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かに座イータ星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
かに座33番星から転送)
かに座η星
η Cancri
星座 かに座
見かけの等級 (mv) 5.33[1]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  08h 32m 42.4962025704s[2]
赤緯 (Dec, δ) +20° 26′ 28.184067672″[2]
視線速度 (Rv) 22.34 km/s[2]
固有運動 (μ) 赤経: -46.573 ミリ秒/[2]
赤緯: -44.296 ミリ秒/年[2]
年周視差 (π) 10.258 ± 0.088ミリ秒[2]
(誤差0.9%)
距離 318 ± 3 光年[注 1]
(97.5 ± 0.8 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 0.44[3]
かに座η星の位置(赤丸)
物理的性質
半径 16.0+1.8
−1.6
R[4]
質量 1.4 ± 0.2 M[4]
表面重力 (logg) 2.24 cgs[4]
自転速度 2.89 km/s[5]
スペクトル分類 K3 III[1]
光度 89.1+13.2
−11.5
L[4]
有効温度 (Teff) 4,446 ± 80 K[4]
色指数 (B-V) 1.252[1]
色指数 (V-I) 1.11[1]
金属量[Fe/H] 0.0 ± 0.1[4]
年齢 2.2 - 6.1 ×109[4]
他のカタログでの名称
かに座33番星, BD+20 2109, FK5 321, HD 72292, HIP 41909, HR 3366, IRC +20201, SAO 80243[2]
Template (ノート 解説) ■Project

かに座η星(かにざイータせい、η Cancri、η Cnc)は、かに座恒星である。暗いが肉眼で見える恒星で、見かけの等級は5.33である[1]年周視差の測定に基づいて太陽からの距離を計算すると、約318光年となる[2][注 1]。大きく離れた褐色矮星質量のと、連星をなすと考えられる[4]

特徴

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かに座η星は橙色に輝く赤色巨星で、スペクトル型はK3 IIIと分類される[6][1]主系列段階を過ぎて巨星へと進化しており、年齢は22億から61億年の範囲にあるとみられる[4]質量太陽の1.4倍程度、半径太陽の16倍程度まで膨張している[4]光度太陽のおよそ89倍、表面の有効温度は4,446 Kと推定される[4]

かに座η星では、太陽型振動が検出されていて、その振動周期は恒星内部の浮力振動数に左右されるもので、水素殻燃焼とヘリウム燃焼を見分け、進化段階を細かく分類するのに使えると期待される[6]

星系

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かに座η星B
η Cancri B
仮符号・別名 SDSS 0832
地球から見た位置 (かに座η星Aとの関係)
位置角 280[7]
角距離 164.16秒[4]
物理的性質
質量 63 - 82 MJ[4]
表面重力 (logg) 5.3 - 5.5 cgs[4]
スペクトル分類 L3.5 ± 1.5[4]
有効温度 (Teff) 1,800 ± 150 K[4]
Template (ノート 解説) ■Project

かに座η星から西に約164離れた位置にある、非常に暗い天体SDSS J083231.78+202700.0(SDSS 0832)は、その固有運動を調べた結果、かに座η星と共通していることがわかった[4]離角がとても大きく、仮に連星だとして連星間距離は15000 auも離れていることになるが、統計的に偶然連星であるかのようにみえた無関係の天体である可能性はほとんどなく、真に連星であると考えられ、元々のかに座η星はかに座η星A、伴天体はかに座η星Bと呼ばれる[4][8]

測光観測から推定されるかに座η星Bの特徴は、非常に低温で、質量の小さい星で、L3.5型に分類される褐色矮星とみられる[4]。質量は木星の63から82倍程度、表面の有効温度はおよそ1800 Kと予想される[4]。ただし、かに座η星Bの色指数は、この種の褐色矮星としては異常であるため、褐色矮星同士の連星である可能性も検討されており、その場合はL4型とT4型の2つの褐色矮星の連星であれば、観測をうまく説明できるとされている[4]

かに座η星Bは、巨星の周りで発見された6番目の褐色矮星だが、先に発見されていた5例は全て、主星から3 au以内の位置で、視線速度法によって発見されたもので、主星と視覚的に分離できているものとしては、かに座η星Bが史上初の例である[4]。巨星と連星をなす褐色矮星で、主星の影響を受けずに褐色矮星だけを観測できる目標として、注目されている[4]

名称

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中国ではかに座η星は、鬼宿拼音: Guǐ Xiù)という星官を、かに座θ星かに座γ星かに座δ星と共に形成する[9]。かに座η星自身は、鬼宿二拼音: Guǐ Xiù èr)すなわち鬼宿の2番星と呼ばれる[9]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b c パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算

出典

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  1. ^ a b c d e f ESA (1997), The HIPPARCOS and TYCHO catalogues. Astrometric and photometric star catalogues derived from the ESA HIPPARCOS Space Astrometry Mission, ESA SP Series, 1200, Noordwijk, Netherlands: ESA Publications Division, Bibcode1997ESASP1200.....E, ISBN 9290923997 
  2. ^ a b c d e f g h eta Cnc -- High Proper Motion Star”. SIMBAD. CDS. 2023年8月30日閲覧。
  3. ^ Luck, R. Earle; Heiter, Ulrike (2007-06), “Giants in the Local Region”, Astronomical Journal 133 (6): 2464-2486, Bibcode2007AJ....133.2464L, doi:10.1086/513194 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Zhang, Z. H.; et al. (2010-06), “Discovery of the first wide L dwarf + giant binary system and eight other ultracool dwarfs in wide binaries”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 404 (4): 1817-1834, Bibcode2010MNRAS.404.1817Z, doi:10.1111/j.1365-2966.2010.16394.x 
  5. ^ Hekker, S.; Meléndez, J. (2007-12), “Precise radial velocities of giant stars. III. Spectroscopic stellar parameters”, Astronomy & Astrophysics 475 (3): 1003-1009, Bibcode2007A&A...475.1003H, doi:10.1051/0004-6361:20078233 
  6. ^ a b Pope, Benjamin J. S.; et al. (2019-11), “The K2 Bright Star Survey. I. Methodology and Data Release”, Astrophysical Journal Supplement Series 245 (1): 8, Bibcode2019ApJS..245....8P, doi:10.3847/1538-4365/ab3d29 
  7. ^ Mason, Brian D.; et al. (2023-07), “The Washington Visual Double Star Catalog”, VizieR On-line Data Catalog: B/wds, Bibcode2023yCat....102026M 
  8. ^ eta Cnc B -- Brown Dwarf”. SIMBAD. CDS. 2023年8月30日閲覧。
  9. ^ a b 中國古代的星象系統 (27): 鬼宿” (中国語). AEEA 天文教育資訊網. 國立自然科學博物館 (2006年5月27日). 2023年8月30日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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座標: 星図 08h 32m 42.4962025704s, +20° 26′ 28.184067672″