管楽セレナード (モーツァルト)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの管楽合奏のためのセレナードは3曲が存在する。
- セレナード第10番 変ロ長調 K.361 (370a) 『グラン・パルティータ』
- セレナード第11番 変ホ長調 K.375
- セレナード第12番 ハ短調 K.388 (384a) 『ナハトムジーク』
いずれもハルモニー(Harmonie)またはハルモニームジーク(Harmoniemusik)と呼ばれる管楽合奏のために書かれているが、『グラン・パルティータ』は13人の奏者を要する大編成の楽曲で、他の2曲は標準的な編成であるオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット各2の八重奏のために書かれている。本項では第11番K.375 と第12番K.388 (384a) について説明する。
ハルモニームジーク
[編集]ハルモニームジークは上記編成の八重奏を基本とする管楽器の合奏で、当時ウィーンで流行しており、室内や屋外でのさまざまな機会に演奏され、親しまれていた。1782年に神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世がウィーンの宮廷に管楽八重奏団を常設すると、貴族たちもこぞって管楽八重奏団を抱えるようになり、いっそう盛んになった。そうした楽団のために、オリジナルの楽曲も作曲されたが、オペラやバレエからの抜粋を編曲したものも、それらが上演されるや否やただちに出回っていた。モーツァルトが3曲のセレナードを作曲したのもウィーン時代のことである。
セレナード第11番 変ホ長調 K.375
[編集]この曲は1781年10月に作曲された。初稿はクラリネット、ホルン、ファゴット各2の六重奏であったが、翌1782年7月にモーツァルト自身によってオーボエ2本が追加された。この他、さらにイングリッシュ・ホルン2本を加えた稿も存在する。
構成
[編集]5楽章からなり、演奏時間は約24分である。
- アレグロ・マエストーソ 変ホ長調 4分の4拍子 ソナタ形式。
- メヌエット 変ホ長調 4分の3拍子。
- アダージョ 変ホ長調 2分の2拍子。
- メヌエット 変ホ長調 4分の3拍子。
- アレグロ 変ホ長調 4分の2拍子 ロンド形式。
セレナード第12番 ハ短調 K.388 (384a)
[編集]音楽・音声外部リンク | |
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管楽セレナード第11番&第12番を試聴 | |
セレナード第11番変ホ長調K.375 - アメリカ海軍音楽隊隊員による演奏。アメリカ海軍音楽隊公式YouTube。 | |
セレナード第12番ハ短調K.388『ナハトムジーク』 - カナダ国立青少年管弦楽団楽団員(管楽セクション)による演奏。カナダ国立青少年管弦楽団公式YouTube。 |
この曲は1782年7月に、リヒテンシュタイン侯アロイス1世の楽団の音楽会のために書かれた。「ナハトムジーク」(Nachtmusik)とはドイツ語でセレナードの同義語である。モーツァルトのセレナードで唯一、短調で書かれている。その直接の原因として、オランダ生まれの音楽愛好家の貴族ゴットフリート・ファン・スヴィーテン男爵の許でのバロック音楽体験、特にバッハ、ヘンデルの影響があると、多くの音楽学者が指摘している。
なお、モーツァルトは1787年にこの全曲を弦楽五重奏曲第2番 K.406 (516b) に編曲している。
構成
[編集]4楽章からなり、演奏時間は約18分である。
- アレグロ ハ短調 2分の2拍子 ソナタ形式。
- アンダンテ 変ホ長調 8分の3拍子 ソナタ形式。
- メヌエット・イン・カノーネ(カノンのメヌエット) ハ短調 4分の3拍子。
- アレグロ ハ短調 4分の2拍子 主題と変奏 - 中間部 - 主題と推移部 - 終結部という独特の形式。
参考文献
[編集]- 作曲家別名曲解説ライブラリー13 モーツァルトI(音楽之友社)
外部リンク
[編集]- セレナード第11番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- セレナード第12番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト