ラウンドガール
ラウンドガール(round Girl)とは、ボクシングやキックボクシング、総合格闘技などの格闘技興行においてラウンド間に会場に向けて次のラウンド数を表示する役割を担う女性を意味する和製英語[1]。英語におけるリングガール(ring girl)に該当する。UFCではオクタゴンガールと称する[2]が、これはUFCのリングが八角形(オクタゴン)であることにちなむ[3]。
概要
[編集]ラウンドガールの誕生は、1965年にラスベガスで開催されたボクシング興行とされている[4]。日本では、1978年に日本武道館で開催されたキックボクシング興行で初披露された[5]。
ラウンドの合間に1、2人でリングに上がり、次のラウンド番号が記載されたボードを掲げながら、リングの内周(オクタゴンの場合は外周)を回る。ボードにはスポンサー企業の名前が入っていることが多く、「歩く広告塔」としての役割も担っている[5]。通常、ラウンドガールはウォーキングのみでリングを回るが、Krushガールズは場内に流れる曲に合わせてダンスをしながらボードを掲げている[6]。
また、イベントによっては勝利した選手へ勝利者賞などの贈呈も行う。アメリカやメキシコでは、調印式や公開計量などにも姿を見せる。
ラウンドガールには、レースクイーンやグラビアアイドル、モデルが選ばれることが多い[注 1]。これらは興行を主催するプロモーターが用意しており、事前にオーディションを行う場合もある。契約は大きく分けて興行ごとの場合と年単位の場合がある。変わり種として、八王子中屋主催興行では、八王子芸者がラウンドガールを務める[8]。
ラウンドガールとしての活動終了後、格闘家に転向した者も存在する(正木純子など)。一方、プロ格闘家デビュー後も並行してラウンドガール活動も継続している者もおり、中には高野人母美[9][10]や宮原華音[11]のようにアンダーカードに出場し、その後の試合でラウンドガールを務める場合もある。また、柴田直子ら試合のない現役選手が役割を担うこともある[12]。
服装
[編集]ラウンドガールが登場した当初はスラックスなどの正装を衣装として着用していることが多かったが、近年はビキニなどの水着やボディコン、セパレートなど、観客の視線を引き付けるための衣装を着用している。また、ハイヒールを履く場合が多い。
不要論
[編集]元UFCライト級世界王者のハビブ・ヌルマゴメドフは、2021年8月の記者会見で、自身がプロモートするEagle FCにラウンドガールがいない理由を質問された際に「誰も怒らせるつもりはないが、ラウンドガールは格闘技で最も不必要な人材だ。彼女たちの役割は?ラウンドが知りたいならスクリーンを見ればいい」と答えている[13]。これに対し、UFCオクタゴンガールのひとりであるアリアニー・セレステは「この15年間、私たちは単なるリングガールだけではなく、UFCのプロモーションに尽力してきました。世界中を巡ったり、自身の活動なども通して、熱狂的なファンへ愛を送り続けてきました」と反論した[14]。
一方、元PRIDEヘビー級王者のエメリヤーエンコ・ヒョードルは、「彼女たちはラウンドごとに次のラウンドの数を教えてくれる人たち。意見があるとしたら、もう少し肌の露出を抑えた方がいい」と持論を展開した[15]。
また、KNOCK OUTガールの来栖うさこは「絶対に必要な存在かと言われたら、そうではないかもしれないです」と前置きしたうえで「それでも、ラウンドガールがいる意味はあると思います。いないよりはいたほうがいい」「ラウンドガールが、格闘技への入口になることもあると思うんですよ」と述べている[16]。
ラウンドボーイ
[編集]男性がラウンドガールと同様の役割を果たすラウンドボーイも存在する。これも和製英語であり、英語におけるリングボーイ (ring boy) に該当する。
黎明期のプロボクシングではもっぱらラウンドボーイが用いられ、後にスマックガールなどの女子格闘技でも採用されたが、近年はムエタイやラウェイなど女人禁制のためにラウンドガールがリングに登壇できない興行を除き、ほとんど目にすることはない。
変わった例として、2010年3月27日のWBC世界フライ級タイトルマッチ、亀田興毅対ポンサクレック・ウォンジョンカム戦でラウンドガールを務めた佐藤かよが挙げられる[17]。佐藤は性別的には男性だが、この試合ではラウンドガールとして仕事を行った[18]。
また、2013年2月27日のWBA世界フライ級タイトルマッチ、ファン・カルロス・レベコ対黒田雅之戦では、Jリーグ・川崎フロンターレのマスコット「ふろん太」が「ラウンドボーイ」としてリングに上がっている[19]。
2022年2月27日に開かれたK-1では、美川憲一が「スペシャルラウンドスター」と称されて同様の役割を担った[20]。
2023年2月25日に開かれた亀田和毅対ルイス・カスティージョ戦ではラウンドガールに加えてパーソナルトレーナーのアキラマッスルこと宮島朗もラウンドボーイとしてリングに入った[21]。
3月25日にアメリカで開かれたWBA・WBC女子世界ミニマム級王座統一戦。セニエサ・エストラーダ対ティナ・ルプレヒト戦では2020年東京オリンピックスーパーヘビー級銀メダリストの現役プロボクサーであるリチャード・トーレスがラウンドボーイを務めた[22]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “村田諒太「伝説の再試合」の間近で見た美女2人が語る裏側”. NEWSポストセブン (小学館). (2018年9月29日) 2022年6月19日閲覧。
- ^ “オクタゴンガール”. UFC JAPAN. 2022年7月10日閲覧。
- ^ “【動画あり】悩殺!ローレン・マイコラスさんがUFCオクタゴンガールに♡”. 4knn.tv. KNN KandaNewsNetwork (2015年9月22日). 2022年7月10日閲覧。
- ^ Steven Kelliher (2015年11月16日). “What Are the Girls Who Walk Around the Boxing Rings Between Rounds?” (英語). livestrong.com. 2017年8月9日閲覧。
- ^ a b “格闘技「ラウンドガール」は芸能界の登竜門、その仕事内容は”. NEWSポストセブン (小学館). (2018年9月24日) 2022年1月1日閲覧。
- ^ “新生Krushガールズ誕生!!「Krush.52」3.14(土)後楽園ホール大会でデビュー!”. 株式会社グッドルーザー. 2017年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月4日閲覧。
- ^ “水着姿にファン喝采!熊田曜子が“悩殺KO””. スポニチアネックス (スポーツニッポン新聞社). (2011年5月8日) 2022年7月10日閲覧。
- ^ “プロモーター日記29:7.9 ポスター”. 八王子中屋BOX プロモーター日記 (2022年6月30日). 2022年7月9日閲覧。
- ^ ““モデルボクサー”高野人母美 2年7カ月ぶりリングはドロー、メインは二瓶竜弥が中川麦茶に勝利”. BOXING NEWS (MACC出版). (2022年7月8日) 2022年7月9日閲覧。
- ^ “まさかの二刀流! “9頭身モデルボクサー”高野人母美、自身の試合後にラウンドガールを務めてしまう”. ねとらぼ (アイディメディア). (2022年7月9日) 2022年7月10日閲覧。
- ^ “闘うラウンドガール、“立ったまま”失神KOの衝撃デビュー! 直後の猫耳姿に「凄すぎる」驚きと称賛の声”. ABEMA TIMES. (2023年4月21日)
- ^ “柴田直子がラウンドガール、細川貴之の引退試合で”. BOXING NEWS (MACC出版). (2017年4月8日) 2022年7月10日閲覧。
- ^ “元UFC王者ヌルマゴメドフがまさかのラウンドガール不要論! UFCでは大人気ラウンドガールも活躍”. eFight (ヨシクラデザイン). (2021年8月26日) 2021年8月29日閲覧。
- ^ “【UFC】世界的人気ラウンドガール、ヌルマゴの“ラウンドガール不要論”に反論「愛を送り続けてきた」”. eFight (ヨシクラデザイン). (2021年9月8日) 2021年12月14日閲覧。
- ^ ““ラウンドガール是非”論争、皇帝ヒョードルがまさかの参戦!?「もう少し肌の露出を抑えた方が」”. eFight (ヨシクラデザイン). (2021年9月21日) 2021年12月14日閲覧。
- ^ “「“ラウンドガール不要論”をどう思う?」人気ラウンドガール・来栖うさこに“グラドル界と格闘技”の関係を聞いてみた〈特別グラビア〉(2/3)”. Sports Graphic Number (文藝春秋). (2021年11月10日) 2022年2月23日閲覧。
- ^ “佐藤 かよ”. ASIA PROMOTION. 2022年7月16日閲覧。
- ^ “魔女たちの22時」で男性だとカミングアウトした美人モデルは『名古屋×美人時計』にもいた!”. リアルライブ (アンカード). (2010年9月3日) 2022年7月10日閲覧。
- ^ “黒田初世界戦は判定完敗/ボクシング詳細”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2013年2月27日) 2022年7月10日閲覧。
- ^ “K1に美川憲一が登場 SPラウンドスター「皆さんは若いんだから、しぶとく頑張んなさい」”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2022年2月27日) 2022年7月10日閲覧。
- ^ “ラウンドガールと一緒にラウンドボーイ登場!亀田和毅の同級生「アキラマッスル」の筋肉美に会場沸く”. スポーツ報知. (2023年2月25日) 2023年4月8日閲覧。
- ^ 【Photo】エストラーダvsルプレヒト WBA、WBC女子世界ミニマム級王座統一戦 2023年3月27日(2023年4月8日閲覧)