輝石
輝石(きせき、pyroxene、パイロキシン)は、ケイ酸塩鉱物の一種。多くの火成岩や変成岩に含まれる代表的な造岩鉱物。
色は無色・緑色・褐色・黒色などで、ガラス光沢を持つ。自形結晶は短柱状。二方向の劈開が顕著。角閃石によく似るが、劈開の交わる角度(約90°)により区別される。
基本的な化学組成は XY(Si,Al)2O6 (ただし、X はCa、Na、Fe2+、Zn、Mn、Mg、Li、Y はCr、Al、Fe3+、Mg、Mn、Sc、Ti、V、Fe2+)で表される。
結晶系により、直方(斜方)輝石(ちょくほうきせき、orthopyroxene、直方晶系(斜方輝石))および単斜輝石(たんしゃきせき、clinopyroxene、単斜晶系)の2つに分類され、さらに上記の化学組成により細かく分類される。
英語: pyroxeneは、19世紀に火成岩中に見出された当初に、石英とは異なる異物質としてギリシャ語で「pyro-(火の、火成岩中の)」「xenon(おかしな異物)、キセノンの語源と同義」とよんだことによる[1]。
輝石の種類
[編集]1988年、国際鉱物学連合(IMA)の輝石命名の小委員会により、輝石の分類と命名が整理された。21種が輝石の独立種とされ、そのうち13種が固溶体の端成分として用いられる。これらのうち、普通に見られるのは、Ca-Mg-Fe輝石8種(1-5、8-10)、Ca-NaおよびNa輝石4種(15-18)である。
I. Mg-Fe輝石
- 1. 頑火輝石(Enstatite、エンスタタイト)(En) : Mg2Si2O6
- 2. 鉄珪輝石(Ferrosilite、フェロシライト)(Fs) : Fe2+
2Si2O6 - 3. 単斜頑火輝石(Clinoenstatite、単斜エンスタタイト)
- 4. 単斜鉄珪輝石(Clinoferrosilite、単斜フェロシライト)
- 5. ピジョン輝石(Pigeonite) : (Mg,Fe,Ca)2Si2O6
II. Mn-Mg輝石
III. Ca輝石
- 8. 透輝石(Diopside)(Di) : CaMgSi2O6
- 9. 灰鉄輝石(Hedenbergite、ヘデンバージャイト)(Hd) : CaFe2+Si2O6
- 10 普通輝石(Augite、オージャイト) : (Ca,Mg,Fe)2Si2O6
- 11. ヨハンセン輝石(Johannsenite、ヨハンセナイト)(Jo) : CaMnSi2O6
- 12. ピタダナイト(Petedunnite)(Pe) : CaZnSi2O6
- 13. エシネアイト(Esseneite)(Es) : CaFe3+AlSiO6
- 14. デイビス輝石(Davisite) : CaScAlSiO6
IV. Ca-Na輝石
- 15. オンファス輝石(Omphacite、オンファサイト)
- 16. エジリン普通輝石(Aegirine-augite、エジリン-オージャイト) : (Ca,Na)(Mg,Fe2+,Al,Fe3+)Si2O6
V. Na輝石
- 17. ひすい輝石(Jadeite、ジェイダイト)(Jd) : NaAlSi2O6
- 18: エジリン輝石(Aegirine、エジリン、錐輝石)(Ae) : NaFe3+Si2O6
- 19. コスモクロア輝石(Kosmochlor、コスモクロア)(Ko) : NaCr3+Si2O6
- 20. ジャービス輝石(Jervisite、ジャービサイト)(Je) : NaSc3+Si2O6
VI. Li輝石
- 21. リシア輝石(Spodumene、スポジュメン)(Sp) : LiAlSi2O6
その後、次の輝石が発見された。
- ナマンシル輝石(Namansilite) : NaMn3+Si2O6
- ナタリー輝石(Natalyite) : Na(V3+,Cr3+)Si2O6
- グロスマン輝石(Grossmanite) : CaTi3+AlSiO6
- 久城輝石(Kushiroite) : : CaAlAlSiO6
廃棄された輝石名
[編集]使われなくなった輝石名には次のようなものがある。
- ウルバン輝石(Urbanite) : マンガンと鉄に富む普通輝石あるいはエジリン普通輝石。
- 古銅輝石(Bronzite) : 含鉄頑火輝石。
- サーラ輝石(Salite) : 含鉄透輝石。
- シェッフェル輝石(Schefferite) : 含マンガンサーラ輝石あるいはマンガンエジリン輝石。
- 紫蘇輝石(Hypersthene) : 頑火輝石もしくは鉄珪輝石。
- チタン輝石(Titanaugite) : 含チタン普通輝石。
- 鉄サーラ輝石(Ferrosalite) : マグネシウムに富む灰鉄輝石。
- ファッサ輝石(Fassaite) : 第二鉄およびアルミニウムに富む透輝石または普通輝石。
輝岩
[編集]主に輝石からなる完晶質粗粒な超苦鉄質火成岩を輝岩(pyroxenite)という[2]。
脚注
[編集]- ^ goo辞書「pyroxene」
- ^ “地質関係 岩石”. 鹿児島県. 2020年8月18日閲覧。
参考文献
[編集]- N. Morimoto et al., "Nomenclature of pyroxenes," Mineralogical Journal, Vol. 14, No. 5, pp. 198-221, 1989. PDF
- 森本信男 『造岩鉱物学』 東京大学出版会、1989年、ISBN 4-13-062123-8。
- 松原聰・宮脇律郎 『国立科学博物館叢書5 日本産鉱物型録』 東海大学出版会、2006年、ISBN 978-4-486-03157-4。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Pyroxene Group(mindat.org)