アメリカン航空5342便空中衝突事故
この記事は最新の出来事を扱っています。 |
この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2025年2月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
事故の様子を捉えた映像 | |
事故の概要 | |
---|---|
日付 | 2025年1月29日 |
概要 | 空中衝突 |
現場 |
アメリカ合衆国・バージニア州アーリントン郡ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港付近 北緯38度50分33.0秒 西経77度1分30.0秒 / 北緯38.842500度 西経77.025000度座標: 北緯38度50分33.0秒 西経77度1分30.0秒 / 北緯38.842500度 西経77.025000度 |
負傷者総数 | 0 |
死者総数 | 67(全員) |
生存者総数 | 0 |
第1機体 | |
2022年に撮影された事故機 | |
機種 | ボンバルディアCRJ-701ER |
運用者 | PSA航空(アメリカン・イーグル便として運航) |
機体記号 | N709PS |
出発地 | ウィチタ・ドワイト・D・アイゼンハワー国際空港 |
目的地 | ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港 |
乗客数 | 60 |
乗員数 | 4 |
負傷者数 (死者除く) | 0 |
死者数 | 64(全員) |
生存者数 | 0 |
第2機体 | |
2018年に撮影された事故機 | |
機種 | シコルスキー・エアクラフト UH-60L ブラックホーク |
運用者 | アメリカ陸軍 |
機体記号 | 00-26860 |
出発地 | デイヴィソン陸軍飛行場 |
乗員数 | 3 |
負傷者数 (死者除く) | 0 |
死者数 | 3(全員) |
生存者数 | 0 |
アメリカン航空5342便空中衝突事故(アメリカンこうくう5342びんくうちゅうしょうとつじこ)は、2025年1月29日21時頃(日本時間1月30日午前11時頃)にアメリカの首都・ワシントン近郊のロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港付近で、着陸寸前のウィチタ発のアメリカン航空5342便として運航されていたPSA航空のリージョナルジェット機(ボンバルディア CRJ-700型機)と、アメリカ陸軍のフォートベルボア基地第12航空大隊B中隊所属の「ブラックホーク」ヘリコプター(UH-60)が空中で衝突し、ポトマック川へ墜落した事故である[1][2][3][4]。ブラックホークは訓練飛行中だった[4]。現地の消防当局は30日に行った記者会見にて、この事件における生存者はいないとの見解を示している[5]。
乗員乗客
[編集]5342便には64人(乗客60人・乗員4人)が搭乗していた[2]。30日未明で30人以上の遺体が発見された[6]。
フィギュアスケート競技の統括団体「USフィギュアスケーティング」は、事故機に選手、コーチなどのウィチタで開催された全米フィギュアスケート選手権大会と並行して実施された代表強化合宿から戻る関係者らが乗っていたとする声明を発表した。関係者にはロシア人コーチで1994年世界フィギュアスケート選手権ペア金メダリストのヴァディム・ナウモフ、エフゲーニヤ・シシコワ夫妻も含まれている[7]。
調査
[編集]国家運輸安全委員会(NTSB)が主導で連邦航空局(FAA)と調査を行うと発表した[8]。CRJ-700の設計・製造国のカナダ運輸安全委員会(TSB)が調査を支援するため調査官を派遣した[9]。
ショーン・ダフィー運輸長官は、30日朝の記者会見において「5342便と米軍機は通常の飛行経路を辿り、管制との交信も出来ていた」との認識を発表した[10]。
ピート・ヘグセス国防長官は、国防総省、アメリカ陸軍が調査を開始すると述べ[11]、連邦捜査局(FBI)もテロや犯罪の情報はないものの調査を行うと発表した[12]。
1月30日にアメリカン航空機のフライトデータレコーダー(FDR)とコックピットボイスレコーダー(CVR)が回収され[13]、31日にヘリコプターのFDRとCVRが一体化したフライトレコーダーが回収され、両機のフライトレコーダーは解析のためNTSBの研究所に移送された[14]。
予備データによると、ヘリコプターの墜落当時の飛行高度は325フィートで、アメリカン航空機の最後に記録された高度は約300フィートであった。航空規則では、ポトマック川上空の当該ルートを飛行するヘリコプターの高度は200フィート以下にとどまるよう義務付けられている。NTSBの代表者は、ヘリコプターは本来よりも高い高度を飛行していた可能性があると述べた[15]。
報道
[編集]ヘリはワシントンで大惨事が発生した場合に政府高官達を避難させるというシナリオで訓練中だった。要人避難は政府版事業継続計画の一環であった。避難を可能とし、政府全体の要人の安全を確保するためには空港周辺の環境・航空交通管制・ルートを理解しておく必要があった[16]。
同空港では過去3年間に少なくとも2名のパイロットがヘリとニアミスしたと報告していた。大事故の前日にも別の飛行機がヘリコプターが近くを飛んだため着陸復行を余儀なくされた。近年になされた同空港の発着枠を増やす提案は激しい政治対立を引き起こしており、一部の議員達は同空港は過密で安全性に悪影響だと警告していた。連邦航空局の元長官は「事故を起こさずに飛んでいたのが信じられない」「だから一つの事故で全てが照らし出される」と語った[17]。
視界が良好な場合、同空港に向かう地域便の機長は大抵、滑走路33に迂回するように管制官から要求される。すると機長達は急降下と旋回を開始しファイナルアプローチに向かうために北西から低空で川を横切る。同空港のメインアプローチなら混み合うヘリコプターの通路とは高度にして数百フィートのクリアランスがあるが、滑走路33にはそのような余裕はない。ワシントンポストが連邦航空局の文書を分析したところによると、代わりに着陸するように指示された進入路では、ルート4のヘリコプター通路の上部からジェット機が飛ぶ所までの距離は15フィート未満であった[18]。
ある元機長は同空港の着陸の困難さを語り、以前に着陸した様子を撮影した動画を公開した[19]。
反応
[編集]- 教皇フランシスコはトランプ大統領に弔電を送り、犠牲者の魂を神の慈悲に委ね遺族に寄り添うと共に救援にあたる人々そして全ての米国民に神の祝福を祈り求めた[20][21]。
- バッハ会長はIOCを代表してオリンピック選手、若いアスリート、サポートスタッフを含む被害者に心からのお悔やみを述べた。国際スケート連盟も声明を発表し、米国フィギュアスケート連盟と連絡を取り合い全面的な支援を約束した[22]。
- 日本の石破茂首相は「衝撃的な知らせに大変心を痛めている。被害に遭われた方々に心から哀悼の意を表し、お見舞い申し上げる」とXに投稿した[23]。
トランプ大統領の発言
[編集]トランプ大統領は根拠を示す事なく事故はバイデン前政権が推進していたDEI(多様性・公平性・包括性)に責任があるとの持論を展開した。また、バイデン政権時代に運輸長官を務めたピート・ブティジェッジを「彼は最悪だ」「運輸省を地に落とした」と酷評した。Fox Newsは、トランプ大統領が皮肉を込めて「真の勝利者」と呼び、また「彼は最悪だ。市長としても最悪だった。彼は市を破滅させた。そして今も最悪だ。彼は単に上手い嘘八百を言っているだけだ」と侮辱した事を伝えている[24]。ブティジェッジは「トランプ大統領は嘘をつくのではなく、指導力を発揮すべきだ」と反論した[25][26][27]。
映像外部リンク | |
---|---|
未来担うジュニア選手も…米旅客機衝突 トランプ大統領「多様性重視のせい」 【報道ステーション】(2025年1月31日) |
事故の影響
[編集]- PSA航空5342便の目的地であったロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港は、翌日の現地時間11時まで滑走路は閉鎖された[28]。
- 事故を受けてアメリカン航空は当該の5342便の番号を廃止し、カンザス州ウィチタとワシントンD.C.間の便は5677便として運航される予定であるとした[29][30]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ Tanyos, Faris (2025年1月30日). “What we know about the American Airlines plane and Army helicopter crash over D.C.'s Potomac River - CBS News” (英語). www.cbsnews.com. 2025年1月30日閲覧。
- ^ a b 日本放送協会 (2025年1月30日). “【速報中】米ワシントン近郊 旅客機が米軍ヘリと衝突 川に墜落 | NHK”. NHKニュース. 2025年1月30日閲覧。
- ^ Shepardson, David、Hunnicutt, Trevor、Mason, Jeff、Mason, Jeff「米ワシントンで旅客機が米軍ヘリと衝突、川に墜落 多数の死者か」『ロイター』2025年1月30日。2025年1月30日閲覧。
- ^ a b 外信部, 時事通信 (2025年1月30日). “旅客機とヘリが空中衝突 川に墜落、18遺体収容の報道も―米首都近郊:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2025年1月30日閲覧。
- ^ “地元消防当局「生存者なし」の見方 米ワシントンの空中衝突 旅客機64人、ヘリ乗員3人”. 産経新聞. (2025年1月30日) 2025年1月30日閲覧。
- ^ “米旅客機と米軍ヘリが空中衝突、首都ワシントンの川に墜落 乗客60人”. BBCニュース (2025年1月30日). 2025年1月30日閲覧。
- ^ "DC Plane Crash: Kremlin Responds as Russian Skaters' Deaths Confirmed". Newsweek (英語). Newsweek Digital LLC. 30 January 2025. 2025年1月31日閲覧。
- ^ Staff, N. B. C. (2025年1月29日). “Plane crashes near Reagan National Airport after colliding with military helicopter, officials say” (英語). NBC10 Philadelphia. 2025年1月31日閲覧。
- ^ Government of Canada, Transportation Safety Board of Canada (2025年1月30日). “TSB is deploying a team of investigators following an accident involving an aircraft near Washington, DC - Transportation Safety Board of Canada”. www.tsb.gc.ca. 2025年1月31日閲覧。
- ^ 「米旅客機と軍用ヘリが衝突 トランプ大統領「生存者はいない」」『NHK NEWS WEB』 日本放送協会、2025年1月31日。2025年1月31日閲覧。
- ^ News, A. B. C.. “What to know about the deadly American Airlines and Black Hawk helicopter collision” (英語). ABC News. 2025年1月31日閲覧。
- ^ Staff, N. B. C. (2025年1月29日). “Plane crashes near Reagan National Airport after colliding with military helicopter, officials say” (英語). NBC10 Philadelphia. 2025年1月31日閲覧。
- ^ Robles, Carlos (2025年1月31日). “Black boxes recovered from American Airlines flight 5342” (英語). BNO News. 2025年1月31日閲覧。
- ^ “Investigators have recovered the black box recorder from a military helicopter that collided with jet” (英語). Scripps News (2025年1月31日). 2025年2月1日閲覧。
- ^ Bowman, Emma (2025年2月1日). “D.C. crash investigators focus on altitude and vision quality of helicopter crew” (英語). NPR 2025年2月3日閲覧。
- ^ Kaanita Iyer, Zoe Sottile (2025年2月1日). “Pilots tried to pull passenger jet’s nose up within seconds of deadly DC helicopter collision, preliminary NTSB data shows” (英語). CNN. 2025年2月7日閲覧。
- ^ Casey Tolan, Majlie de Puy Kamp, Curt Devine, Haley Britzky, Oren Liebermann (2025年1月30日). “Pilots had reported near-misses with helicopters at Reagan National Airport in the years before the deadly crash” (英語). CNN. 2025年2月7日閲覧。
- ^ Approach for Reagan National’s Runway 33 is within feet of helicopter corridor
- ^ Chakales, Sarah (2025年1月31日). “Retired pilot’s video shows what it’s like landing at Ronald Reagan Washington National Airport” (英語). https://www.wsaz.com. 2025年2月7日閲覧。
- ^ “米首都ワシントン航空機事故に、教皇の悲しみ - バチカン・ニュース”. www.vaticannews.va (2025年1月31日). 2025年2月1日閲覧。
- ^ “Telegram of condolence of the Holy Father for the victims of the air accident in the United States of America”. press.vatican.va (2025年1月30日). 2025年2月1日閲覧。
- ^ Figure skating athletes, coaches, and family among those killed in plane crash International Olympic Committee
- ^ “首相「被害者に哀悼の意」 日本政府、情報を収集:東京新聞デジタル”. 東京新聞デジタル (2025年1月30日). 2025年2月1日閲覧。
- ^ Nitzberg, Alex (2025年1月31日). “Pete Buttigieg blasts Trump after president excoriates him during press briefing” (英語). Fox News. 2025年2月2日閲覧。
- ^ “旅客機墜落、トランプ氏がDEI政策の影響と持論「航空局は知的障害や精神疾患の職員を積極採用」”. 読売新聞オンライン (2025年1月31日). 2025年2月1日閲覧。
- ^ “米旅客機衝突事故、民主党政権の方針に責任とトランプ氏”. CNN.co.jp (2025年1月31日). 2025年2月1日閲覧。
- ^ “トランプ米大統領、航空機衝突事故の原因は「多様性プログラム」だと主張”. BBCニュース (2025年1月31日). 2025年2月1日閲覧。
- ^ Reardon, Logan (2025年1月30日). “Is DCA open? What travelers should know about Reagan National Airport after crash” (英語). NBC4 Washington. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “American Airlines retires flight number, resumes Wichita route after deadly crash in DC”. Wichita Eagle. 2025年2月1日閲覧。
- ^ “There Will Never Be Another Flight 5342 on American Airlines. Here’s Why” (英語). People.com. 2025年2月1日閲覧。
関連項目
[編集]- グランドキャニオン空中衝突事故 - 1956年に発生した事故。有視界飛行や航空管制の不備が指摘されたため、航空行政の改善の契機となった。
- サベナ航空548便墜落事故 - 1961年にベルギー・ブリュッセルにて発生した事故。フィギュアスケートアメリカ合衆国代表選手団が犠牲になった航空事故。
- 全日空機雫石衝突事故 - 1971年に発生した事故。一方の航空機と軍用機が衝突した点で本事故に類似。
- パシフィック・サウスウエスト航空182便墜落事故 - 1978年に発生した事故。着陸進入中にほかの航空機に空中衝突した点で本事故に類似
- エア・フロリダ90便墜落事故 - 1982年に同空港で発生した事故。また同じく墜落現場がポトマック川である。
- アエロメヒコ航空498便空中衝突事故 - 1986年に発生した事故。空港への進入中に他の航空機に空中衝突した点で本事故に類似。
- ニューデリー空中衝突事故 - 1996年に発生した事故。空中衝突事故では最多の死者を出した事故である。
- ユーバーリンゲン空中衝突事故 - 2002年に発生した事故。航空管制の問題による事故で本事故に類似がある。
- 羽田空港地上衝突事故 - 2024年に発生した事故。一方の航空機が着陸中に他の航空機に衝突した点で本事故に類似。
- 記事にはなっていないが2024年4月20日に海自のSH-60K哨戒ヘリ2機が対潜戦訓練中に空中衝突する事故が起きている。