全身獲得抵抗性
全身獲得抵抗性(ぜんしんかくとくていこうせい、systemic acquired resistance:SAR)とは、植物が局所的に病原体に曝された後に起こる、植物体全体の抵抗性反応である。SARは動物に見られる自然免疫に似ており、植物のSARと動物の自然免疫は進化的に保存されているとの証拠もある[1]。植物はパターン認識受容体(広範囲の微生物のもつ分子構造パターンを認識する)を用いて微生物の保存されたサインを認識しており、この認識が免疫反応の引き金となる。保存された微生物のサインに対する受容体の最初のものは、イネ(XA21, 1995)[2]とシロイヌナズナ(FLS2, 2000)[3]で見出された。植物はまた、高度に異なる病原体のエフェクターに対する免疫受容体も持っている。この中にはNBS-LRRクラスのタンパク質がある。SARは植物が病害に抵抗するのにも重要だが、一度罹患した病害から回復するのにも重要である。SARは広い範囲の病原体により、特に(それだけではないが)組織の壊死を起こすものにより誘導される。そしてSARの誘導後に見られる抵抗性は広い範囲の病原体に有効であり、ゆえにSARは「広スペクトラム抵抗性」とも呼ばれる。SARに伴って広い範囲の遺伝子(いわゆる病原性関連(PR)遺伝子)の誘導が起き、SARの活性化は内因性のサリチル酸(SA)の蓄積を要する。病原体により誘導されたSAシグナルは分子シグナル伝達経路を活性化する。この経路は、シロイヌナズナのモデル遺伝系でNIM1、NPR1またはSAI1と呼ばれる遺伝子(いずれも同じ遺伝子である)により同定されている。SARは双子葉類、単子葉類を含め広い範囲の被子植物に見られる。SARはトウモロコシでも活性化されるが、抵抗性誘導剤として広く使用されているベンゾチアジアゾールなどは、さび病を引き起こすP. sorghi に対しては有効でないこともある[4]。
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ Ausubel, FM (October 2005). “Are innate immune signaling pathways in plants and animals conserved?”. Nature immunology 6 (10): 973?9. doi:10.1038/ni1253. PMID 16177805.
- ^ Song, W.Y. (1995). “A receptor kinase-like protein encoded by the rice disease resistance gene, XA21”. Science 270 (5243): 1804?1806. doi:10.1126/science.270.5243.1804. PMID 8525370.
- ^ Gomez-Gomez, L. (2000). “FLS2: an LRR receptor-like kinase involved in the perception of the bacterial elicitor flagellin in Arabidopsis”. Molecular Cell 5 (6): 1003?1011. doi:10.1016/S1097-2765(00)80265-8. PMID 10911994.
- ^ [1]
- Gautam, P. and Stein, J. 2011. Induction of Systemic Acquired Resistance to Puccinia sorghi in Corn. International Journal of Plant Pathology 2(1): 43-50 [2]
- Miller G et al., (2009) The plant NADPH oxidase RBOHD mediates rapid systemic signaling in response to diverse stimuli. Sci. Signal. 2, ra45.
- Ryals et al., (1996) Systemic Acquired Resistance. The Plant Cell 8: 1809-1819.[3]