アイタケ
アイタケ | ||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Russula virescens (Schaeff.) Fr. [1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
アイタケ |
アイタケ(藍茸[2]、学名: Russula virescens)はベニタケ属の中型から大型になるキノコの一種。英語圏では green russula[3]、green quilt russula[4]、greencracked brittlegill[5] などと呼ばれる[7]。キノコにおいてはめずらしく淡い青緑色の傘で、独特のひび割れ模様が出る。食用キノコ。青森県や山形県の方言で、アオドヨウ(青土用)ともよばれ、「土用の日から食べられる青い茸」という意味がある[8][9]。傘の色は、藍色というよりは緑色を基調とした色合いである[10]。
生態と分布
[編集]夏から秋にかけて、シイ・カシ林やシデ、コナラ、クヌギ、ミズナラ、ブナなどコナラ属・カバノキ属・ブナ属の落葉広葉樹の雑木林の地上や林縁の草地に生え、散生あるいは群生する[8][2][10]。ときにはマツ属・モミ属・トウヒ属などの樹木の下にも発生する。
外生菌根菌[9](共生性[2])。これらの樹木の生きた細根との間に、外生菌根を形成して生活しており、人工栽培は困難で、いまのところ試みられていない。
北半球温帯以北に広く分布し[9][1]、日本でも、低地の公園林などから亜高山帯まで、各地で比較的普通に見出される。
形態
[編集]子実体は傘と柄からなる。傘は直径 5 - 12センチメートル (cm) で、幼時は内側に丸まった団子状からまんじゅう型、成長すると開いて、さらに反り返って浅い漏斗状となる[8][2][10]。表面は淡い青緑色でいくぶんざらつき、しばしば表皮が不規則にひび割れ状になった斑紋が浮き出る[8][2]。傘の上面は、湿っているときにやや粘性がある[9]。幼菌は傘全体が深い青緑色[2]。じゅうぶんに成熟すれば、しばしば傘の周縁部に浅い条溝を生じる[9]。
傘・柄の肉はともに白色で傷つけても変色することはなく、堅いがもろい肉質であり[9][2]、味もにおいもともに温和である。硫酸鉄(II) に接触すると帯褐オレンジ色ないし帯褐桃色に変わる。
傘下面のヒダは柄に対して上生して[8]やや密に配列し[11]、白色からクリーム色を呈し[9]、分岐や連絡脈を欠く。
柄はほぼ上下同大で長さ 4 - 10 cm[8][1]、太さ1.5 - 2.5 cm 程度[11]、白色でしわ状の縦線に被われ、中実か随状でかたい[9]。
胞子紋は淡クリーム色を呈する[11]。担子胞子は、大きさ7 - 8 × 6 - 6.5マイクロメートル (μm) のほぼ球形から広楕円形をなし、その表面には微細なとげ状突起が不規則に生じ、突起の基部はきわめて細い連絡糸によって連結されている[11]。傘の表面には円錐状のシスチジアが散在し、表皮のゼラチン化はほとんど認められない。
食用
[編集]食用になり、比較的大形で発生量も多く、酷似する毒キノコも少ないために人気がある。地方によっては味の良いキノコとして珍重されている[8]。特に中国の雲南省では青头菌 (チントウジュン)として広く市場に流通している。
歯切れはさほどではないが肉質がやわらかく[8]、クセのない風味で、特に汁物にするとよいダシが出る[9]。鉄板焼きをはじめ、サラダやバター炒め、ビザトーストのトッピング、フライなどにする[8][2]。ただし、ビタミンB1を破壊する酵素を含有することが報告されており、多食は避けるべきであるとされている[12]。また、調理方法にも注意を要し、生食はあまり勧められない。
類似種
[編集]アイタケは、傘の色、形を見れば同定しやすいキノコだといわれている[8]。
食毒不明のフタイロベニタケ (Russula viridirubrolimbata) も、アイタケと同様に、傘の表皮が不規則に裂けてモザイク状をなすが、通常はかさの中央部付近が緑色、周縁部が暗赤色を呈する[9]。ただし、フタイロベニタケにおいても、まれに傘のほとんど全面が緑色を呈することがあり、その場合には肉眼的な識別はきわめて困難である[9]。夏から秋にかけて広葉樹林にまれに発生する[1]。
またアイタケに似て、かさの表皮が黄褐色となるものにヤブレキチャハツ (Russula crustosa) がある。
脚注
[編集]- ^ a b c d 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄 編著 2011, p. 280
- ^ a b c d e f g h 牛島秀爾 2021, p. 24.
- ^ Marshall, Nina Lovering (1923). The Mushroom Book. New York: Doubleday. p. 69
- ^ Roody, William C. (2003). Mushrooms of West Virginia and the Central Appalachians. Lexington: University Press of Kentucky. p. 234
- ^ a b Sasata, Robert (2008年11月7日). “Russula virescens”. Medicinal Mushrooms. 2011年9月3日閲覧。
- ^ Cooke, Mordecai Cubitt (1871). Handbook of British Fungi. London: Macmillan. p. 220
- ^ そのほか greenish russula[6]、green cracking russula[5] など。
- ^ a b c d e f g h i j 瀬畑雄三監修 2006, p. 9.
- ^ a b c d e f g h i j k 吹春俊光 2010, p. 72.
- ^ a b c 秋山弘之 2024, p. 69.
- ^ a b c d 前川二太郎 編著 2021, p. 410.
- ^ 脇田正二「キノコ類のビタミンB1破壊に関する研究」『横浜国立大学理科紀要. 第二類生物学・地学』第23巻、横浜国立大学、1976年10月、39-70頁、hdl:10131/2991、ISSN 0513-5613、NAID 110006150395、CRID 1050282677656204672。
参考文献
[編集]- 秋山弘之『知りたい会いたい 色と形ですぐわかる 身近なキノコ図鑑』家の光協会、2024年9月20日。ISBN 978-4-259-56812-2。
- 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄 編著『日本のきのこ』(増補改訂新版)山と渓谷社〈山渓カラー名鑑〉、2011年12月25日。ISBN 978-4-635-09044-5。
- 牛島秀爾『道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活 きのこ図鑑』つり人社、2021年11月1日。ISBN 978-4-86447-382-8。
- 瀬畑雄三監修 家の光協会編『名人が教える きのこの採り方・食べ方』家の光協会、2006年9月1日。ISBN 4-259-56162-6。
- 吹春俊光『おいしいきのこ 毒きのこ』大作晃一(写真)、主婦の友社、2010年9月30日。ISBN 978-4-07-273560-2。
- 前川二太郎 編著『新分類 キノコ図鑑:スタンダード版』北隆館、2021年7月10日。ISBN 978-4-8326-0747-7。
- Petersen, J. H.; Vesterholt, J. (1990). Danske storsvampe. Basidiesvampe [a key to Danish basidiomycetes]. Viborg, Denmark: Gyldendal. ISBN 87-01-09932-9
- 本郷次雄監修 幼菌の会編 『カラー版 きのこ図鑑』 家の光協会、2001年 。ISBN 4-259-53967-1。
- 前川二太郎監修 トマス・レソェ著 『世界きのこ図鑑』 新樹社、2005年。ISBN 4-7875-8540-1。
- 小宮山勝司著 『きのこ大図鑑』 永岡書店、2008年。ISBN 978-4-522-42398-1。
外部リンク
[編集]- Mushroom Expert
- Medicinal Mushrooms
- 野生きのこの世界 社団法人 農林水産技術情報協会