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カルテル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
談合から転送)

カルテル: Kartell, : cartel)または企業連合きぎょうれんごうとは、企業事業者独占目的で行う価格生産計画・販売地域等の協定を指す。

また、麻薬カルテルも通謀に着目してカルテルと呼んでいる。

この記事では生産活動に関する本来のカルテルについて説明する。

歴史

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中世のカルテルは株仲間ギルドのように呼び方がまちまちだった。

200家族の支配したフランスでは独占に明確な協定を要せず、以心伝心的な協調、つまりアンタント(: entente)が行われた。

法律で規制する観点から似たような協定をカルテルと総称するのは近現代からである。

国際カルテル

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影響が大きかった国際カルテルには次のようなものがある。錫カルテル銅カルテル[注 1]銀カルテル海運アライアンスポイボス・カルテル兵器カルテル無線カルテル通信社カルテルなどは、各国の政治・法律と私的自治の論理によって規制を免れてきた。合成窒素カルテルには遅まきながら日本も参加した。キニーネカルテルは農産物が対象である点で興味深い。

いわゆる鉄鋼カルテルは時代・地域・製品により区別されたものが国連などから多数報告されている。リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー汎ヨーロッパ主義提唱から3年後、1926年にドイツ、フランス、ベルギー、ルクセンブルク、ザール間でEntente internationale de l'acierが結ばれた(ルクセンブルクの歴史#経済問題を参照)。これは欧州石炭鉄鋼共同体の礎となった[1]

カルテルに対する規制

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国際カルテルは必ずしも国益を考えず利益本位で動く。シャーマン法制定に活躍したウェンデル・バージは、国際カルテルを「私的政府」と呼び糾弾した[2]。戦後、日本の財閥解体は「トップのいない企業結合体」を存置する方針となり、財閥が再結集するという結果となった。1953年に独占禁止法を改正してカルテルを一部容認した[3][注 2]。1958年、西ドイツ競争制限禁止法が公布され、日本の公正取引委員会にあたる連邦カルテル庁が発足した。カルテルは原則禁止されたが、多数の例外規定が設けられていた。ドイツには戦前から多様な独占形態が存在した(具体例)。

つくられた抜け道

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西ドイツ競争制限禁止法の原則規定は1条で、2条から8条が例外規定であった。そのうち4条で定める適用除外対象が不況カルテルであり、5条の対象は合理化カルテルであった。1965年と1973年の法改正により新たに専門化カルテルが適用除外となった。5条2項から分離して各年に5a条と5b条が新設されたのである。西ドイツ競争制限禁止法は日本の独占禁止法に影響を与えた。まず西ドイツ競争制限禁止法4条の下地となった草案2条が独禁法旧24条の3へ伝播し不況カルテルを容認した。そして西ドイツ競争制限禁止法5条が独禁法旧24条の4となり合理化カルテルを許容した。

不況カルテル

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不況カルテルとは、字のごとく不況を耐え抜くためのカルテルである。不況カルテルの「不況」とは、景気循環で訪れる不況をいうのか、それとも構造的不況をいうのか問題になる。この点西ドイツ競争制限禁止法草案2条が削除されたのは、両方の不況、特に循環不況においてカルテルを認めていたことが批判されたからである。この意味で日本独禁法の不況カルテル規制は緩く、ニクソン・ショックによる円高不況オイルショックによるコスト高不況の1970年代に造船業やステンレス業界などから多くの申請があり、認可された。西ドイツでは、欧州石炭鉄鋼共同体の緩さを除けば1957年以降、申請数がわずか、認可は皆無であった。1978年3月31日に連邦カルテル庁が判断原則を公表してからは認可されやすくなっていた。

西ドイツで不況カルテルが認可される前提要件は4点あった。まず、カルテルの主体が生産・製造・加工または組立部門(限定列挙)であること。製品の有体物であることまで必要とするかどうかについては、電気その他エネルギーもふくむと解釈された。次に、構造不況のため需要回復の見通しが立たないこと。不況を判断する地域については従来からの販売態様を基準とした。そして、カルテルによる競争制限が、生産能力を需要に計画的に適合させていくのに必要な限度であること。最後に、比較衡量に適っていること。4条で義務となっている設備廃棄計画が、当事者間で合意に達するためにカルテルを必要とする場合などは許される。 以上4点に加え、特に産業部門不況カルテルについては8条2項でLRA 並みの厳格な基準を設けていた。

合理化カルテル

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合理化カルテルとは、字のごとく事業を合理化するためのカルテルである。合理化内容いかんは独禁法で4種類を限定列挙していたので専ら西ドイツの問題であった。第一には経営合理化、つまり費用対効果の改善である。しかし量産化であえて品質を下げるなどというのは駄目で、一応イノベーションが志向された。国民経済は二義的要素であった。そして、合理化カルテルは独禁法で生産業に限定していたが、西ドイツではサービス業に適用できた。かかる合理化カルテルは西ドイツ競争制限禁止法準備段階当初からの基本構想であって、ルール地方のゲオルクなどの取扱いと関係して立法に向けて草案が修正された[5]。そして5条1項の規格統一カルテルは届出さえすれば認可されたから、欧州石炭鉄鋼共同体と同様に輸出先には遠慮がなかった。

規格統一カルテルの最初は19世紀にさかのぼる。メートル条約がその後の発展を基礎づけた。1896年に欧州で国際材料試験協会[注 3]が発足して国際標準化時代が到来した。2年後設立のアメリカ支部はASTMインターナショナルである。このブームに乗って1926年に万国規格統一協会ができた。やがてこれを国際標準化機構が承継した。20世紀初頭には国際電気標準会議国際無線電信連合が並行して発展をとげた。2001年からは世界標準協力英語版が、国際標準化機構、国際電気標準会議、そして国際電気通信連合ITU-Tから、会長・副会長・事務局長等を集めて一層緊密に連携している。最近で国際標準化の俎上に上がっている構想はスマートグリッドブロックチェーンである。

欧州石炭鉄鋼共同体から不況・合理化カルテルまでは系譜としての関係ができている。そして、鉄鋼カルテルの前にリンクを列挙した国際カルテルの中には鉄鋼カルテルと出身地の近いものが幾つか存在している。

規制

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アメリカ合衆国中華人民共和国など多くの国では、国益を損ねるカルテルを防止する法律を運用しており、反トラスト法または独占禁止法といった訳が当てられている[6]

アメリカ

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アメリカでは、アメリカ合衆国司法省が反トラスト法を所管している。

1890年に成立した米国最初のカルテル規制法規であるシャーマン法第1条によれば、シンジケート紳士協定もカルテルとみなされることがある。

また、同法は、ウェッブ・ポメリン法により修正を受けた。

  • ウェッブ・ポメリン法による修正の結果として、1904年にできた板ガラスカルテルに米輸出組合が参加してしまった。
  • アメリカにおける反トラスト法違反の罰金の最高額は、2011年に発表された5億4,800万ドルで、アメリカ向けの自動車用ワイヤーハーネスの価格カルテルを続けていた、日本の矢崎総業デンソーに対して申し渡されたもの。なお同時に矢崎総業の日本人幹部4人が、1年3カ月から2年の禁錮刑を受けることも司法取引で同意されている[7]

日本

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日本法の「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「法」)は、これを不当な取引制限として禁止している(法第3条後段)。

日本では、公正取引委員会が独占禁止法に抵触するカルテルを結んだ事業者等に対して課す金銭的不利益のことを課徴金と呼び、刑事罰の罰金と区別している(結果的に両方が科せられるケースもある)[8]

  • 日本における課徴金の最高額は、2010年に発覚した光ファイバーケーブルの納入をめぐるカルテルで、住友電気工業古河電気工業フジクラらに約160億円の納付が命じられたもの。住友電気工業と古河電気工業は、直近に公正取引委員会から別の課徴金納付命令を受けていた経緯があり、課徴金の割増制度が適用され極めて高額なものとなった[9]
  • 2024年6月、東京海上日動火災保険・損害保険ジャパン・三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社に対して大手私鉄グループ企業との共同保険取引でカルテルを結んでいる疑いから、保険業法に基づく報告徴求命令を各社に発出、公正取引委員会は合わせて20億円余りの課徴金の納付を命じた[10][11]

脚注

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注釈

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  1. ^ 参加者のアナコンダ鉱山会社リオ・ティントはともにロスチャイルド系。
  2. ^ 1951年旧保険業法改正により保険カルテルが独占禁止法の適用除外対象となっていた。
  3. ^ : International Association for Testing and Materials

出典

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  1. ^ fr:Émile Mayrisch#La construction d'une Europe de l'acier も参照
  2. ^ Wendell Berge Cartels: Challenge to a Free World, Public Affairs Press, 1946, p.208.
  3. ^ 平林英勝 日本的独占禁止法の形成と丸山泰男 あるリベラリスト学者官僚の軌跡 2009年
  4. ^ 欧州委員会 Competition: Commission fines members of gas insulated switchgear cartel over 750 million euros Brussels, 24th January 2007
  5. ^ 競争制限という社会的コストが合理化で望める成果に見合うこと(5条2項)、価格協定に基づく共同販売・購入であること(5条3項)
  6. ^ “中国が農産物価格操作取り締まる方針、反トラスト法違反の調査拡大へ”. ロイター (ロイター通信社). (2013年12月16日). https://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE9BF04E20131216/ 2014年5月7日閲覧。 
  7. ^ “矢崎総業に罰金360億円 米でカルテル、幹部禁錮刑”. 日本経済新聞社. (2012年1月31日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM31019_R30C12A1MM0000/ 2014年5月7日閲覧。 
  8. ^ “課徴金制度”. 公正取引委員会 (公正取引委員会). https://www.jftc.go.jp/dk/seido/katyokin.html 2014年5月7日閲覧。 
  9. ^ “「平成最大の公共事業」光ファイバー網を食い物に…“3強連合”主導で600億円を山分け”. 産経新聞. (2010年6月5日). https://web.archive.org/web/20110125145706/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110121/crm11012112590206-n1.htm 2014年5月7日閲覧。 
  10. ^ 大手損保4社が企業向け保険でカルテルの疑い 取引実態の解明に向けて金融庁が報告命令 | 金融業界 | 東洋経済オンライン”. 東洋経済新報社. 2024年12月17日閲覧。
  11. ^ 損保大手4社のカルテル・談合9件認定、20億円課徴金命令 公取委:朝日新聞デジタル”. 株式会社朝日新聞社. 2024年12月17日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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