パラケラテリウム
パラケラテリウム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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P. transouralicumの全身骨格(国立科学博物館の展示品)
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
新生代古第三紀漸新世 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Paraceratherium Cooper, 1911 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Baluchitherium Forster Cooper, 1913 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
パラケラテリウム (Paraceratherium, '角のない獣の近く'の意) は、およそ3,600万 - 2,400万年前(新生代古第三紀の漸新世)に、ユーラシアの広い範囲に生息していた、哺乳類サイ類の属である。ゾウ類に次ぐ史上最大級の陸生哺乳類とされる。
よく知られたジュニアシノニム(遅く記載されたため無効な名)に、インドリコテリウム (Indricotherium) とバルキテリウム (Baluchitherium) がある。これらにパラケラテリウムを加えた3属は、1989年ごろまでは別属とみなされていた。
形態
[編集]サイの仲間であるが、角はなく、体格はウマ的でやや細身であり、首と脚が比較的長かった。
かつては頭胴長約8メートル、肩高約5.3メートル、体重30トンとも推測されていたが、後年では体長7.4メートル、肩高4.8メートル、首長2 - 2.5メートル、体重は約11 - 20トンとされている。これらは、肩高5.2メートル、体重22tに達したとされる最大級の長鼻目(ゾウ類)であるナルバダゾウ (Palaeoloxodon namadicus:更新世の南アジアに生息していたナウマンゾウと同属の古代ゾウ)に次ぐ。
頭骨長は約1.3メートルで、体躯に比してやや小さい[1]。
雄の頭骨には骨の肥厚が認められ、縄張りや雌を巡っての儀礼的闘争を行ったとされる[2]。
おそらくは柔軟な上唇を持ち、現生のキリンのように、上顎にある牙状の切歯で高木の小枝や葉をむしり取って食べたと想像される[3]。当時の彼らの生息地域には、餌となる大きな樹木が生い茂っていた。
胴体は前肢が長いため後方に向かってなだらかに傾斜しており、脊柱は空隙などで軽量化された構造になっていた[1][3]。
肢端には3本の趾があり、中央の中指に重心がかかるようになっていた。
生態
[編集]四肢の近位部が長い形態から、巨体に似合わず高速で走れたとも言われる[3][4]。巨体であるが故に沼地などでは足をとられ、そこで死を迎えることも少なくなかったようであり、そうした場所から発見された化石もある[1]。
内温性動物であるがゆえに身体に熱がたまりやすく、高温になる昼間は避け、気温が下がる夜間などに活動していたとする説もある[5]。
身体の大きさから推定しておそらく妊娠期間は2年におよび、1度に1頭のみ出産したとされる。また子供は親の元で数年間養育されたであろうと考えられる。
肉歯類が幼体を襲う程度はあったかもしれないが、その巨体故に、成体にはほとんど天敵はいなかったと推測される。しかし、当時、南アジアなどのパラケラテリウムの生息域の一部には最大で体長10m近くあったとも推測される非常に巨大なワニが生息していたことが化石から確認されており、成体でも病気等で弱った個体などが捕食された可能性がある。
1000万年間近くの長きにわたって繁栄したパラケラテリウムだが、漸新世が終わると共に彼等は絶滅していったようである。ヒマラヤ山脈の造山活動による生息地の環境・気候の変化(乾燥化や寒冷化)、それによる森林の減少、漸新世終結前後にアフリカからユーラシアに進出したゾウ類等の競争相手の出現などといった様々な絶滅要因が考えられ、それらが絡んだ複合的なものかもしれない。大型哺乳動物全般に言えることだが、巨体故の繁殖率の低さは絶滅のリスクをより高めたことだろう。
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I. restoration
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P. transouralicum 頭骨。
研究史
[編集]1920年代にアメリカのアンドルースらによって断片的な化石が発見されて以来、ユーラシア内陸の各地で化石が発見されたが、いずれも部分的なもので全体像がつかめず、バルキテリウム、パラケラテリウム、インドリコテリウムの3属が設定され、あるいはそれらは亜種であろうかとも考えられた。復元像も多少異なり、バルキテリウムは首が短くサイに近いもの、インドリコテリウムは首の長いものとなっていた。
1989年にはスペンサー・ルーカスとジェイ・ソーバスが、インドリコテリウムとパラケラテリウムの差異はせいぜい種レベルにすぎず、しかも、同種の性的二型かもしれない、すなわち大きなインドリコテリウムが雄で小さなパラケラテリウムが雌であるかもしれないと唱えた[6]。
現在ではこれら3属は同属とする説が有力になり、復元像も首の長い型に統一されている。先取権の原則によりその属の名は最古の名であるパラケラテリウムとなる。
インドリコテリウムの学名はロシアの民間伝承に登場する巨大な伝説上の動物「インドリク」に由来。日本では「巨犀」(きょさい)とも呼ばれた。
種
[編集]スペンサー・ルーカスとジェイ・ソーバスは、4種を認めている。他に仮説的な数種がある。
- Paraceratherium bugtiense (Pilgrim, 1908)
- 模式種。Baluchitherium osborni Forster Cooper, 1913 はシノニム。バルチスタンで発見された。
- Paraceratherium transouralicum (Pavlova, 1922)
- 旧名 Indricotherium transouralicum。Baluchitherium grangeri Osborn, 1923、Indricotherium asiaticum Borissiak, 1923、Indricotherium minus Borissiak, 1923 はシノニム。最も広く見られ、カザフスタン、モンゴル、中国の内モンゴル自治区、中国北部に産する。
- Paraceratherium orgosensis (Chiu, 1973)
- 最大の種。Dzungariotherium turfanensis Xu & Wang, 1978、Paraceratherium lipidus Xu & Wang, 1978 はシノニム。新疆に産する。
- Paraceratherium prohorovi (Borissiak, 1939)
- カザフスタンで発見された。
- Paraceratherium zhajremensis (Osborn, 1923)
- インドに産する。
- Paraceratherium sp.
- 南西ヨーロッパ、トルコに産する。
脚注
[編集]- ^ a b c 今泉忠明 1995, p. 77.
- ^ ヘインズ & チェンバーズ 2006, p. 175.
- ^ a b c リチャードソン 2005, p. 182.
- ^ 冨田幸光 2002, p. 155.
- ^ ヘインズ & チェンバーズ 2006, pp. 174–175.
- ^ Lucas, S.G.; Sobus, J.C. (1989), “The Systematics of Indricotheres”, in Prothero, D.R.; Schoch, R.M., The Evolution of Perissodactyls, Oxford University Press, pp. 358–378
参考文献
[編集]- 今泉忠明『絶滅巨大獣の百科』データハウス〈動物百科〉、1995年。ISBN 4-88718-315-1。
- 冨田幸光『絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄、岡本泰子、丸善、2002年。ISBN 4-621-04943-7。
- ティム・ヘインズ、ポール・チェンバーズ『よみがえる恐竜・古生物』椿正晴(訳)、群馬県立自然史博物館(監修)、ソフトバンククリエイティブ、2006年。ISBN 4-7973-3547-5。
- ヘーゼル・リチャードソン、デイビッド・ノーマン(監修)『恐竜博物図鑑』出田興生(訳)、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN 4-7875-8534-7。