コンテンツにスキップ

メハジキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤクモソウから転送)
メハジキ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
亜科 : オドリコソウ亜科 Lamioideae
: メハジキ属 Leonurus
: メハジキ L. japonicus
学名
Leonurus japonicus Houtt.[1]
シノニム
和名
メハジキ(目弾き)[5][6][7]

メハジキ(目弾き、茺蔚、学名Leonurus japonicus)は、シソ科メハジキ属一年草または越年草。別名、ヤクモソウ(益母草)[5][6][7]。野原や道端などに生えて、高さは1メートル前後になり、夏に紫色の花を咲かせる。全草が産前産後、婦人病、眼病などの薬草として利用されていた。

名前の由来

[編集]

和名メハジキは、「目弾き」の意で、茎に弾力があり、昔は子どもたちが短く切った茎の切れ端を、につっかえ棒にして張って、目を大きく開かせて遊んだことによる[5][6][7][8]

分布と生育環境

[編集]

日本では、北海道本州四国九州琉球に分布し[9]、国外では、朝鮮半島台湾中国大陸ロシア沿海地方東南アジア南アジアに分布する。また、北アメリカ帰化している[5][6][7]山野野原堤防道ばた荒れ地などに自生する[9][10]

特徴

[編集]

越年草[10]根生葉には長い葉柄があり、卵円形で浅い切れ込みがあり、葉縁に粗い鈍鋸歯がある[10]。2年目には直立し、四角形で短い圧毛が多く生え、高さは50 - 150センチメートル (cm) になり、まばらに分枝する[10]。茎につく葉は対生し、上部になるほど次第に小形になる[10]。茎の下部につくは、長さ4 - 9 cm、幅3 - 7 cmになり、長い葉柄があって深く3裂から全裂し[8]、裂片はさらに羽状に切れ込んで線状披針形となり、先は鈍頭または鋭突頭になり、基部は広いくさび形になる。葉の裏面には白色の短毛が密に生え、灰白色をおびる。茎の上部の葉は葉柄も短くなり、葉身もしだいに小さくなって長さ4 - 10 cmの卵形から披針形で側裂片は短くなり、最上部の茎葉は倒披針形で分裂しない[5][6][7]。根生葉は、が咲くときには枯れる[10]

花期は夏(7 - 9月)[9]。花は淡紅色の小型の唇形花で、茎の上部の葉腋に段状に数個かたまって、輪散花序になってつく[10]。花序の下に刺針状の短い小苞がある。は筒状で長さ6 - 7ミリメートル (mm) になり、等しく5裂して裂片の先は刺状に鋭くとがり、果実期には目立つ[9]花冠は長さ10 - 13 mmの2唇形で、紅紫色をし、外面に白い毛が密生し、下唇は前方に突き出て3裂し内面に赤い縦筋がある。雄蕊は4個あり、上唇の内側に沿って伸びる。雌蕊は1個ある。

果実は長さ2 - 2.3 mmになる分果で4個あり、暗褐色から黒色でときに黒い斑が見られるが、斑がないものもある[9]。形は広いくさび形で、扁3稜形で先端は切形、背面は丸みがある[9]。分果は宿存性の萼につつまれる[5][6][7]

全草に白く細かい毛が密生し、特有の匂いがある[10]

利用

[編集]

栽培は種子で繁殖させて、1年目の越冬は霜よけを行う[10]

花の時期の全草を採取し乾燥させたものを、漢方で産前産後の保健薬にしたことから、益母草(やくもそう)と称し[5][6][7]、種子は茺蔚子(じゅういし)と称する生薬になる[10]。初夏の開花始めのときに地上部を刈り取って、屋内で風干しして、長さ2 cmぐらいに刻んで調製し、紙袋で貯蔵される[10]。全草(益母草)は、止血、浄血、婦人病薬としての補精、浴湯料として薬効があるとされ、種子(茺蔚子)は水腫、目の疾患利尿に効果があるとされる[10]。全草、種子ともに婦人の要薬、特に産後の止血、浄血、補精、月経不順腹痛に効用があるといわれている[10]民間療法では、全草1日量5 - 8グラムを水300 ccで煎じて、2 - 3回に分けて服用する用法が知られている[10]

ギャラリー

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ メハジキ 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  2. ^ メハジキ(シノニム) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  3. ^ メハジキ(シノニム) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  4. ^ メハジキ(シノニム) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  5. ^ a b c d e f g 『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花』p.163
  6. ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1073
  7. ^ a b c d e f g 『改訂新版 日本の野生植物 5』p.125
  8. ^ a b 大嶋敏昭監修 2002, p. 405.
  9. ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 63.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 馬場篤 1996, p. 109.

参考文献

[編集]
  • 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、405頁。ISBN 4-415-01906-4 
  • 大橋広好門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』平凡社、2017年。
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年9月28日、63頁。ISBN 978-4-416-71219-1 
  • 林弥栄・平野隆久『山溪ハンディ図鑑 1 野に咲く花』山と溪谷社、1989年。
  • 牧野富太郎原著、邑田仁米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』北隆館、2017年。
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、109頁。ISBN 4-416-49618-4 
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)