ジュール・メグレ
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ジュール・フランソワ・アメデ・メグレ (Jules François Amédée Maigret) は、ベルギーの小説家ジョルジュ・シムノンの推理小説に登場する架空の警察官。警視、後に警視長となるが、メグレ警視として知られる。第一作"Pietre-le-Letton"(『怪盗レトン』)登場時は45歳。メグレ警視の登場する小説は執筆時期1929年から1972年まで長篇全75篇と中短篇全28篇を数える(この他、シムノンのペンネーム時代に書かれたメグレ警視の登場する長篇が4篇ある)。映像化された作品も多い。
経歴
[編集]1887年、フランスのアリエ県サン・フィアクル村に生まれる。父エヴァリストはサン・フィアクル城(パライユ=ル=フレジル(fr)がモデル)の管理人だった。7歳で母を亡くす。ムーランのパンヴィル国立高等中学校を卒業し、医師を志してナントの医学校に進むが、父と叔母の死で断念。パリで仕事を探している時に知り合った刑事の紹介で22歳の時に警察官となる。
パトロール係などを経て風紀捜査班に入るが、娼婦たちから子ども扱いされ数カ月で配置換えとなる。その後署長秘書時代に手柄を挙げ、司法警察局特捜部の刑事に昇進する。最終官職は司法警察局特捜部長。医者にはなれなかったが、落ちぶれた貧しい人々の心を癒すこと、また警察官がそれに相応しい仕事と考えるようになり、犯罪者に対しての悲しみ、怒り、慈しみから「運命の修理人」と呼ばれる。事件が起きると必ず現場に出て自ら捜査を行い、犯人を逮捕している。捜査に当たり単独で行動することが多く、そのため何度か負傷したことがある。捜査中に状況を問われても「私は何も信じません」「何もありません」で済ませることが多い。従って上層部や予審判事と捜査方針を巡って対立することも多く、ヴァンデ県のリュソン機動隊に追いやられていた時期もある。
人物
[編集]アルザス出身で建設省局長の姪ルイーズと26歳の時に恋愛結婚し、パリ11区リシャール=ルノワール通りのアパートに住む。オルレアン近郊のムン=シュール・ロワールの別荘を買い、土曜日には夫婦で出かける。55歳で定年退職した後はこの別荘で生活するが、その後も訪れた依頼人のためニューヨークなどの海外へ行くことになる。
常に3本のパイプを職場に置いているほどのパイプ愛好家で、その中でもルイーズから贈られた1本が最も気に入っている。酒好きで仕事の合間にはビール、自宅ではリキュールを飲む。また食いしん坊でもあり、料理好きな妻の手料理を好む。身長180cm、体重100kgでがっしりした体型。娘を幼い頃に失っており、子供はいない。
演じた俳優
[編集]- ピエール・ルノワール(1932年、『十字路の夜(メグレと深夜の十字路)』)
- アリ・ボール(1933年、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督『モンパルナスの夜(男の首)』)
- チャールズ・ロートン(1950年、『エッフェル塔上の男(男の首)』)
- ミシェル・シモン(1952年、『児童聖歌隊員の証言』)
- ジャン・ギャバン(1957年『殺人鬼に罠をかけろ(メグレ罠を張る)』、1959年『サン・フィアクル殺人事件』、1963年『メグレ赤い灯を見る(メグレと生死不明の男)』)
- ジャン・リシャール(1967年、仏テレビ「メグレ警視」シリーズ)
- マイケル・ガンボン(1991年、英グラナダ・テレビ「メグレ警視」シリーズ)
- ブリュノ・クレメール(1991年 - 2004年、仏テレビ「メグレ警視」シリーズ)
- ローワン・アトキンソン(2016年、英テレビITV「メグレ警視」シリーズ)
- ジェラール・ドパルデュー(2023年、パトリス・ルコント監督『メグレと若い女の死』)
参考文献
[編集]- 長島良三編『名探偵読本-2 メグレ警視』プレジデント社、1978年
- ジル・アンリ 桶谷繁雄訳『シムノンとメグレ警視』河出書房新社、1980年
- 長島良三『メグレ警視のパリ フランス推理小説ガイド』読売新聞社、1984年
関連項目
[編集]- 東京メグレ警視シリーズ - メグレシリーズを原作とする日本を舞台にしたドラマ。愛川欽也主演。
- 名探偵なんか怖くない - 西村京太郎の推理小説。メグレ元警部、エルキュール・ポワロ、エラリー・クイーン、明智小五郎の4人が探偵役で登場する。
- 名探偵コナン - 登場人物の一人である警視庁捜査一課の刑事、目暮十三のネーミングは本項に由来する。
外部リンク
[編集]- Simenon's Maigret (bibliography, statistics, online texts, links)
- Maigret - IMDb