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マンガ図書館Z

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
絶版マンガ図書館から転送)
株式会社Jコミックテラス
J-Comic Terrace Corporation
企業形態 株式会社
設立 2015年6月16日
本社 日本の旗 日本
東京都品川区東五反田二丁目5番9号 島津山PREX 6階
事業地域 日本の旗 日本
主要人物 赤松健(取締役兼株主)
乙川庸之(代表取締役)[1][2]
森田浩章(取締役)
ウェブサイト マンガ図書館Z
種類 電子書籍配信サービス
登録 必要
対応言語 日本語
開設 2010年11月26日(Jコミ仮公開)
2011年4月12日(Jコミ正式公開)
2014年7月11日(絶版マンガ図書館に名称変更)
2015年8月3日(マンガ図書館Zに名称変更)
現況 2024年11月26日サイト停止[3]

マンガ図書館Z(マンガとしょかんゼット)は、漫画配信を行っていた日本のウェブサイト。主に絶版となった日本の漫画広告付きの電子書籍無料で提供していた[4]

2011年に「Jコミ」の名称で開設、2014年に「絶版マンガ図書館」への改称を経て、2015年に「マンガ図書館Z」に改称された。2024年11月26日にサイトの運営を停止した[4][3]。2025年1月16日、サイト再開に向けての活動を開始しクラウドファンディングを行う予定である旨が告知された[5]

漫画家参議院議員赤松健らが率いる株式会社Jコミックテラス英語: J-Comic Terrace Corporation)により運営されていた[6]

青年漫画女性漫画から、アダルト漫画ティーンズラブボーイズラブまで幅広いジャンルを取り扱っていた。

概要

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作者の了解を得て広告を挿入した形で絶版作品を公開し、広告収入を作者に還元することを目的としていた[7]。仮公開時には赤松健の漫画『ラブひな』全14巻が公開された[8]。絶版作品とは謳われているものの、単行本未収録の読み切りやそれらを独自にまとめたオリジナルの短編集の他、既に連載終了された作品の続編も公開されていた。

また、他社から提供された漫画作品も公開されていた。

なお、紙メディアや他版元の電子書籍で復刻が決まった作品は公開停止[9]になった他、著作者の裁量で掲載を取り下げた作品も存在した。

これらの作品はブラウザやアプリを通じて誰でも無料で読む事ができた。ただし成人向け作品は有料会員のみ閲覧可能で、それ以外は僅かのページしか読む事ができない。無料会員になることでオフィシャルとして登録された作品をPDFファイルとして購入、保有する事ができた[注 1][注 2]

正式公開に先立ち「Jコミを応援してくれるフェロー(仲間)」の第一期生20人の募集が行われ[10]、最終的に20倍弱の応募倍率となったため急遽人数を増やして40人を当選とし、当選者には階級章バッジと赤松健のサイン入り仮契約カードが配られた[11]。フェローは会費無料で、義務は特にないとされている[10]

仕組み

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ZIP書庫形式ファイルとしてまとめられた書籍のJPEGファイルがJコミにアップロードされると、自動的に解凍されスタッフの確認を経てから広告を挿入してPDF形式として無料公開される仕組みであった[12]。PDFファイルは高解像度と低解像度の2種類が用意されている[8]。2011年4月12日の正式公開以降はPDFの配信は一時中止されており、オンラインビューアーでのみの公開となっていた。今後はオンラインビューアーで多く読まれた漫画上位3作品をPDF化する計画であると発表されていた[13]。読者によってクリックされた広告の収入は全額作者に還元され[7]、会社の運営費用はウェブサイトのトップページの広告収入で賄うとしていた[14]。PDFファイルには著作権保護のプロテクトなどは組み込まれておらず自由にコピーできたが、広告を外すことは不可能となっており、「ユーザーの間で相互にコピーされることによって無限に広告が拡散する」というビジネスモデルの構築を目標としていた。自前でサーバを持たずAmazon EC2を利用していた[15]

オンラインビューアーの愛称はVersion3が『サイボーグ009』の003フランソワーズ・アルヌールに因んだ「アルヌール」[16]、Version4が『機動戦士Ζガンダム』のフォウ・ムラサメに因んだ「ムラサメ」とされていた[17]

取組み

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社会問題にまで発展した、主にインターネット上で氾濫する海賊版漫画に対抗すべく、様々な取組みを行っていた。

実証実験として実業之日本社と連携し、同社から出版・掲載された漫画や文芸書のデジタルデータの提供が2018年8月から2019年7月まで行われていた[18]。実際にアップロードされ、出版社及び著作者から許諾を受けた作品の中で著作権切れの書籍に関してはパブリックドメイン作品として閲覧可能となっているものもあった。

また、漫画家の活動支援の一環として、月一で対象となる作者の公開作品を一挙にまとめたものを加え、画集や作品のネームなどが加えられた限定商品や購入者による好きな作者のキャラクターを描いてもらえる権利や作者との飲み会等に参加出来る権利などの販売が行われていた他、作者描き下ろしの年賀状を販売する作者応援キャンペーンも行われていた[19]ヤフオク!のreU fundingを通じ、Zオフィシャル作家の作品に関連したオークションを度々開催していた。

沿革

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  • 2008年1月25日 - 赤松健が株式会社Jコミが設立。
  • 2010年11月26日 - Jコミが仮公開[8]
  • 2011年4月12日 - Jコミが正式公開。
  • 2014年7月11日 - ウェブサイト名を絶版マンガ図書館に変更[20]
  • 2015年
    • 6月16日 - ヤフー子会社の株式会社GYAO赤松健と共同出資で株式会社Jコミックテラスを設立してウェブサイトの運営を引き継ぐ[21]
    • 8月3日 - ウェブサイト名をマンガ図書館Zに変更[22]
    • 12月1日 - 電子コミックアプリ「ハートコミックス」に関わる事業をSBイノベンチャー株式会社から発展的に引き継ぐ。
  • 2016年4月26日 - 電子コミックアプリ「ハートコミックス」のアップデートによりスマートフォン向け電子コミックアプリ「マンガ図書館Z」を開始[23]
  • 2018年7月10日 - 株主変更により株式会社Jコミックテラスが株式会社メディアドゥホールディングスの子会社となる。追加出資により株式会社講談社が資本参加[24]
  • 2023年5月 - 株主変更により株式会社JコミックテラスがINCLUSIVE子会社・株式会社ナンバーナインの子会社となる[25]
  • 2024年
    • 11月5日 - 公式ページにて同年11月26日をもってサイトを停止することが発表された。理由として「決済代行会社と協議したが、カード会社の判断によるものであり、当社では覆すことのできない状況だった」としている[26][27]
    • 11月26日 - サイト停止[3][4]。公式ウェブサイトは「再始動に向け、様々な検討を行っております」[3][4]としている。
  • 2025年
    • 1月16日 - サイト再開に向けての活動を開始しクラウドファンディングを行う予定である旨告知がされた[5]
    • 2月5日 - 「『マンガ図書館Zは帰って来る!』サイト再始動プロジェクト」が、クラウドファンディングプラットフォームのMotion Galleryで開始された[28]。開始から約1日で目標金額の300万円を達成した[29]
    • 3月26日 - マンガ図書館Zを4月25日の正午に再開することが発表された[30]

脚注

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注記

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  1. ^ 作者の意向でPDF販売を行っていない作品もあり、Zオフィシャル作家の著作であっても他社からの提携作品や自身が発表した投稿作品はPDFファイルでの販売は行われていなかった。
  2. ^ ファイルの画像(3頁目と最終頁)には、サイトの作品であることと、購入者のアドレスが印字されていた。

出典

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  1. ^ 乙川庸之 (2025年1月10日). “『ラブひな』作者のマンガ図書館Z 唐突な決済代行停止でサイト閉鎖”. 日経ビジネス. 2025年4月2日閲覧。
  2. ^ しげる (2025年3月26日). “知る人ぞ知るマンガを世に送り出すーー『マンガ図書館Z』爆速で再始動の背景は?”. Real Sound. 2025年4月2日閲覧。
  3. ^ a b c d マンガ図書館Zは11月26日にサイトを停止いたしました”. マンガ図書館Z. 株式会社Jコミックテラス (2024年11月26日). 2024年11月26日閲覧。
  4. ^ a b c d 「マンガ図書館Z」サイト停止も……「I'll be back!」”. ITmedia NEWS (2024年11月26日). 2024年11月26日閲覧。
  5. ^ a b マンガ図書館Zは11月26日にサイトを停止いたしました。が……”. マンガ図書館Z. 株式会社Jコミックテラス (2024年1月16日). 2025年1月29日閲覧。
  6. ^ 運営会社”. Jコミ. 2021年12月16日閲覧。
  7. ^ a b 読者の皆様へ”. 絶版マンガ図書館. 株式会社Jコミ. 2014年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月23日閲覧。
  8. ^ a b c “「ラブひな」無料配信スタート パンツや“ヤバゲー”の広告入り”. ITmedia. (2010年11月26日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1011/26/news058.html 2010年12月4日閲覧。 
  9. ^ 河内実加Twitterアカウントのツイートより
  10. ^ a b (17) Jコミを応援してくれるフェロー(仲間)を20名募集!
  11. ^ Jコミ・フェローの第一期生が決定
  12. ^ 赤松健 (2010年11月15日). “(6) 無料化「ラブひな」で、どのくらいの効果か調べよう!”. (株)Jコミの中の人. 2010年12月4日閲覧。
  13. ^ リリース第1号!『プレイヤーは眠れない』(全一巻)を無料公開 - (株)Jコミの中の人 そこでJコミでは、アルヌールで読まれた人気上位作品から、順次PDF化していくことを計画しております。
  14. ^ 【 FAQ (よくある質問) 】”. (株)Jコミの中の人 (2010年11月18日). 2010年12月4日閲覧。 “A.TOPページの広告で凌ぎたいと思います。”
  15. ^ 導入事例(Jコミ) - cloudpack(クラウドパック)Amazon EC2などクラウドの導入設計、運用・保守サービス
  16. ^ (15) 新型コミックビューワーV3について、ご意見を!”. (株)Jコミの中の人 (2011年2月24日). 2015年6月1日閲覧。 “コードネームは「Arnoul(アルヌール)」です。(Jコミの技術部長が命名しましたが、名前の由来が分かる人います?)”
  17. ^ (26) 今月は、画期的コミックビューワーV4「ムラサメ」が登場!”. (株)Jコミの中の人 (2011年7月1日). 2015年6月1日閲覧。 “V3は「フランソワーズ・アルヌール」(サイボーグ003)から取ったので、V4はやっぱり「フォウ・ムラサメ」(Ζガンダム)から取るしかないでしょう!(笑)”
  18. ^ 実証実験その1「出版社と組んで、海賊版の投稿システムを合法化しよう」 http://d.hatena.ne.jp/KenAkamatsu/20180806
  19. ^ 年賀状が届くキャンペーン実施中!”. マンガ図書館Z. 2018年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年11月27日閲覧。
  20. ^ 岡田有花 (2014年7月10日). “「漫画版YouTubeを」――読者が漫画ファイルをアップ、作者の許可得て無料公開 Jコミ「絶版マンガ図書館」で海賊版を撃滅へ”. ITmediaニュース. https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1407/10/news099.html 2014年7月10日閲覧。 
  21. ^ GYAOと漫画家赤松健、新会社Jコミックテラスを設立 無料電子コミックサービス「マンガ図書館Z」を提供開始』(プレスリリース)GYAO、2015年8月3日。オリジナルの2015年8月4日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20150804175337/http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000008260.html2023年3月27日閲覧 
  22. ^ 西尾泰三 (2015年8月3日). “赤松健さんとGYAOが無料マンガ配信に新たな一手 「マンガ図書館Z」始まる”. ITmediaニュース. https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1508/03/news109.html 2015年8月3日閲覧。 
  23. ^ 絶版マンガを無料で読める「マンガ図書館Z」スマホ向けアプリをリリース”. コミックナタリー. ナターシャ (2016年4月26日). 2023年6月2日閲覧。
  24. ^ 「マンガ図書館Z」運営のJコミックテラス、メディアドゥ子会社に”. ITmedia NEWS (2018年7月10日). 2023年3月27日閲覧。
  25. ^ INCLUSIVE<7078>、メディアドゥ<3678>傘下で電子書籍配信サイト「マンガ図書館Z」運営のJコミックテラスを子会社化”. M&A Online (2023年3月27日). 2023年3月27日閲覧。
  26. ^ 『マンガ図書館Z』サイト停止へ 前身の『Jコミ』含め約14年間「本当にありがとうございました」”. ORICON NEWS. oricon ME (2024年11月5日). 2024年11月5日閲覧。
  27. ^ 絶版マンガ配信サイト「マンガ図書館Z」停止へ クレカ会社による決済サービス解除で”. ITmedia NEWS (2024年11月5日). 2024年11月5日閲覧。
  28. ^ 石井聡 (2025年2月5日). “「マンガ図書館Z」再開に向けたクラウドファンディングがスタート。目標は300万円”. MANGA Watch. 2025年2月8日閲覧。
  29. ^ tks24 (2025年2月6日). “「マンガ図書館Z」の再始動クラウドファンディング、わずか1日で目標額達成”. INTERNET Watch. 2025年2月8日閲覧。
  30. ^ 「マンガ図書館Z」の再開日時が決定 クラファンは残り6日”. ITmedia News (2025年3月26日). 2025年4月2日閲覧。

外部リンク

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