸
en:Tompkinsville, Staten Island
en:William P. Van Ness
地方最高裁判所判事
1825年3月4日 ジョン・カルフーン 10 議事堂の上院室 アンドリュー・ジャクソン
上院議員
1829年3月4日 ジョン・カルフーン 11 議事堂の上院室 Samuel Smith
上院仮議長
1833年3月4日 マーティン・ヴァン・ビューレン 12 議事堂の下院室 ジョン・マーシャル
最高裁判所長官
1837年3月4日 リチャード・メンター・ジョンソン 13 議事堂の上院室 ウィリアム・R・キング
上院仮議長
1841年3月4日 ジョン・タイラー 14 議事堂の上院室 ウィリアム・R・キング
上院仮議長
1845年3月4日 ジョージ・ダラス 15 議事堂の上院室 en:Willie Person Mangum
上院仮議長
*1849年5月5日
(任期開始は3月4日)
ミラード・フィルモア 16 議事堂の上院室 デイヴィッド・ライス・アッチソン
上院仮議長
1853年3月24日
(任期開始は3月4日)
ウィリアム・R・キング 17 ハバナ
キューバ総督領英語版
en:William L. Sharkey
領事
1857年3月4日 ジョン・ブレッキンリッジ 18 議事堂の上院室 en:James Murray Mason
上院仮議長
1861年3月2日[3]
(任期開始は3月4日)
ハンニバル・ハムリン 19 議事堂の上院室 ジョン・ブレッキンリッジ
副大統領
1865年3月4日 アンドリュー・ジョンソン 20 議事堂の上院室 ハンニバル・ハムリン
副大統領
1869年3月4日 スカイラー・コルファクス 21 議事堂の上院室 ベンジャミン・ウェイド
上院仮議長
1873年3月4日 ヘンリー・ウィルソン 22 議事堂の上院室 スカイラー・コルファクス
副大統領
1877年3月4日 ウィリアム・A・ウィーラー 23 議事堂の上院室 en:Thomas W. Ferry
上院仮議長
1881年3月4日 チェスター・A・アーサー 24 議事堂の上院室 ウィリアム・A・ウィーラー
副大統領
1885年3月4日 トーマス・A・ヘンドリックス 25 議事堂の上院室 en:George F. Edmunds
上院仮議長
1889年3月4日 リーヴァイ・モートン 26 議事堂の上院室 ジョン・インガルズ
上院仮議長
1893年3月4日 アドレー・E・スティーブンソン 27 議事堂の上院室 リーヴァイ・モートン
副大統領
1897年3月4日 ギャレット・A・ホーバート 28 議事堂の上院室 アドレー・E・スティーブンソン
副大統領
1901年3月4日 セオドア・ルーズベルト 29 議事堂の上院室 en:William P. Frye
上院仮議長
1905年3月4日 チャールズ・W・フェアバンクス 30 議事堂の上院室 William P. Frye
上院仮議長
1909年3月4日 ジェームズ・S・シャーマン 31 議事堂の上院室 チャールズ・W・フェアバンクス
副大統領
1913年3月4日 トーマス・R・マーシャル 32 議事堂の上院室 Jacob H. Gallinger
上院仮議長
1917年3月4日 トーマス・R・マーシャル 33 議事堂の上院室 Willard Saulsbury Jr.
上院仮議長
1921年3月4日 カルビン・クーリッジ 34 議事堂の上院室 トーマス・R・マーシャル
副大統領
1925年3月4日 チャールズ・ドーズ 35 議事堂の上院室 en:Albert B. Cummins
上院仮議長
1929年3月4日 チャールズ・カーティス 36 議事堂の上院室 チャールズ・ドーズ
副大統領
1933年3月4日 ジョン・N・ガーナー 37 議事堂の上院室 チャールズ・カーティス
副大統領
1937年1月20日 ジョン・N・ガーナー 38 議事堂 en:Joseph Taylor Robinson
上院議員, 上院多数党院内総務
1941年1月20日 ヘンリー・A・ウォレス 39 議事堂 ジョン・N・ガーナー
副大統領
1945年1月20日 ハリー・S・トルーマン 40 ホワイトハウス ヘンリー・A・ウォレス
副大統領
1949年1月20日 アルバン・W・バークリー 41 議事堂 en:Stanley Forman Reed
最高裁判所陪席判事
1953年1月20日 リチャード・ニクソン 42 議事堂 en:William F. Knowland
上院議員
*1957年1月20日 リチャード・ニクソン 43 ホワイトハウス William F. Knowland
上院議員, 上院少数党院内総務
1961年1月20日 リンドン・ジョンソン 44 議事堂 en:Sam Rayburn
下院議長
1965年1月20日 ヒューバート・H・ハンフリー 45 議事堂 en:John William McCormack
下院議長
1969年1月20日 スピロ・アグニュー 46 議事堂 エヴァレット・ダークセン
上院議員, 上院少数党院内総務
1973年1月20日 スピロ・アグニュー 47 議事堂 en:Warren E. Burger
最高裁判所長官
1973年1月20日 ジェラルド・R・フォード 48 議事堂の下院室 Warren E. Burger
最高裁判所長官
1974年12月19日 ネルソン・ロックフェラー 49 議事堂の上院室 Warren E. Burger
最高裁判所長官
1977年1月20日 ウォルター・モンデール 50 議事堂 en:Tip O'Neill
下院議長
1981年1月20日 ジョージ・H・W・ブッシュ 51 議事堂 en:Potter Stewart
最高裁判所陪席判事
*1985年1月20日 ジョージ・H・W・ブッシュ 52 ホワイトハウス Potter Stewart
元最高裁判所陪席判事
1989年1月20日 ダン・クエール 53 議事堂 サンドラ・デイ・オコナー
最高裁判所陪席判事
1993年1月20日 アル・ゴア 54 議事堂 バイロン・ホワイト
最高裁判所陪席判事
1997年1月20日 アル・ゴア 55 議事堂 ルース・ベイダー・ギンズバーグ
最高裁判所陪席判事
2001年1月20日 ディック・チェイニー 56 議事堂 ウィリアム・レンキスト
最高裁判所長官
2005年1月20日 ディック・チェイニー 57 議事堂 デニス・ハスタート
下院議長
2009年1月20日 ジョー・バイデン 58 議事堂 ジョン・ポール・スティーブンス
最高裁判所陪席判事
*2013年1月20日 ジョー・バイデン 59 オブザーバトリー・サークル1番地 ソニア・ソトマイヨール
最高裁判所陪席判事
2017年1月20日 マイク・ペンス 60 議事堂 クラレンス・トーマス
最高裁判所陪席判事
2021年1月20日 カマラ・ハリス 61 議事堂 ソニア・ソトマイヨール
最高裁判所陪席判事

備考: 上表において日付にアスタリスク(*)があるのは、翌日の公式な式典における宣誓ではなく、日曜日に行われた法定の就任宣誓を示している。

宣誓中の出来事

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  • アメリカ合衆国最高裁判所判事のソニア・ソトマイヨールカマラ・ハリス副大統領の就任宣誓でファーストネームを誤って発音した。副大統領は、判事に続いて宣誓する際に自身の名前を正確に発音し、予定通りに進行された。副大統領は、宣誓後の判事の謝罪を受け入れた[4]

脚注

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  1. ^ a b Vice President's Swearing-In Ceremony”. The Joint Congressional Committee on Inaugural Ceremonies. January 17, 2017閲覧。
  2. ^ 合衆国法典第5編第3331条 5 U.S.C. § 3331
  3. ^ A Century of Lawmaking for a New Nation: U.S. Congressional Documents and Debates, 1774–1875. Senate Journal – Saturday, March 2, 1861”. American Memory. Library of Congress. May 17, 2020閲覧。
  4. ^ Lakritz, Talia. “Supreme Court Justice Sonia Sotomayor mispronounced 'Kamala' while swearing in the vice president — a disappointing moment on a groundbreaking day” (英語). Insider. 2021年5月1日閲覧。

関連項目

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