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アフヴァイトゥム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アフヴァイトゥム
Ahvaytum
生息年代: 後期三畳紀 (カーニアン), ~230 Ma
骨格復元図
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : ?†竜脚形亜目 Sauropodomorpha
: アフヴァイトゥム属 Ahvaytum
学名
Ahvaytum
Lovelace et al., 2025

アフヴァイトゥム学名 : Ahvaytum IPA: [ɔveɪtəm] ah-VAY-tum、「太古」の意)は、アメリカワイオミング州にある後期三畳紀の層であるポポ・アギー層英語版から発見され、おそらく基盤的竜脚形類恐竜絶滅した。本属には単一の断片的な後肢骨から知られるアフヴァイトゥム・バーンドゥーイヴェチェAhvaytum bahndooiveche)1のみが含まれる。アフヴァイトゥムは、命名されているローラシア大陸の恐竜の中で、最古のものである。

発見と命名

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アフヴァイトゥムの化石は、2013年にアメリカワイオミング州中西部のポポ・アギー層英語版の露頭で発見された[1][2]ホロタイプ標本 UWGM 1975 は、独立した左距骨からなる。標本 UWGM 7549 は、部分的な左大腿骨からなり、ホロタイプ標本から半径5メートル以内で発見され、その解剖学的構造が竜盤類と一致しているため、アフヴァイトゥムに割り当てられた[3]

アフヴァイトゥムの正式な命名に先立ち、この化石は2020年の学術会議の要旨で言及されており、当初は新獣脚類に近縁な初期に分岐した獣脚類であると解釈されていた[4]

2025年、Lovelace らはこれらの化石に基づき、アフヴァイトゥム・バーンドゥーイヴェチェ(Ahvaytum bahndooiveche)を初期の竜脚形類の新属新種として記載した。属名の AhvaytumIPA: [ɔveɪtəm])は「太古」を意味し、本標本の古さを指している。種小名の bahndooivecheIPA: [bɔnduivitʃi])は、直訳すると「水の若いイケメン」を指し、恐竜と色鮮やかな在来種の有尾目の両方を指す言葉である。属名と種小名(を合わせ「太古の恐竜」を意味する)は、東ショショーニ族英語版の長老と学生らの母国語を元にし、ヨーロッパの言語に由来する名前の制定に関連する植民地主義と見做されることに対抗する目的で作成された[3]

アフヴァイトゥムは、ローラシア大陸に生息していた最古の恐竜として知られている。記載される以前竜脚形類はゴンドワナ大陸で誕生したと想定されていたが、アフヴァイトゥムは、この系統群がすでにより広範囲に分散していたことを示している[3]

説明

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ヒトとの大きさ比較したアフヴァイトゥム

アフヴァイトゥムは小型の竜脚形類で、全長0.91メートル、体高0.30メートルと推定されている[1]。アルゼンチンに生息する近縁種のエオラプトルは、全長約1.3メートルでアフヴァイトゥムよりも大きく、より完全な骨格が知られている[5]。アフヴァイトゥムに割り当てられた化石は、幼体時の個体発生段階を経過し、時間をかけ成長を続けていた少なくとも1個体のものであると解釈されている[3]

分類

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復元図

Lovelace et al. (2025) は、系統解析において、アフヴァイトゥムがゴンドワナ大陸の竜脚形類であるエオラプトルおよびブリオレステス英語版と密接に関連していることを一貫し明らかにした。彼らの分析では、最大限の簡略化を用いて、これらの分類群をアフリカムビレサウルス英語版と共にサトゥルナリア科英語版の一員として分類した。彼らによる以下のクラドグラムに示されているこれらの結果は、従来認識されていたものよりも包括的なサトゥルナリア科の分類を示していると指摘している[3]

Eusaurischia

Theropoda

Sauropodomorpha

Panphagia

Pampadromaeus

Bagualosauria

Bagualosaurus

Saturnaliidae

Saturnalia

Nhandumirim

Chromogisaurus

Ahvaytum

Mbiresaurus

Buriolestes

Eoraptor

Thecodontosaurus

Plateosauria

古環境

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2024年、Deckman、Lovelace、Hollandは、ポポ・アギー層が一般的な河川環境、具体的には分配河川作用を表していると示唆した[6]。アフヴァイトゥムが知られている同層の下部からは、Sulcimentisauriaの'シレサウルス科'、大型の分椎目アナスキスマ英語版ブエットネレルペトン英語版植竜類パラスクスの化石も発見されている。同層の別の場所からは、リンコサウルス類英語版ビーシイウォ英語版偽鰐類ヘプタスクス英語版ポポサウルス英語版ディキノドン類エウブラキオサウルス英語版が知られている[3]

脚注

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  1. ^ a b Dinosaurs roamed the northern hemisphere millions of years earlier than previously thought, according to new analysis of the oldest North American fossils” (英語). University of Wisconsin–Madison. 2025年1月8日閲覧。
  2. ^ Lovelace, D.M.; Fitch, A.J.; Schwartz, D.; Schmitz, M. (2024). “Concurrence of Late Triassic lithostratigraphic, radioisotopic, and biostratigraphic data support a Carnian age for the Popo Agie Formation (Chugwater Group), Wyoming, US”. GSA Bulletin 136 (5-6): 2305–2324. doi:10.1130/B36807.1. 
  3. ^ a b c d e f Lovelace, David M; Kufner, Aaron M; Fitch, Adam J; Curry Rogers, Kristina; Schmitz, Mark; Schwartz, Darin M; LeClair-Diaz, Amanda; St.Clair, Lynette et al. (2025-01-01). “Rethinking dinosaur origins: oldest known equatorial dinosaur-bearing assemblage (mid-late Carnian Popo Agie FM, Wyoming, USA)”. Zoological Journal of the Linnean Society 203 (1): zlae153. doi:10.1093/zoolinnean/zlae153. ISSN 0024-4082. https://academic.oup.com/zoolinnean/article/203/1/zlae153/7942678. 
  4. ^ Fitch, Adam J.; Lovelace, David M.; Stocker, Michelle R. (2020). The oldest dinosaur from the northern hemisphere and the origins of Theropoda (PDF). Society of Vertebrate Paleontology 80th Annual Meeting. pp. 140–141.
  5. ^ Sereno, Paul C.; Martínez, Ricardo N.; Alcober, Oscar A. (2013). “Osteology of Eoraptor lunensis (Dinosauria, Sauropodomorpha). Basal sauropodomorphs and the vertebrate fossil record of the Ischigualasto Formation (Late Triassic: Carnian-Norian) of Argentina”. Journal of Vertebrate Paleontology Memoir 12: 83–179. doi:10.1080/02724634.2013.820113. 
  6. ^ Deckman, M.E.; Lovelace, D.M.; Holland, S.M. (2024). “A Reinterpretation of the Jelm and Popo Agie Formations (Triassic, Wyoming) as a Distributive Fluvial System (DFS) and the Role of the Accommodation/Sedimentation Ratio in DFS Deposition”. The Mountain Geologist 61 (3): 219–248. doi:10.31582/rmag.mg.61.3.219.