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左官

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左官職人から転送)
中国北京の左官職人

左官(さかん)とは、建物土塀などを、こてを使って塗り仕上げる仕事、またそれを専門とする職人のこと。「しゃかん」ともいう[1]。 2020年「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産に登録され、この中に「左官(日本壁)」が含まれている[2]国家資格として左官技能士があるが、業務独占資格ではないので、左官としての従事に資格等の取得は必須ではない。「官」と付くが公務員ではなく、これは歴史的背景に由来するものである。

概説

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イギリスの左官職人

石灰自然繊維などを組み合わせた自然素材からなる塗り壁(または吹き付け壁)を左官壁という[3]。左官壁に使う素材を左官材料という。

左官壁の代表例に漆喰壁がある。また、漆喰壁のように仕上げることができるよう鉱物質の粉末と水を練り合わせたプラスターや、生石灰と水を練り合わせた生石灰クリームなどもある[3]。このほか樹脂リシン壁や聚楽壁(じゅらくへき)のように吹き付けを用いながら塗り壁のような風合いに仕上げるものもある[3]

左官工事には(こて)を使うが、西洋では主に四角形で大型なのに対し、日本では主に剣先タイプのものが使用される[3]

左官壁の利点としては、多様な仕上げができること(光沢のある磨き仕上げやこて跡を残したラフな仕上げ等)、室内の調湿効果や脱臭効果が期待できることが挙げられる[3]。また、左官材料を塗り重ねることにより断熱効果や保温効果も期待できる[3]

左官壁の欠点は、施工及びその後の乾燥に手間と時間がかかることや、職人の技術の差が仕上がりに大きく影響することなどがある[3]。気候や建物壁面の下地の状態によっては左官壁に向かない場合もある[3]

日本建築における左官

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日本は雨の多い気候であることから、特に日本建築では湿気の調節のために土壁漆喰の組み合わせが畳とともに重要な役割を果たしている[3]

日本家屋の壁は、などを格子状に編んだ小舞下地(こまいしたじ)の両面に、(わら)を混ぜたを塗り重ねる土壁、消石灰等の繊維でつくった漆喰が用いられるが、それらの仕上げに欠かせない職種であり、また、かつては土蔵の外壁やこて絵など、技術を芸術的領域にまで昇華させる入江長八などの職人も現れた。

明治以降に洋風建築が登場すると、ラス煉瓦そしてコンクリートモルタルを塗って仕上げるようになり、日本建築以外にも活躍の場が広がる。

昭和30年代 - 40年代の高度経済成長期には、鉄筋コンクリート構造(RC構造)の建物が大量に造られ、多くの左官職人が必要とされた。戸建住宅においても、当時の内壁は綿壁や繊維壁の塗り壁仕上げが多かった。またこの頃から浴室タイル貼りなども行うようになったほか、基礎工事、コンクリートブロック積み、コンクリート打設(打込み)時の均しなど仕事内容も多様化していった。

しかし、その後、住宅様式の変化や建設工期の短縮化(左官が使う材料である土・漆喰・モルタルは、一般的に乾燥・硬化に時間が掛かる)の流れから、壁の仕上げには塗装クロス等が増え、サイディングパネルや石膏ボードなど、建材の乾式化が進んだ。また、ビルマンション工事では、コンクリートにモルタルを厚く塗らない工法に変わったことや、プレキャストコンクリート工法(工場であらかじめコンクリート製品を製作した後、現場へ運搬し設置する工法)の増加 等の要因により、塗り壁や左官工事が急速に減少、職人数も減り続けていた。

最近になり、漆喰珪藻土等の天然素材を使用した壁が見直されると共に、手仕事による仕上げの多様性や味わいを持つ、左官仕上げの良さが再認識されてきている。特に「和モダン」と呼ばれる、日本らしさと欧米のモダンスタイルを併せ持つ建築には、多彩な左官仕上げが使われることが多い。

左官を大別すると、戸建住宅や寺社工事を専門とするものと、ビルやマンション工事を得意とするものに分けられる。後者の中からは近年、床仕上げ専門職(床下地のモルタル仕上げや床コンクリート直仕上げ等を行う)も現れている。

仕上げ方法

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掻落し(かきおとし)

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左官工事の仕上げ方法のひとつ。英語:scratching[4]。モルタル仕上げなどの表面がほぼ硬くなったところを、こて、金串、ブラシなどで表面をむらなく掻き落とし、粗面に仕上げるもの[4]掻落し粗面仕上げともいう[4]

歴史

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浮世絵に描かれた左官(上)

「左官」の語源は、宮中の営繕を行う職人に、土木部門を司る木工寮の属(さかん、四等官主典)として出入りを許したことから(『日本国語大辞典』他)というものが巷間に広く知られているが、建久元年(1190年)十月に東大寺の再建大仏殿棟上のときに大工そのほかの職人が官位を受領しているが、そのとき壁塗が左官となったこと(『玉葉』)に基づいたものとする説(『国史大辞典』)もある。一方で、実際に「左官」として使われだしたのは桃山時代からという説[5]もある。「沙官・沙翫」と表記されていたこともある。建築の「木」に関わる職を「右官」と呼んでいた説もある。

左官専門の職業能力開発校

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左官専門職業訓練認定職業訓練として行う職業能力開発校の例を以下に示す。その他は左官科建築関係の認定職業訓練施設一覧を参照。

  • 旭川左官高等職業訓練校(北海道旭川市
  • 札幌左官高等職業訓練校(北海道札幌市
  • 有川工業株式会社有川工業訓練校(埼玉県新座市
  • 米田左官技術専修職業訓練校(東京都練馬区
  • 呉西左官高等職業訓練校(富山県高岡市
  • 富山県左官高等職業訓練校(富山県左官事業協同組合)
  • 株式会社イスルギ石川県知事認可事業所内職業訓練校
  • 愛知県左官高等職業訓練校(愛知県左官業協同組合)
  • 福知山左官高等職業訓練校(京都府福知山市
  • 京都府左官技能専修学院(京都府)
  • 京都府左官工業協同組合京都左官職業訓練校(京都府)
  • 鳥取県左官業協同組合鳥取県左官高等職業訓練校(鳥取県鳥取市
  • 下野工業高等職業訓練校(山口県岩国市
  • 上内工業株式会社上内左官高等職業訓練校(熊本県
  • オオタ左官訓練センター(熊本県)
  • 永野工業能力開発研修センター(熊本県)
  • 宮崎高等技術専門校(宮崎県宮崎市
  • 大平工務店高等職業訓練校(鹿児島県

資格

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その他

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脚注

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  1. ^ 語源由来辞典
  2. ^ 「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」のユネスコ無形文化遺産登録(代表一覧表記載)について”. 文化庁 (2020年12月17日). 2021年6月5日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i 間宮良行『家を建てる前に読む住まいの仕組み事典』西東社、2013年、149頁
  4. ^ a b c 渡辺優『図解インテリア・ワードブック』建築資料研究社、1996年。 
  5. ^ 現代建築職人事典編集委員会「左官」『現代建築職人事典』工業調査会,p131

参考文献

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  • 浅井賢治 他「左官「超実用」テクニック読本」『月刊「建築知識」』2001年9月号増刊,エクスナレッジ
  • 現代建築職人事典編集委員会「左官」『現代建築職人事典』工業調査会,pp131~139,ISBN 4-7693-3061-8

関連項目

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外部リンク

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