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テン

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テン
テン
テン Martes melampus
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
: イタチ科 Mustelidae
: テン属 Martes
: テン M. melampus
学名
Martes melampus (Wagner, 1840)[2]
和名
テン[3]
ニホンテン[4]
英名
Japanese marten[3]
Yellow marten[3]

テン(貂[5]、黄鼬[5]Martes melampus)は、哺乳綱食肉目イタチ科テン属に分類される食肉類。標準和名ニホンテン[4]

分布

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日本固有種と考えられている[6]。後述するように朝鮮半島での記録があるが[3]、標本の信頼性は疑わしいとする説もある[6]

形態

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体長(頭胴長)44–55センチメートル[7]。尾長17–23センチメートル[8][7]体重0.9–1.5キログラム[7]

分類

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本種やアメリカテンクロテンマツテンを1種にまとめる説もある[8]。これらの4種は全北区テン類と呼ばれ、近縁であるムナジロテンとともに真正テン類としてまとめられる[6]

3亜種に分けられるが、亜種コウライテンは捕獲例が2例あるのみ[9][10]

Martes melampus melampus (Wagner, 1840) ホンドテン Japanese marten
日本本州四国九州[11][8][7][9]固有亜種。北海道佐渡島へ移入[11][9]
夏季は毛衣が赤褐色や暗褐色で、顔や四肢の毛衣は黒、喉から胸部が橙色、尾の先端が白い(夏毛)[7]。冬毛は毛衣が赤褐色や暗褐色で頭部が灰白色(スステン)か、毛衣が黄色や黄褐色で頭部が白い(キテン)[7]
スステンM. m. bedfordi Thomas, 1905はシノニムとされる[6]
Martes melampus tsuensis (Thomas, 1897) ツシマテン Tsusima marten
日本(対馬[11][7][12]固有亜種[9]
喉から胸部に不規則な黒い斑紋が入る[7][12][9]。夏毛は毛衣が褐色で、頭部や顔は濃褐色、喉から胸部が赤や赤褐色、黄褐色、四肢は黒い[7][12][9]。冬毛は毛衣が褐色、頭部が汚白色、顔や四肢は黒褐色、喉から胸部が淡褐色や黄褐色[7][12][9]
Martes melampus coreensis Kuroda & Mori, 1923 コウライテンコウライキテン Korean marten
朝鮮半島(?)[8][7][9]
模式産地は大韓民国忠清南道天安市[10]
冬毛は毛衣が黄色で、頭部の白色部が後頭部に達する[7]
原記載に用いられた2標本のうち模式標本は1945年に空襲で焼失したと考えられており、参考標本は1923年に英国自然史博物館に所蔵されている[10]
原記載以外での本亜種の記録は、韓国(1957年)での1例を除いて1960年代に北朝鮮から報告されている[13]

生態

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神奈川県・丹沢で撮影(2007年)

低山地から亜高山帯針葉樹林にかけて生息する[7][14]。単独で生活する[11]。亜種ツシマテンは70ヘクタールの行動圏内で生活する[11]。岩の隙間や樹洞を巣にする[7]

陸上生態系では上位に位置[14]。食性は雑食で、昆虫甲殻類、小型哺乳類、鳥類爬虫類両生類果実マタタビヤマグワなど)などを食べる[11][7][9]

繁殖形態は胎生。夏季に交尾を行う[11]。4-5月に樹洞内の巣で1回に2-4頭(亜種ツシマテンは1回に1-2頭の幼獣を産むと考えられている[12][9])の幼獣を産む[11]

人間との関係

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亜種ツシマテンは開発による生息地の破壊、交通事故、ノイヌや猟犬による捕食などにより生息数が減少していると考えられている[12][9]。肉は美味であるとされる。日本では1971年に亜種ツシマテンが国の天然記念物に指定されている[15]

M. m. tsuensis ツシマテン
準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト[11][15]

伝承

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鳥山石燕画図百鬼夜行』より「鼬」(てん)
妖怪
三重県伊賀地方では「狐七化け、狸八化け、貂九化け」といい、テンはキツネタヌキを上回る変化能力を持つという伝承がある。秋田県石川県では目の前をテンが横切ると縁起が悪いといい(イタチにも同様の伝承がある)、広島県ではテンを殺すと火難に遭うという。福島県ではテンはヘコ、フチカリ、コモノ、ハヤなどと呼ばれ、雪崩による死亡者が化けたものといわれた[16]
鳥山石燕妖怪画集『画図百鬼夜行』には「鼬」と題した絵が描かれているが、読みは「いたち」ではなく「てん」であり[17]、イタチが数百歳を経て魔力を持つ妖怪となったものがテンとされている[18]。画図では数匹のテンが梯子上に絡み合って火柱を成しており、このような姿に絡み合ったテンが家のそばに現れると、その家は火災に遭うとして恐れられていた[19]
雷獣の正体として挙げられることもある[20]
その他
奈良県奈良市正倉院に伝来する正倉院宝物には、虹龍(こうりゅう)というテンのミイラがある。ミイラとして納入されたのか、正倉院に侵入してミイラ化したのかも不明だが、足利義満が拝観した伝承があり、この時に雨が降ったため紅龍の検開の時には必ず雨が降るという伝承がある。『満済准后日記』には、足利義教の一行が宝庫で「龍の日干」を観たと記録され、2008年(平成20年)の公開時にも雨が降った[21]
キテンの毛皮は特に優れていて、最高級とされる。そのため、「テン獲りは二人で行くな」ということわざが猟師に伝わっている。高価で売れるので、一方がもう一方を殺しかねないという意味である。

脚注

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  1. ^ Abramov, A.V., Kaneko, Y. & Masuda, R. 2015. Martes melampus. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T41650A45213228. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T41650A45213228.en. Accessed on 22 November 2024.
  2. ^ W. Christopher Wozencraft, “Order Carnivora,” In Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 532-628.
  3. ^ a b c d 斉藤勝・伊東員義・細田孝久・西木秀人 「イタチ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、31-36頁。
  4. ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  5. ^ a b 広辞苑 第5版』、岩波書店
  6. ^ a b c d 佐藤淳・石田浩太朗「日本産テン類の系統地理学的研究」『タクサ:日本動物分類学会誌』第32巻、日本動物分類学会、2012年、13-19頁。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 今泉吉典監修 『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』、東京動物園協会、1991年、33頁。
  8. ^ a b c d 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編『動物大百科1 食肉類』、平凡社、1986年、167頁。
  9. ^ a b c d e f g h i j k 絶滅危惧種情報(動物)- ツシマテン -”. 環境省自然環境局 生物多様性センター. 2010年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月7日閲覧。
  10. ^ a b c 平田逸俊・下稲葉さやか・川田伸一郎「コウライムササビ(Petaurista leucogenys hintoni)とコウライキテン(Martes melampus coreensis)の原記載に用いられた標本の再発見」『哺乳類科学』第57巻 1号、日本哺乳類学会、2017年、111-118頁。
  11. ^ a b c d e f g h i 阿部永監修、阿部永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・前田喜四雄・三浦慎吾・米田政明 『日本の哺乳類【改訂2版】』 東海大学出版会、2008年、80頁。
  12. ^ a b c d e f 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社、2001年、22、142-143頁。
  13. ^ Yeong-Seok Jo, John T. Baccus & John L. Koprowski, “Martes melampus (Wagner, 1841)—Japanese Marten,” Mammals of Korea, Life Science Publishing, 2018, Pages 197–199.
  14. ^ a b 鎌田浩毅『まるごと観察 富士山』誠文堂新光社、2013年、73頁。 
  15. ^ a b ツシマテン”. インターネット自然研究所. 環境省. 2016年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月7日閲覧。
  16. ^ 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、230頁。ISBN 978-4-6203-1428-0
  17. ^ 高田衛監修 稲田篤信・田中直日編 『鳥山石燕 画図百鬼夜行』 国書刊行会、1992年、50頁。ISBN 978-4-336-03386-4
  18. ^ 少年社・中村友紀夫・武田えり子編 『妖怪の本 異界の闇に蠢く百鬼夜行の伝説』 学習研究社〈New sight mook〉、1999年、123頁。ISBN 978-4-05-602048-9
  19. ^ 多田克己 『幻想世界の住人たち IV 日本編』 新紀元社、1990年、249頁。ISBN 978-4-9151-4644-2
  20. ^ 荒俣宏「テン」『普及版 世界大博物図鑑 5 哺乳類』平凡社、2021年(原著1988年)、167頁。
  21. ^ “奈良国立博物館で60回目の「正倉院展」-虹龍展示、伝聞通り雨天に”. 奈良経済新聞. (2008年10月25日). https://nara.keizai.biz/headline/21/ 2024年9月29日閲覧。 

関連項目

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