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キンブリ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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キンブリ語
話される国 イタリアの旗 イタリア
話者数 400人 (2000年)[1][2]
言語系統
言語コード
ISO 639-3 cim
消滅危険度評価
Definitely endangered (Moseley 2010)
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キンブリ語(キンブリご、ドイツ語: Zimbrisch, Tzimbrisch, イタリア語: Cimbro)は高地ドイツ語上部ドイツ語のうちバイエルン語に属する南バイエルン語の一言語チンブリ語ツィンブリ語チンブロ語ツィンブリッシュとも呼ばれる。

概要

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イタリア北東部で話されていて、キンブリ語話者はツィンベルンドイツ語: Zimbern)として知られている。名称の由来は古代の民族のキンブリ族といわれている。長年のイタリア語ベネチア語の使用によりキンブリ語話者は減り続け、危機に瀕する言語となった。モケーニ語と関係のある言語である。

歴史

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多くの言語学者は、キンブリ語話者の起源を中世(11世紀から12世紀にかけて)に移住してきたバイエルン人移民に求める仮説を支持している[3]

ヴェローナへのバイエルン人の移動が確認できる最も古い年代は、1050年ごろである(バイエルン州立図書館蔵の Cod. lat. 4547)。このバイエルン人の集落は11世紀から12世紀にかけて存続した。

キンブリ語話者の起源をロンバルド人に求める仮説もある。1948年にBruno Schweizerが提唱し、1974年にAlfonso Bellottoが再提唱した[4]。2004年にはキンブリ語話者の言語学者 Ermenegildo Bidese によって、この議論が復活した[5]

14世紀、イタリアにドイツ語系の言語を話す人々が暮らしていることを「発見」したイタリアの人文学者たちは、この言語を古代のキンブリ族(紀元前2世紀ごろにイタリアに入ってきた)と関連付けた。この言語の現代のエンドニム(内名、自称)である Zimbar は、これに由来するようである。このほか、大工を意味する語(英語の timber と同根)に求める説もある。

現状

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キンブリ語の歴史的分布(黄)と現在の分布(橙)。
図中には、本文中の3地域のほかにベッルーノ県のカンシーリオ (it:Cansiglio地域についても示されている。

キンブリ語は以下の地域に分布し、大きく3つの方言に分類できる[6]

キンブリ語は、公用語として使われる標準イタリア語や、周辺地域で優勢なヴェネト語によって、消滅の危機にさらされている。かつてはこれ上記以外の地域でも話されていたが消滅した[2]。キンブリ語話者は2000年時点でルゼルナ周辺におおよそ400人と推定されていた[2]

2001年の国勢調査に際し、トレント自治県(トレンティーノ)では初めて母語の統計がとられた。ルゼルナでは住民の過半数(267人、89.9%)がキンブリ語を話すと回答、他の自治体でも615人が自らをキンブリ語の言語集団に属すると認識しており、トレント自治県全体では合計882人の話者がいることが明らかになった[7]。ジャッツァやロアーナでは高齢の話者がわずかに残ることを考えれば(ユネスコはジャッツァやロアーナでキンブリ語が消滅中 (disappearing) としている[2])、村人の多数がキンブリ語を話すことのできるルゼルナの言葉が、キンブリ語の諸変種(方言)のなかでも最も栄えていると言える[8]

キンブリ語は、トレント自治県においては県および国の法律によって認識されている。1990年代から、国会や県議会でさまざまな法や条例が成立し、キンブリ語と文化は保護のもとに置かれるようになった。学校のカリキュラムは、キンブリ語での教育を可能にするため改められ、道路標識は二言語表示がなされるようになった。1987年には文化研究所 Istituto Cimbro/Kulturinstitut Lusérn が設立され、「ルゼルナにおいてドイツ語を話すマイノリティの民族誌や文化遺産の保護と振興を図り、キンブリ語話者コミュニティがある地域の環境の保護と経済文化の発展のために歴史的・言語的な表現に注意を払うこと」を目的に掲げた[9]。文化研究所は、子供のための文学コンペティションや、言語習得のための夏季合宿(イマージョン・プログラム)を主催している[8]

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ルゼルナ村役場。キンブリ語による看板 (Kamou vo Lusérn)が掲げられている

主の祈りの言語間比較(日本語はカトリック教会日本聖公会の共通口語訳)。

キンブリ語
トレディチ・コムーニ
キンブリ語
ルゼルナ
標準ドイツ語 英語 日本語

Vatar usar
ta Do pist ime Himmel,
gaholagat sait Dai name.
Kime Daine Raich.[10]

Vatar ünsar
bo Do pist in Hümbl,
as da sai haile Doi Nàm.
Dain Raich kime.[10]

Vater unser
im Himmel,
geheiligt werde Dein Name.
Dein Reich komme.

Our Father
in heaven,
hallowed be your name.
Your kingdom come,

天におられる
わたしたちの父よ、
み名が聖〔せい〕とされますように。
み国が来ますように。

脚注

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  1. ^ Cimbrian at Ethnologue (18th ed., 2015)
  2. ^ a b c d Cimbrian”. UNESCO Atlas of the World's Languages in Danger. UNESCO. 2016年5月10日閲覧。
  3. ^ James R. Dow: Bruno Schweizer's commitment to the Langobardian thesis. In: Thomas Stolz (Hrsg): Kolloquium über Alte Sprachen und Sprachstufen. Beiträge zum Bremer Kolloquium über „Alte Sprachen und Sprachstufen“. (= Diversitas Linguarum, Volume 8). Verlag Brockmeyer, Bochum 2004, ISBN 3-8196-0664-5, S. 43–54.
  4. ^ Bruno Schweizer: Die Herkunft der Zimbern. In: Die Nachbarn. Jahrbuch für vergleichende Volkskunde 1, 1948, ISSN 0547-096X, S. 111–129.; Alfonso Bellotto: Il cimbro e la tradizione longobarda nel vicentino I. In: Vita di Giazza e di Roana 17-18, (1974) S. 7–19; Il cimbro e la tradizione longobarda nel vicentino II. In: Vita di Giazza e di Roana 19-20, (1974) S. 49–59.
  5. ^ Ermenegildo Bidese Die Zimbern und ihre Sprache: Geographische, historische und sprachwissenschaftlich relevante Aspekte. In: Thomas Stolz (ed.): Kolloquium über Alte Sprachen und Sprachstufen. Beiträge zum Bremer Kolloquium über „Alte Sprachen und Sprachstufen“. (= Diversitas Linguarum, Volume 8). Verlag Brockmeyer, Bochum 2004, ISBN 3-8196-0664-5, S. 3–42.Webseite von Ermenegildo Bidese
  6. ^ Glottolog Language: Cimbrian
  7. ^ Tav. I.5 - Appartenenza alla popolazione di lingua ladina, mochena e cimbra, per comune di area di residenza (Censimento 2001)” (Italian). Annuario Statistico 2006. Autonomous Province of Trento (2007年). 2011年5月12日閲覧。
  8. ^ a b Coluzzi, Paolo (2007). Minority Language Planning and Micronationalism in Italy: An Analysis Of Friulian, Cimbrian, and Western Lombard With Reference To Spanish Minority Languages. Oxford, Bern, Berlin, Bruxelles, Frankfurt am Main, New York, Wien: PeterLang. pp. 224, 226, 227. ISBN 978-3-03911-041-4 
  9. ^ Kulturinstitut Lusérn”. www.kulturinstitut.it. 2016年4月14日閲覧。
  10. ^ a b (Cimbrian) Das Vaterunser auf Lusérner Zimbrisch. Frankfurter Allgemeine Zeitung. (2006)  File:Vaterunser_zimbrisch.JPG

参考文献

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  • Baum, Wilhelm (1983) (German). Geschichte der Zimbern. Storia dei Cimbri. Landshut: Curatorium Cimbricum Bavarense 
  • Schmeller, J. A. (1855) (German). Cimbrisches Wörterbuch. Vienna: K. K. Hof- und Staatsdruckerei 
  • Kranzmayer, Eberhard (1981, 1985) (German). Laut- und Flexionslehre der deutschen zimbrischen Mundart. Vienna: VWGÖ. ISBN 3-85369-465-9 
  • U. Martello-Martalar: Dizionario della Lingua cimbra. Vicenza 1974. Bd 2. Dal Pozzo, Roana-Vicenza 1985. (in Italian)
  • Ermenegildo Bidese (ed.): Das Zimbrische zwischen Germanisch und Romanisch. Brockmeyer, Bochum 2005. ISBN 3-8196-0670-X
  • Tyroller, Hans: Grammatische Beschreibung des Zimbrischen von Lusern (Franz Steiner Verlag, Stuttgart, 2003). ISBN 3-515-08038-4
  • Bruno Schweizer: Zimbrische Gesamtgrammatik. Vergleichende Darstellung der zimbrischen Dialekte (= Zeitschrift für Dialektologie und Linguistik, Beiheft 132). ed. James R. Dow, Franz Steiner Verlag, Stuttgart 2008, ISBN 978-3-515-09053-7.

外部リンク

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