アイゴ
アイゴ | ||||||||||||||||||||||||
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アイゴ
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Siganus fuscescens (Houttuyn, 1782) | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
アイゴ(藍子、阿乙呉) 本文参照 | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Mottled spinefoot |
アイゴ(藍子[1]、阿乙呉[1]、学名:Siganus fuscescens)は、アイゴ科に分類される海水魚の一種。日本列島周辺を含む西太平洋の暖海域沿岸に生息する。
漁獲後に時間が経つと少し臭みが出てくるが、新鮮なうちに内臓を取り除くなどすれば、刺身などで味わえる白身魚である[2]。鰭(背鰭、胸鰭、尻鰭)の棘に毒をもち、刺されるとひどく痛む。
特徴
[編集]成魚は全長30センチメートルほどで、体は木の葉のように左右に平たい。体色は側面に褐色の横縞が数本あり、全身に白っぽい斑点があり、この斑点は環境や刺激によって素早く変化する。口は小さいが唇は厚い。皮膚は比較的厚く丈夫である。
背鰭、腹鰭、臀鰭の棘条は太く鋭く発達していて、それぞれに毒腺を備える。この棘に刺されると毒が注入され、数時間-数週間ほど痛む。刺された場合は40-60℃ほどの湯に患部を入れると、毒素のタンパク質が不活性化するので痛みを軽減させることができる。冬場は肌寒いこともあり痛みが和らぎにくい。アイゴが死んでも棘の毒は消えないので、漁獲したら刺されないようはさみなどで棘を切断しておくのが望ましい。
分布
[編集]日本列島の本州以南、朝鮮半島南部からオーストラリア大陸北部まで、西太平洋の熱帯・温帯海域の沿岸に広く分布する。日本の沖縄県産は従来「シモフリアイゴ」と呼ばれ、学名S. canaliculatusが与えられて別種扱いされていた[3][4]。
生態
[編集]海藻の多い岩礁やサンゴ礁に生息し、汽水域にもよく進入する。食性は特に海藻を好んで食べるほか、甲殻類や多毛類なども捕食する雑食性である。この植食性の強さから、水族館ではしばしば餌としてコマツナなどの葉菜類を与える。漁法としてもサツマイモを餌にした籠漁(沖縄県)や、酒かすや味噌などを練り餌にした釣りが存在する。紀伊大島(和歌山県串本町)にある近畿大学大島実験場で行われているアイゴの養殖では、野菜くずが飼料として与えられている[2]。
西日本では沿岸の藻場が消失する磯焼けの原因として、アイゴによる食害を指摘されている[5][6]。このため長崎県では、アイゴを捕獲して、臭みを抑えるエサを与えて飼育したうえで食用に出荷する取り組みが行なわれている[7]。
産卵期は7 - 8月で、付着性卵を産む。1 - 2日のうちに全長2.1 - 2.6ミリメートルの稚魚が孵化する。稚魚はプランクトンを捕食しながら浮遊生活を送るが、全長3センチメートル程度まで成長すると沿岸域に大群で集まって海藻を食べるようになる。夏から秋にかけて、全長が数-10センチメートル程度になった若魚の群れが餌を漁る様子が港などで見られることがある。
日本の地方名
[編集]「イタイタ」(富山県)、「ヨソバリ」(小笠原諸島)、「シャク」(静岡県)、「バリ」(西日本各地)、「アイ」(関西・三重県)、「シブカミ」(アイゴの老生魚を指す和歌山県の方言)、「アイノウオ(島根県)、「モアイ」(広島県)、「モクライ」「アイバチ」(山口県)、「イバリ」(福岡県)、「ヤー」「ヤーノイオ」「ヤノウオ」(天草諸島)、「ウミアイ」「バリ」「バリゴ」(熊本県・宮崎県)、「エーグヮー」「アーエー」「シラエー」(沖縄県)など、日本各地に様々な地方名がある。
「イタイタ」「アイバチ」「ヤーノイオ」などは毒の棘を持つことに因んだ呼称である。また身の磯臭さを「小便くさい」と捉えたことに由来するのが「バリ」「エエバリ」などの系統の方言呼称で、小便の別称「ばり」「いばり」に由来する。和歌山県の「シブカミ」は老生魚の皮膚の質感が渋紙(柿渋を塗った丈夫な紙)に似ることに由来する。
利用
[編集]漁獲
[編集]定置網、地引き網、釣りなどの沿岸漁業で漁獲される。四国、九州、沖縄などでは市場にも流通する[1]。
食材
[編集]毒の棘を持つとともに肉が磯臭いので人や地域によっては嫌われるが、徳島県や和歌山県などでは美味な魚として珍重される。盛り付けた皿を舐めるほど旨いとして、「アイゴの皿ねぶり」という言葉もある[1]。
磯臭さを除けば肉質は悪くない。歯ごたえのある白身で、刺身・洗い、塩焼き、煮付けなどで食べられる。長い大腸は渦巻状になっており、見た目から「ゼンマイ」と呼ばれ、新鮮なら煮物などで食べられる。ただし磯臭さは内臓から身に移るので、新鮮なうちに内臓を傷つけずに取り除いて、ショウガや柚子胡椒で臭みを消すとよい。皮を引かずに柵にとり、鰹のタタキ(土佐作り)のように表面を焼いて刺身にすると厚い皮も味わえる。
沖縄料理のスクガラスはシモフリアイゴや近縁種のアミアイゴを主としたアイゴ類の稚魚(スク、シュク)を塩辛にしたもので、豆腐に乗せるなどして食べる。また、塩辛だけでなく酢締めや唐揚げにもされる。成魚はもっぱら塩味で煮付けたマース煮で供される。
香港では岸釣りの定番の魚として捕られ、泥鯭(広東語:ナイマーン)と呼んでスープの具などに用いられる。大衆食堂などでも生きたままで流通しており、かつては非常に安価だったが、近年[いつ?]は取れにくくなって値も上がっている。
脚注
[編集]- ^ a b c d 講談社編『魚の目利き食通事典』(講談社プラスアルファ文庫 2002年)p.10
- ^ a b 「未利用魚」アイゴを養殖:水産資源 持続利用へ一歩『日本経済新聞』2022年10月24日(社会面)2022年11月7日閲覧
- ^ 島田和彦『日本産魚類検索 全種の同定』(東海大学出版会 2000年)pp.1628-1629 NAID 10029844860
- ^ Yamaoka K, Kita H, Taniguchi N. Genetic relationships in Siganids from southern Japan. Proc. 4th Indo-Pac. Fish Confer. 1994; 294-316., NAID 10017390776
- ^ 野田幹雄、大原啓史、浦川賢二、村瀬昇、山元憲一「響灘蓋井島のガラモ場に出現したアイゴ成魚の餌利用—大型褐藻類の採餌との関連—」『日本水産学会誌』77巻 (2011) 6号 pp.1008-1019, doi:10.2331/suisan.77.1008
- ^ 桐山隆哉、藤井明彦、藤田雄二「長崎県沿岸におけるヒジキ生育不良現象を摂食によって誘発している原因魚種」『水産増殖』53巻 (2005) 4号 pp.419-423, doi:10.11233/aquaculturesci1953.53.419
- ^ 「厄介者アイゴ おいしく食べられます/臭み消すエサ与え 生食用に」『朝日新聞』夕刊2024年10月8日(社会面)
参考文献
[編集]- 内田亨監修『学生版 日本動物図鑑』北隆館 ISBN 4-8326-0042-7
- 檜山義夫監修『野外観察図鑑4 魚』改訂版 旺文社 ISBN 4-01-072424-2
- 永岡書店編集部『釣った魚が必ずわかるカラー図鑑』ISBN 4-522-21372-7
- 藍澤正宏ほか『新装版 詳細図鑑 さかなの見分け方』講談社 ISBN 4-06-211280-9
- 岡村収・尼岡邦夫監修 山渓カラー名鑑『日本の海水魚』(アイゴ科解説:山下慎吾)山と渓谷社 ISBN 4-635-09027-2
- 蒲原稔治著・岡村収補『魚』保育社 エコロン自然シリーズ 1966年初版・1996年改訂 ISBN 4-586-32109-1
関連項目
[編集]- スク水揚げ:スク(アイゴの沖縄における呼び方)の水揚げに関するインターネットミーム
外部リンク
[編集]- Siganus fuscescens- Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2008.FishBase. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version(09/2008)
- 山田秀秋、桐山隆哉、吉村拓「アイゴの初期生態の南北差」『日本水産工学会誌』43巻 (2006) 1号 pp.35-39, doi:10.18903/fisheng.43.1_35
- 我那覇ゆりか、田原美和、森山克子「沖縄県中南部における伝承したい家庭料理 (2)」『日本調理科学会大会研究発表要旨集』平成26年度(一社)日本調理科学会大会, doi:10.11402/ajscs.26.0_166
- 『アイゴ』 - コトバンク