数学における多重ガンマ関数(たじゅうガンマかんすう、英: multiple gamma function)
はオイラーのガンマ関数とバーンズのG函数の一般化である。二重ガンマ関数は Barnes (1901) において導入された。同論文の締めくくりにおいて多重ガンマ関数の存在性が示唆され、実際に Barnes (1904) においてさらなる研究が行われた。
二重ガンマ関数
はq-ガンマ関数(英語版)と、三重ガンマ関数
は楕円ガンマ関数(英語版)とそれぞれ密接な関係がある。
において、

として多重ガンマ関数を定める。ここで
はバーンズのゼータ函数である(バーンズによるオリジナルの定義からは定数倍のズレが有る)。
の有理型関数として見たとき、
は零点を持たず、
に一位の極を持つ(ここで
は非負整数)。exp(多項式)という因子を除いて、
はこれら有限位数の零点と極を持つ唯一の有理型関数である。
N=0,1 での例を挙げる:


以下は多重ガンマ関数の周期性と呼ばれる性質であり、通常のガンマ関数における関係式 Γ(x+1)=xΓ(x) の一般化であるといえる。

多重ガンマ関数はヴァイエルシュトラス型の無限積表示を持ち、有理型関数である様子がはっきりと見て取れる。また、この表示からは極のありかも一目瞭然である。 二重ガンマ関数の場合は以下のようになる: [1]

ここで、
は
と独立な係数


であり、
は
における位数
の留数である。
また、上記のものとは別に新谷型と呼ばれる無限積表示も Katayama & Ohtsuki (1998) において発見されている。
通常のガンマ関数におけるスターリングの公式の類似として、多重ガンマ関数にも漸近表示が存在する:

この表示は Katayama & Ohtsuki (1998) において示された。
多重ガンマ関数の定義は所謂ゼータ函数正規化の発想によるものである。ミルナーの深い正規積を用いて多重ガンマ関数を一般化したものを一般正規多重ガンマ関数という:

一般正規多重ガンマ関数に対しては、オイラー=ルジャンドルの倍角公式およびラーベの公式の一般化が発見されている。
,
において、函数

は変換
のもとで不変であり、関係式

を満たす。また、
において積分表示
![{\displaystyle \log \Gamma _{b}(w)=\int _{0}^{\infty }{\frac {dt}{t}}\left[{\frac {e^{-wt}-e^{-{\frac {Q}{2}}t}}{(1-e^{-bt})(1-e^{-b^{-1}t})}}-{\frac {\left({\frac {Q}{2}}-w\right)^{2}}{2}}e^{-t}-{\frac {{\frac {Q}{2}}-w}{t}}\right]\ .}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/d5d6dd66b08ad191b07aebe164e187d85f997071)
を満たす。
から二つの関数を構成する:

これは関係式

とこれらを
とした別の関係式を満たす。また、
における積分表示も存在する:
![{\displaystyle \log S_{b}(w)=\int _{0}^{\infty }{\frac {dt}{t}}\left[{\frac {\sinh \left({\frac {Q}{2}}-w\right)t}{2\sinh \left({\frac {1}{2}}bt\right)\sinh \left({\frac {1}{2}}b^{-1}t\right)}}-{\frac {Q-2w}{t}}\right]\ ,}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/51f56f13639f71e532a44af524717103306d57bd)
![{\displaystyle \log \Upsilon _{b}(w)=\int _{0}^{\infty }{\frac {dt}{t}}\left[\left({\frac {Q}{2}}-w\right)^{2}e^{-t}-{\frac {\sinh ^{2}{\frac {1}{2}}\left({\frac {Q}{2}}-w\right)t}{\sinh \left({\frac {1}{2}}bt\right)\sinh \left({\frac {1}{2}}b^{-1}t\right)}}\right]\ .}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/bd97cc7b34cc7565f9396265a4d91f58504cce72)
函数
は二次元共形場理論の相関関数にあらわれ、パラメータ
はヴィラソロ代数の中心電荷と関係している[2]。とくに、リウヴィル場理論 における3点相関関数は
で書ける。
- Barnes, E. W. (1901), “The Theory of the Double Gamma Function”, Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series A, Containing Papers of a Mathematical or Physical Character (The Royal Society) 196: 265–387, Bibcode: 1901RSPTA.196..265B, doi:10.1098/rsta.1901.0006, ISSN 0264-3952, JSTOR 90809, https://jstor.org/stable/90809
- Barnes, E. W. (1904), “On the theory of the multiple gamma function”, Trans. Camb. Philos. Soc. 19: 374–425, https://archive.org/details/transactions19camb/page/374/mode/2up
- Katayama, Koji; Ohtsuki, Makoto (1998), “On The Multiple Gamma Function”, Tokyo Journal of Mathematics 21 (1): 159-182, doi:10.3836/tjm/1270041994
- Barnes, E. W. (1899), “The Genesis of the Double Gamma Functions”, Proc. London Math. Soc. s1-31: 358–381, doi:10.1112/plms/s1-31.1.358
- Barnes, E. W. (1899), “The Theory of the Double Gamma Function. [Abstract”], Proceedings of the Royal Society of London (The Royal Society) 66: 265–268, doi:10.1098/rspl.1899.0101, ISSN 0370-1662, JSTOR 116064, https://jstor.org/stable/116064
- Friedman, Eduardo; Ruijsenaars, Simon (2004), “Shintani–Barnes zeta and gamma functions”, Advances in Mathematics 187 (2): 362–395, doi:10.1016/j.aim.2003.07.020, ISSN 0001-8708, MR2078341
- Ruijsenaars, S. N. M. (2000), “On Barnes' multiple zeta and gamma functions”, Advances in Mathematics 156 (1): 107–132, doi:10.1006/aima.2000.1946, ISSN 0001-8708, MR1800255